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医療部発

医療・健康・介護のコラム

北川ドラマの真骨頂

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 「ビューティフルライフ」や「ロングバケーション」、「愛していると言ってくれ」など、大ヒットドラマで知られる脚本家の北川悦吏子さんにインタビューする機会をいただきました。読売新聞木曜夕刊で連載している企画「一病息災」の取材です。

 北川ドラマといえば、病気や障害を持った登場人物が印象に残っていますが、北川さんご本人が長いこと難病と闘ってこられたことは、私自身、最近まで知りませんでした。

 インタビュー前、2004年に放送された「オレンジデイズ」というドラマのビデオをまとめて見直してみて、びっくり。病気の人やその家族の気持ちが、作り物とは思えないリアルなセリフとなって表現されていたからです。医療の取材をするようになって2年余り、患者さんやご家族にお話を聞く機会が増えたこともあり、はっきりわかりました。

 このドラマのセリフで特に印象に残ったのは、風吹ジュンさん演じるヒロインの母が語った言葉です。病気で聴覚障害を負ったヒロインは、手術すれば聴力が回復する可能性がありました。それを知った友達が、手術したほうがいいと勧めたことを知った時の発言です。

「他人がなんでそんな勝手なこと言うのよ。手術の成功率は6割よ。残りの4割に入ったらあの子は完全に聴力を失うの」

「あの子の病気はね、1万人に1人の人がなる病気なの。そんなのにかかるって、うんと運が悪いと思うのよ。そうするとね、その成功する6割に入るなんてこと信じられなくなっちゃうのよ。だめなほうの4割に入っちゃうんじゃないかってこわくなるの」

 自分や家族が健康に生活している人には、なかなか思い至らない心情ではないでしょうか。これまで、取材した患者さんやご家族から似た趣旨のお気持ちをうかがったことも何度かあります。「実感しか書かない」という北川さんの作風の真骨頂ではないかと思ったセリフのひとつでした。

 なお、北川さんの「一病息災」は2月中の毎週木曜夕刊に連載します。

 
 

 

高梨ゆき子 社会部で調査報道や厚生労働行政を担当し、2008年12月から医療情報部。医療政策や医療安全を中心に取材。おすすめ映画は「ディア・ドクター」。今年の目標「節酒」。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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