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夫が褐色細胞腫との診断、子どもへの遺伝は?

 62歳の主人が褐色細胞腫と診断されました。子供にも遺伝しているかもしれないから検査をしたほうがいいと言われました。女の子は出産にも影響するからと言われましたが3人の子の誰かだけに遺伝していると告げるのも辛いです。何か症状が出てからでは遅いのでしょうか?どの程度危険な病気なのかもよくわかりません。どうしたらいいのでしょうか?(61歳女性)

内分泌腫瘍に詳しい遺伝の専門家がいる医療機関の受診を

櫻井晃洋(あきひろ) 信州大学医学部遺伝医学・予防医学講座准教授(松本市)

 褐色細胞腫は主に腎臓の上に接している副腎という臓器から発生する腫瘍で、カテコラミンと呼ばれるホルモンを過剰に分泌し、このために高血圧や動悸、頭痛、血糖の上昇など多彩な症状を引き起こします。一部は副腎以外からも発生します。また褐色細胞腫の大部分は良性ですが、約10%は悪性で他臓器のがんと同じように転移をきたします。

 海外の報告では、褐色細胞腫の約30%が遺伝性であるとされています。日本人の褐色細胞腫で遺伝性の比率がどの程度かはよくわかっていません。遺伝性の褐色細胞腫は非遺伝性のものと比べて、(1)家族で複数の人が褐色細胞腫と診断されている、(2)褐色細胞腫が両側の副腎にできる、(3)若い年齢(40歳未満)で発症する、(4)甲状腺や小脳などに他の腫瘍を合併する、などの特徴がありますので、こうした条件のいずれかに当てはまる場合は、遺伝性の褐色細胞腫の可能性を考える必要があります。

 家族、特にお子さんに病気が遺伝するかも知れないと告げられた時の心配は非常に大きいものと思います。この時に一番重要なのは、病気や遺伝に関する正確な情報をもとに今後の対応を考えていくことです。まずはご主人の褐色細胞腫が実際に遺伝性である可能性はどの程度なのか、それを確認する検査法があるのかについて、情報を得る必要があります。遺伝性であった場合、お子さんには50%の確率で遺伝的体質が伝わりますが、体質が伝わったとしても必ず褐色細胞腫ができるわけではありません。

 遺伝の問題をお子さんにどのように伝え、どのように対応すべきかについて、ひとりで答えを出すのは非常に難しいと思います。またお子さんがすでに成人に達しているのであれば、お子さん自身が遺伝の可能性について知り、自身の今後の健康管理について方針を決める権利を尊重する必要もあります。遺伝に関するこうした心配事については、遺伝カウンセリングという医療サービスを利用されるのがよいと思います。

 遺伝カウンセリングでは、遺伝医学の専門医や認定遺伝カウンセラーという専門家が、相談される方の悩みや医学的な問題を整理し、解決策を提示しつつ今後に向けて支援をします。褐色細胞腫はたとえ腫瘍自体が良性でも突然大量のホルモンを放出して生命にかかわる発作を起こすことがありますので、この病気を持つ可能性がある方は症状が出るのを待つのではなく、無症状のうちに検査を受け、早期の診断と治療につなげることが重要です。

 早期に適切な対応を行なえば、ほとんどの場合日常生活に支障は生じません。また褐色細胞腫に気付かないままの妊娠・分娩は重大な合併症を引き起こす可能性があり非常に危険です。まずは内分泌腫瘍に詳しい遺伝の専門家がいる医療施設で遺伝カウンセリングを受けられるのがよろしいと思います。

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