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時間感覚…年齢、状況でずれる「心の時計」

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 年を取るにつれ、時が早く過ぎるように感じませんか。また、同じ時間でも、時と場合によって、短く感じたり長く感じたり。時計の時間は一定なのに、なぜ私たちの感じ方は一定ではないのでしょうか?(高橋圭史)

 「そのようなズレは、『心の時計』と『実際の時計』の進み方の違いとして考えることができます」

 こう語るのは、時間学の研究に取り組み、「大人の時間はなぜ短いのか」などの著書もある千葉大文学部准教授、一川(いちかわ)誠さん(実験心理学)だ。

 こんな実験がある。対象者は4~82歳の約3500人。自分が「3分」と感じた時点でボタンを押してもらったところ、年齢が高くなるほど、実際の3分より長くなる傾向が出た。

 分析によると、2~4歳年齢が上がるごとに1秒長くなり、70歳代では1割増し。70歳代の人は、「本当は3分18秒もたっていたの?」と驚くことになる。

 つまり、年をとるほど「実際の時計」より「心の時計」の進み方が遅くなるため、時がたつのを早く感じる、というわけだ。

 一川さんによると、心の時計に影響を与える要因は、様々な実験研究から分かってきている。一つずつ紹介すると――。

代謝

 代謝が良いほど、心の時計が早く進み、時間を長く感じる、という仮説が有力視されている。一川さんの研究室の実験でも、運動した後の方が、運動していない時より、時間を長く感じる傾向が出た。年とともに時間の経過を早く感じるのは、代謝が落ちるから、とも説明できる。

感情

 恐怖を伴う時間は長く感じるらしい。英国の実験で、ガラス箱の中のクモを一定の時間(実際は45秒)凝視させ、どのぐらいの時間に感じたか尋ねたところ、クモに恐怖感のある35人の平均は56秒で、恐怖感のない18人の平均33秒より大幅に長かった。

時間に注意を向ける頻度

 頻繁に時計を気にすると、時間を多くの部分に分節化して認識し、長く感じる、との仮説がある。つまらない時間は、時間に注意が向きやすいので長く、逆に何かに集中すると短い。車の運転では、直進中に比べ、作業が複雑で集中が必要な右折時の方が、かかった時間を短く感じる、との研究もある。

印象に残る出来事の数

 印象に残る出来事が多い時間の方が、長く感じられる傾向がある。子供はささいな事も、新鮮に感じ印象に残りやすい。一方、大人は多くの事をしても、慣れていると印象に残らない。これも、加齢に伴って時間を早く感じる理由らしい。

刺激

 大きい物・音に接するなど、強い刺激を受けた時間の方が長く感じる、との研究もある。

 とかく現代人は時間に追われがちだが、これらの考察を生かせないだろうか。

 例えば、楽しい時間を長く感じることは可能か?

 一川さんは「慣れた事だけでなく、少しずつ新しい事に取り組めば、経験する出来事や刺激が増え、充実した時間が長く感じられる可能性はある」と話す。

 さらに、こんな助言もしてくれた。参考にしたい。

 「人が思うほど実時間は長くない。予定は詰め込み過ぎず、やりたい事に優先順位を付けた方がよい」

時間学
 哲学や物理学などで別々に行われてきた「時間」に関する研究を、文系理系の枠を取り払い総合的に捉えようとする新しい学問。生活リズムと病気の関係、時間感覚を踏まえた社会政策なども対象。2009年に設立された日本時間学会には、理、工、医、文など様々な学部から研究者が参加。山口大には時間学研究所がある。
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