文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

お知らせ・イベント

お知らせ・イベント

意見交換(1)30歳代から自己検診を

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 フリーアナウンサー高橋佳代子さんの司会で行われた意見交換の模様をお届けします。出席者は、東京慈恵会医科大学乳腺・内分泌外科教授の内田賢さん、岩手県の乳がん患者会「アイリスの会」会員の楢山勇子さん、田中秀一・読売新聞東京本社医療情報部長です。

出席者
東京慈恵会医科大学乳腺・内分泌外科教授 内田賢
岩手県の乳がん患者会「アイリスの会」会員 楢山勇子
読売新聞東京本社医療情報部長 田中秀一
司会 フリーアナウンサー 高橋佳代子(たかはし・かよこ)
 盛岡市生まれ。盛岡白百合学園高校、日本基督教短期大学英文科を卒業して、テレビ岩手にアナウンサーとして入社。日本テレビ系列の「ズームイン!! 朝!」を1979年3月から88年3月まで担当、この間の80年よりフリーアナウンサーとなり、中国、インド、アフリカ、ヨーロッパなど海外取材を多数経験した。88年4月から2007年9月まで、日本テレビ「おもいッきりテレビ」を担当した。茶道、スキーなどが趣味。

 

 

 高橋 乳房というのは女性にとってはとても大切なもの、かけがえのないものです。乳がんを治療し、前向きに人生を楽しく、明るく過ごしていらっしゃる楢山さんは、本当にすてきだなと思います。

 乳がんがとても増えていると、内田先生の基調講演にありましたが、そのあたりから、話を進めてまいりましょう。

 田中 乳がんが増えている理由の一つとして、出産年齢が上がったこと、あるいは出産が減ったことが指摘され、それから未婚だと乳がんが増えるというお話があったのですけれども、これはどのように関係しているんでしょうか。

 内田 出産したことがない、あるいは早く生理が始まり、57、58歳ぐらいまで長い期間月経がありますと、卵巣から出る女性ホルモンに乳腺がずっと刺激を受けています。女性ホルモンの刺激を長期間受けていると、乳腺の細胞が異常を起こして乳がんになりやすいと考えられます。発がんの細かいメカニズムはまだわかっていません。

 田中 では、乳がんを防ぐためには早く結婚して、早く子供を産んだほうがいいのですか。

 内田 そうですね。確かに早く子供をたくさん産んだほうが乳がんのリスクとしては下がります。でも、そのために早く子供を産むことはできません。

 田中 はい、わかりました。では、次は検診の話を。実際に乳がんに気をつけたらいい年齢は何歳ぐらいからと考えたらいいのでしょうか。

乳がん検診、40歳がスタート時期…内田さん

 内田 40歳くらいから乳がんが増え始めますので、やはり40歳が検診のスタートの時期だと思います。

 高橋 そうですか。先ほどの先生のご講演の中で、乳がん検診のメリット、デメリットというお話がありましたけれども、私は検診を受けてデメリットってないんじゃないかと思っていたんですが、意外と精神的な部分も含めて、デメリットがあるものなんですね。

 内田 そうです。マンモグラフィー検診を受けて異常があると言われ、心配になり、悲壮な顔をして、「きのうは眠れなかった」と外来にいらして、何でもなかったということがわかると、涙を流すような方も中にはいらっしゃいますね。

 高橋 私も、実はちょっと告白をしますと、人間ドックで乳がん検診を受けたときに、石灰化があって、生検の検査をしていただいて、結果がわかる3週間ぐらいでしたか、その間、もう、とても精神的に不安定だったんです。テレビで見るコマーシャルのメロディーとか、ちょっと聞こえてくる音がとってもきれいに聞こえて、何か、やっぱりがんなのかなというふうに自分の中で考えてしまって、とっても不安だったことをよく覚えているんです。楢山さんはどうでしたか、病院に行かれたときには、検査で結果がすぐにわかったんですか。

 

 楢山 はい、すぐにわかりました。産婦人科の開業医の先生に、「私、乳がんでしょうか」って言ったら、先生は「すぐに紹介状を書きます」とおっしゃいまして……。

 高橋 そうですか。それまで自己検診とかそういうことはなさったことはあったんですか。

 楢山 いいえ、ありませんでした。もう、自分が乳がんになるという意識が全くなかったんです。ただ、しこりがあれば乳がんというくらいの知識しかなかったんです。ここに来ている方は別だと思うんですけど、「私は乳がんにはならない」と思っている方がほとんどだと思います。

 高橋 そうかもしれませんよね。

 楢山 はい。会場にいらしている方には、これからなるかもしれないと思って自分の胸を時々触ってみることをお勧めいたします。

 高橋 そうですか。やっぱり自己検診というのは大事なことですね。

 田中 先ほど、アメリカでは自己検診は勧めないというお話だったかと思うんですけれども、どういうふうに考えたらいいんですか。

 内田 日本では30%ぐらいの人が検診で見つかって、あとの70%は検診以外で乳がんが発見されています。多くの方は、自分でしこりを見つけて、手術を受けに来ているのが現状です。ですから日本では、自分で月に1回、生理の終わった後に自己検診されるのがいいかなと思います。私は、自己検診は生理が終わった後、おふろに入って、手にせっけんをつけて、片方の手を上げて、お乳をまんべんなく、意識を持って洗いなさいと説明しています。最後に乳首をつまんで出血があるかどうか、そんなふうに自己検診を勧めています。

過剰診断、どう考える?

 

 田中 それから、検診のデメリットの一つとして、過剰診断があるということです。これはどういうことなんでしょうか。

 内田 あまりにも小さい非浸潤がん、例えばマンモグラフィーでは5ミリぐらいの小さな非浸潤がんが見つかることがあります。40、50歳台ではそれで手術すべきだと思いますけれども、80歳を過ぎて、たまたま5ミリの非浸潤がんが見つかっても、それは命を脅かすものではないのですね。放っておいても、それが本物のがんになって命にかかわってくるのには10年以上かかるでしょう。その間に寿命を全うしてしまうかもわかりません。あまりにも早期の乳がんが見つかってしまうということも問題ですね。言い換えれば、患者さんに症状をもたらすことがなく治療不要のがんが、検診によって見つかってしまうことです。

 田中 そうすると、乳がんに気をつけ始めるのは40歳ぐらいからというお話でしたけれども、検診は何歳ぐらいまで受けるのがよろしいんでしょうか。

 内田 先ほどもスライドでお示したように、75歳ぐらいまでは定期的なマンモグラフィーの検診がお勧めで、あとは自己検診でよろしいかなと思います。

 高橋 若い方たちは、自己検診は何歳ぐらいから必要ですか。

 内田 血縁家族で乳がんの方がいらっしゃるような人は、30歳を過ぎたら自己検診を始めたらいいと思います。そうでなければ35歳を過ぎたら、定期的に触って、自分の胸はこんな感じだなというのを覚えておくといいですよね。

 高橋 あ、そうですね。「きょうはちょっと違うな」ということに気づくことができますものね。

 内田 ええ。女性の胸は月経の前と後ではかなり張りが違ったりしますので、自分はこんな感じなんだなということを自分の手に覚え込ませておくのがいいと思います。(続く)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

お知らせ・イベントの一覧を見る

最新記事