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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

胃瘻

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 胃瘻(いろう)という医学用語に最近、読者の皆さんは触れることが少なくないと思います。

 脳卒中発作の後や胃がんの手術を受けた際には、もし患者の意識がはっきりしておれば、食べ物の飲み込みの悪い場合、発作後や手術後、しばらくは静脈内から水分やNa(ナトリウム)、 K(カリウム)、ぶどう糖溶液とともに、カロリーの高い人工的液体を点滴するのが通常です。そのうちに体が動き、誤飲することもなく、流動物を口から飲み込ませるように患者に勧めますが、患者の意識不明が続けば、鼻孔から管を入れて、胃の中に水や栄養物をすこしずつ流し込むのです。

末期がん患者など、本人のためになるか分からぬケースも

 ところが以上のような状態が長く続くと、鼻孔からの補液を1日3~4回繰り返すのではなく、腹部を小さく切開して胃のあたりの皮膚に孔を開ける処置をします。それを「胃瘻」と呼びます。ここから液体を補給することは鼻孔栄養よりも操作が楽だから、介護人でも可能です。

 しかし、意識が回復しないか、または認知症がひどくてうとうと眠っている老人や、がんの末期でホスピスでの療養が望ましい重症患者では、胃瘻から水分や栄養物を補給しても、それが本人のためになるかどうかは分からないケースが多いのです。その時は、胃瘻からの補液はむしろ中止した方が当人に望ましいと、医師や家人は考えるかもしれません。

補液中止望むなら、事前に尊厳死協会へ登録

 もし患者の意識がはっきりしている時に、当人が日本尊厳死協会に入会しておれば、家人は医師と相談して、補液の中止を行っても、これは倫理的に認められることで、栄養補液をすこしずつ減らしていけば、結果として尊厳死となるのです。そこで、以上のような重症な病気にならない前に、前もって日本尊厳死協会に登録すればよい。今日、この登録者は29万5千人にも達しています。

 胃瘻を続けていても、その補液は食道から逆流して気管に入ることがあり、そのために嚥下性肺炎で死亡することもあるので、鼻孔からの補液と同様に、胃瘻には副作用もあるわけです。

胃瘻で延命、国内でも40万人

 今、日本では口から食べ物をとれないために胃瘻で延命している人は約40万人にも及ぶと言われています。自分が重症となり、回復が望めなくなったと思われた時には、補液などをしてほしくないことを事前に家人や医師や日本尊厳死協会に登録しておけば、それが一番よい手立てであることを覚えておいてほしいと思います。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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