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世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ

yomiDr.記事アーカイブ

タイガーマスク運動と日本の寄付文化

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 世の中捨てたもんじゃない! だれもがそう思いました。タイガーマスク運動のことです。

 自分のお金で気前よく寄付する。児童養護施設に匿名の贈り物を置いておく。

 昔、島田紳助さんが漫才のギャグにしていたのを、懐かしく記憶しています。それが今、現実の運動として全国に広がりつつあります。

 タイガーマスクの伊達直人からはじまり、矢吹丈、妖怪人間ベロ、星飛雄馬、そして、みなしごハッチ。あれれ? ジェンダーの視点で見ると女性がいません。鮎原こずえや上条茜、白木葉子も今後、期待できるかもしれません。


 こういった善意の寄付の話は、実は医者同士の間ではひんぱんに話題になります。欧米の病院には多額の寄付が大富豪や企業から寄せられ、寄付した人の名前がつけられた病棟がたくさんあるからです。

 「どうして日本にはそんな習慣というか、文化がないのだろう」

 いただく立場である医者がそんな愚痴をこぼすと、余計に社会から敬遠されるのでしょうが、とにかくそういった文化の違いはあるようです。

小児病院に寄付しようとしても…

 先日も、「絶滅の危機に瀕(ひん)している小児の心臓外科を救うための病院ができないものか」と、ある東大の教授が電話をしてきました。

 子供の心臓病を対象とする心臓外科の分野があります。佐野俊二氏(岡山大学)を筆頭に、麻生俊英氏(神奈川県立こども医療センター)、坂本喜三郎氏(静岡県立こども病院)など、日本には世界ランカーの心臓外科医がいるのです。しかし、他の方々も含めてみな、非常に厳しい条件の中でがんばっています。

 少子化が危ぶまれる現状で、子供の医療を助けようと企業が寄付をする風潮が生まれないものでしょうか。

 ただし、現状はこういった重病の子供を治療する病院は官公立が中心です。税金と同様に、寄付されたお金が効率よく使われるのか、大いに疑問があります。「直接、スタッフの待遇向上に使ってください」などという寄付は不可能でしょう。

 それに企業が寄付しても全額税金控除になるのではなく、課税されるという無慈悲な仕組みのようです。ある大企業の方にこの話をすると、「寄付をしたなんてことが報道されると、株価が下がるんです」。これが我々の暮らす日本社会の民度ということです。


 過酷な運命を背負った子供たちに最良の医療をふんだんに行える民間の病院が、善意の寄付を中心に運営される社会にはならないものでしょうか。

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南淵明宏ブログ_顔87_87替

南淵明宏(なぶち・あきひろ)

1958年大阪生まれ。大崎病院東京ハートセンター(東京都品川区)のセンター長。心拍動下(オフポンプ)冠状動脈バイバス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀する心臓外科医。

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4件 のコメント

国境なき医師団への寄付

大ちゃん

私は、ユニセフに、すでに30年近く毎年定額を寄付してきました。 また、国境なき医師団が結成されてからは、同じように毎月定額を寄付してきました。 ...

私は、ユニセフに、すでに30年近く毎年定額を寄付してきました。


また、国境なき医師団が結成されてからは、同じように毎月定額を寄付してきました。


しかし、それがどのように使われているのかは、正直定かではありません。ある学校に寄付した時には、図書館にきちんと明記しておいてくださいました。病室を作るほどの寄付はとてもできませんが、自分の寄付がどのように使われたかわかると、励みになりますよね。でも、今は無理でしょう。けれど、定額の寄付は、今後も続けます。


私たちは、ユニセフのおかげで大きくなれたのですから。

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寄付文化元年に!

ひまわり

本当にそう思います。小児心臓外科だけでなく、いろいろな病院に必要です。 やっと、外来ロビーにボランティアさんの活動が一部の病院ではじまっています...

本当にそう思います。小児心臓外科だけでなく、いろいろな病院に必要です。


やっと、外来ロビーにボランティアさんの活動が一部の病院ではじまっています。今のような経済状況で、公的補助も期待できない、救急や小児科の採算の取れない部門が診療報酬では経営困難で閉鎖を余儀なくされている今こそ、企業や個人から寄付を認めていく、税金の控除やルールづくりが必要ではないでしょうか。先端医療には、膨大なお金がかかります。ハードとソフトを充実させて欲しいと思います。


今こそ、「おたがいさま」の精神で助け合いが、できることを国民の一人として声を上げたいと思います。病気になりたくてなる人も、不幸な偶然が重なって、障害を持ってしまった人もいないのですから・・・タイガーマスク運動をきっかけにして考えたいですね。

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相手先指定の寄付がわかりやすい

ウイ サポート

私たちが学生の時、募金運動をしました。地震災害の被災者への、あるいは、赤い羽根などの目的でした。デパートの前や街角でお願いしますというと千円札を...

私たちが学生の時、募金運動をしました。地震災害の被災者への、あるいは、赤い羽根などの目的でした。デパートの前や街角でお願いしますというと千円札を箱に入れて下さる方がたくさんおられましたので、結構な募金額になりました。


でも、直接ではないので、正直、誰にどれぐらい届けられたのか分からず、喜んでいただいた感動は、得られませんでした。今回のタイガーさんのように、直接したい相手に差し上げるのが良いと思います


公共の施設や病院など、市と理由を明確に大きな声で寄付お願いしますと堂々と言える社会になって、寄付するほうもいただくほうも自分の意思でできるようになるのがよいと思います

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