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対談(3)なぜ放射線治療が広がらないのか

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 田中 日本でなかなか放射線治療が広がらない理由としては、やっぱりお医者さんにかかったときに、なかなか放射線治療の説明をしないということがあると思うんです。これ、なぜそうなったんでしょうか。

 中川 外科の先生はやっぱり手術をしたことが、実績になります。売り上げとは言わないけれども、やっぱりそういう面はあります。当然、手術をやりたい。

 日本では、抗がん剤治療を専門に担う腫瘍内科医が極めて少ないことも、非常に関係しています。例えばアメリカの一流の病院では、がんの患者は最初に、外科、放射線科、内科の三つの科を回る。がん診断をつけるところは、日本は外科医がやったりしますけれども、基本的に、欧米では内科医や腫瘍内科医がやります。

 腫瘍内科医のほうがいいのは、固形がんの場合には、抗がん剤というのは、それを治し切る切り札にならない。つまり、手術か放射線かという場合、腫瘍内科医はプレーヤー(選手)じゃなくて、レフェリー(審判)になるんです。腫瘍内科医が患者さんと一緒に治療法を相談する感じになる。

 日本の場合には外科医が診断しますが、外科医はプレーヤーなんです。そして、巨大なプレーヤーです。外科系の医者は10万人います。放射線治療の専門医は650人。それはやっぱり多勢に無勢なところがある。日本では腫瘍内科医は機能していませんから、レフェリーがいないんです。欧米では、腫瘍内科医が、自分がプレーヤーではないゆえに、フェアなジャッジ、診断ができる。その点も大きい気はします。

副作用への注意は?

 田中 放射線にもやっぱり副作用はあると思うんです。どういう症状があらわれて、その中で特に注意が必要なものはどんなものがあるかというのを少し伺いたいと思います。

 中川 放射線治療が多く行われているのは、首とかのどのがんです。早期の喉頭がんについていうと、ほんとうに後遺症がほとんどないです。

 ただ、咽頭がんは、やや広い範囲に放射線をかける、特にリンパ腺まで放射線をかけなければいけないと、唾液腺まで放射線がかかるんです。そうすると、口が渇く、あるいは味が変わったりします。味が変わるのは、大体1年、2年で元に戻ることがあるんですが、口が渇くという症状は結構長く続く。これは一つのデメリットです。これも唾液腺のところだけ避けるような方法を今始めていますけれども、まだ完全ではないです。

 それから、肺がんの場合には、正常の肺にもやっぱり少し放射線がかかって、特にたばこをたくさん吸う人などでは、もともと肺が傷んでいるから、肺炎みたいな症状が起こってくる場合もあります。

 前立腺がんにしても、子宮がんにしても、腸に放射線がややかかるんです。時に、腸から出血するようなことがありますが、これは大体おさまります。

 田中 例えば、前立腺がんで、手術と放射線を比べた場合の後遺症とか副作用はどんなふうに違いますか。

 中川 後遺症自体の種類が違うんです。例えば前立腺がんの手術をすれば、これは男性機能はほぼ100%失われます。そして、ほぼ100%、尿が漏れます。尿漏れについては回復してくることがありますが、男性機能については回復しません。

 放射線の場合には、おしりから排便のときに出血する率が数%。一時的にお小水の回数が増えたりはします。でも、ひいき目に見なくても、正直言って、放射線のほうが楽だと思います。(続く)

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