文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

低血圧は病気か

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 医師に血圧を測ってもらって、低血圧症だと言われた方がありますか。

 その場合、血圧が診察室で測られた時、医師から「あなたは血圧が低すぎるよ」と言われたら、あなたは驚くでしょう。

 デパートや人混みの中に入ると、今まで何回か卒倒して、救護室に担ぎ込まれたことがあるという方はありませんか。これは心理的なストレスで、一時的に血圧が下がって、脳内の血流が少なくなる一時的な脳の虚血を起こしたからで、これを俗に脳貧血と言います。

 私は貧血症だという方に申したいことは、医師が患者に「あなたには貧血があります」というのは、採血した血液中の血色素量(ヘモグロビン)が低下した場合で、打撲で内出血するか、どこか内臓に出血して赤血球数が減ったことによる貧血か、または食べ物中から鉄分の摂り方が少ないために血色素量の低下するときに起こります。

 婦人では、特に体内や体外への出血がなくても子宮筋腫があると、当人は気付かぬ間に血色素量が低下し、少し息切れがするかなと思っているうちに、ますます貧血が進行します。婦人科医により内診を受けると、子宮筋腫(悪性の子宮がんとは違う)があると言われますが、開腹して筋腫を摘出すると、貧血は治ります。

血圧がいつも90以下なら本当の低血圧症

 ところで、医師の診察を受け、低血圧症と言われるのは、最高血圧値が100mm 水銀柱より低い時にそういわれますが、血圧がいつも90以下だと初めて本当の低血圧症と言ってよいでしょう。

 最高血圧が100を切っていても、それをすぐ病気と考えなくてもよいのです。人により十分に食べてもやせ型の人がありますが、それは病気でなく体質で、特に病人と思う必要はありません。

 そんな体質の人が睡眠不足になったり、脱水があったりすると、最高血圧が90以下に下がり、立ちくらみが起こったりしますが、上述の子宮筋腫などのからだの負担をとれば、心配ありません。

 そのように、若い時から血圧が低めの人は、年をとり、だんだん血管の老化で動脈硬化が起こって、最後に最高血圧は130 ~ 140以下に止まっていることが多いのです。

75歳以上の人、食後すぐに立ち上がらない

 しかし、75歳以上の老人になると、食事を外で取った後、食堂から自宅に帰ろうとして、食後すぐ立ち上がると、食事性低血圧が瞬間的に起こり、フラフラして、倒れて骨折を起こすことがありますから、食後すぐ立ち上がらない注意が必要です。

 低血圧の人は虚弱で病気になりやすいと考えられているのは間違いで、最高血圧が90前後と低くても、それだけで心配する必要はありません。

 まれに副腎皮質の機能低下があると、アジソン病と言って、低血圧と共に皮膚に黒い色素の沈着を伴う病気がありますが、医師にそのことを申し出れば早く診断され、副腎皮質ホルモン療法で症状が消失します。

血圧低いと言われても心配し過ぎないで

 以上、血圧が低いと言われることで、心配しすぎないようにして下さい。いつも日陰にいて皮膚が白っぽいのは体質的に色が白いので、軽く野外で日光浴をすればよいのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
詳しいプロフィルはこちら

日野原さんが監修する「健康ダイヤルweb」はこちら

日野原重明の100歳からの人生の一覧を見る

最新記事