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江戸時代にも健康ブーム ~ 錦絵にみる人体観 ~
人が「健康でありたい」と願い、「自分の体の中はどうなっているのか」と、そんな疑問を抱くのは今も昔も変わりません。
日本では中国医学の影響により、体のしくみは『五臓六腑説』で考えられてきました。五臓六腑説とは人の体を心・肝・脾・肺・腎の五個の臓器と、胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦という六つの管状の臓器、および、そこに生命の源である「気」や「血」を送る十二経絡からなるという概念でした。
人は生まれた瞬間に“気”を与えられると考えられ、それを“元気”と呼び、この考え方によれば、体の機能をバランスよく保つことが健康であると考えられてきました。一方“気”を病むことから“病気”といわれました。 そして病気の場合は、食べ物や薬で回復に努めたのです。人々は普段から健康を維持するために日常生活における養生を心がけていました。
このように、普段から病気にかからないよう用心し、体を大切にすることを「養生」といいます。昔から養生の仕方にはいろいろあり、平安時代に書かれたわが国最初の医学書では、主に暴飲暴食と過度な房事をいましめています。江戸時代の後期には養生を尊ぶことが盛んになりました。具体的には食事を節制して、適時、適度な運動を行い、日常の起居や動静を規則正しく行い、季節との関わりに気を配るといったことでした。自らの欲望のほしいままに生きるのではなく、自制して安心できるように慎重に生活することでした。
この時代には、体の構造や働き、生命についての素朴な疑問に答える錦絵が制作されました。中でも「飲食養生鑑」では中国の五臓六腑説を「人間の貴人高位というも、下賎の身も、また賢も愚なるも、はらの中にそなえたる臓腑此ごとし」として解説し、男性の体を解剖図のように示しています。そして、それぞれの器官の働きを人間にたとえながら、無理をすると健康を損なうということがわかりやすく書かれています。
胃は「毎日の食い飲みから無駄食いまでよく慎み、大食、大酒、むら食いをせず… を心がけざれば、身を苦しめ、命を縮めるの憂いあり」と書かれています。肺は「団扇(うちわ)の骨も折れるが、又からだの骨も折れるようだ。ちっと休もうじゃないか」とぼやいたり、肝道は「勘当(肝道とかける)といってもおいらは親孝行だぜ」といっています。ユーモアのある内容に思わず笑いを誘われます。こういった錦絵は江戸時代の人々の人体観をよくあらわしているといえるでしょう。(内藤記念くすり博物館 伊藤恭子)
JIN-仁-
チョコマリン
江戸時代の医療のお話を見聞きすると、どうしてもこの物語を思い浮かべます。 今も昔も変わらぬ、仁の精神を持って、個々の患者の健康と質の向上の手助け...
江戸時代の医療のお話を見聞きすると、どうしてもこの物語を思い浮かべます。
今も昔も変わらぬ、仁の精神を持って、個々の患者の健康と質の向上の手助けを。
これからも続いて欲しい医学です。
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