脚本家 北川悦吏子(きたがわえりこ)さん 49
一病息災
[脚本家 北川悦吏子さん]難病(3)周りの「ガンバレ」を励みに
新薬をはじめ、あらゆる治療を試したが効果はなかった。2009年6月、痛みの原因となっている臓器の切除に踏み切った。
ところが術後、臓器の継ぎ目がなかなかくっつかない。痛みはしばらく続いた。
「助けてーっ、もういやだよぉーっ」。病室で何度も叫んだ。看護師から「静かに!」と注意され、どなり合いになったことも。人に知られた人気脚本家という立場も、大人の慎みも消し飛んだ。
1か月後、「顔を見たらくじけそう」と拒み続けていた長女の見舞いを受け入れた。泣き続ける自分を夫と長女が黙って見守る。ふいに、携帯のメール着信音が鳴った。「ガンバレ」。差出人は、目の前の長女、のんちゃんだった。
「私は病気の間、周りの人の『ガンバレ』でどうにか生きていました」
治療法が確立しない難病だけに、いつ終わるかわからない底なしの不安。うつ病になった時期もあったが、苦痛をやり過ごすには、ただ頑張るしかなかった。
大手術から復帰後、最初に手がけたテレビドラマ「素直になれなくて」(10年)では「ガンバレ」をキーワードに使った。ツイッターで知り合った若者の青春群像劇。「ガンバレって言って」「ガンバレ!」。それぞれに問題を抱える登場人物が励まし合う。
そのシーンは、見ていて涙が出た。
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