原発性アルドステロン症とは、どんな病気?
半年前に「原発性アルドステロン症」と診断され、降圧薬を服用していますが、血圧が高くなかなか下がりません。原発性アルドステロン症とは、どのような病気でしょうか。また、どのように治療したら良いのでしょうか。教えて下さい。(43歳女性)
副腎腫瘍などが原因、 副腎摘出で完治の可能性も
腎臓の上に副腎が左右にあります。横隔膜の直ぐ下にあり、後腹膜臓器と呼ばれ、右副腎は肝臓に接して、左は腎臓の真上に位置しています。副腎は、小さなホルモン分泌臓器で、体を維持するすなわち、血圧や糖を正常に保ったり男性ホルモンを作って成長発育や筋肉を増やしたり、骨を強くしたりする大事な内分泌臓器です。
特に、体に食塩を貯め込む作用がある鉱質ステロイドホルモンをアルドステロンと呼んでいます。副腎に腫れ物が出来て過剰にアルドステロンが出来すぎてしまい、その結果、高血圧になってしまう病気を原発性アルドステロン症と呼んでいます。
この病気は、的確な診断で外科的処置により治癒が期待できる、すなわち原因が明確な高血圧症です。特に、(1)薬が効きにくい難治性高血圧の方、(2)家族内に、この病気の患者がいる(3)若いのに脳卒中を起こしたことがある・・・などに該当する高血圧患者にこの病気の頻度高いとも言われています。
最近の研究で、原発性アルドステロン症が高血圧症の5~15%を占める、頻度の高い病気であることが分かってきました。
また、特徴は、食塩が体内に貯まりすぎて尿にカリウム(野菜や果物に沢山含まれます)が多めに出てしまい、低カリウム血症となり、その結果筋力が低下したりこむら返り(例えば足がつる)を起こしたり、あるいは多尿すなわち夜休んでいても何度もトイレに立つ事になります。
しかし、大半は高血圧のみが特徴で、特別な症状を示さない場合が多く、この病気の存在を疑うことで初めてその診断に至る患者さんが多いです。普通のいわゆる本態性高血圧症と比較しますと、原発性アルドステロン症で脳卒中が4.2倍、心筋梗塞が6.5倍、心房細動が12.1倍、左室肥大が1.6~2.9倍高率に発症します。アルドステロンで脳心血管障害が進行する事が良くお分かり戴けたと思います。
この病気の原因は、大きく分けて、(1)片側副腎からのアルドステロン過剰分泌(2)両側副腎からのアルドステロン過剰分泌の2群に分類されます。片側か両側の副腎病変かは、直接副腎静脈カテーテル挿入による採血を行わないと診断できません。片側副腎病変であればその副腎を摘出し、両側病変では抗アルドステロン剤などによる薬物療法を行います。
治療法としては、外科的処置(片側副腎の摘出。内視鏡手術が主流です)並びに、薬物療法です。薬物としては、アルドステロン拮抗剤(スピロノラクトン、エプレレノン)を基本に用います。さらに、血圧を低下させたい場合はカルシウム拮抗剤(アムロジピン等)を併用します。
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ご質問者は、血圧が低下しないという事であればスピロノラクトン、あるいはエプレレノンの最大投与量を内服するのも宜しいかと思われます(高カリウム血症や男性で女性化乳房、女性で月経異常などの副作用に注意)。その上でカルシウム拮抗剤を併用すれば通常の原発性アルドステロン症であれば正常血圧まで改善致します。
それでも血圧のコントロールが悪いようであれば腎硬化症など高血圧合併症が進行しているか、この病気の病型を再度鑑別しその原因の正しい診断を専門家に依頼すると宜しいかと思います。
いずれにせよこの病気は体内に食塩がたまり易くなる状態ですので、食事中の食塩制限が大切です(本疾患ばかりか、高血圧の方は食塩制限が治療の第一歩です)。可能な限り手術でアルドステロン過剰状態を改善し、将来起こりえる脳心血管障害(脳卒中等)を予防する事が重要です。