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基調講演(3)手術に負けない放射線治療

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東京大学医学部付属病院放射線科准教授、緩和ケア診療部長 中川恵一さん

 多くのがんで、手術と放射線治療は同程度の治癒率をもたらします。

 例えば喉頭がん。これは手術でも、放射線でも同じ治療成績です。けれども、手術をするということは、声帯をとるわけですから、声が出なくなります。これなら放射線のほうがいい。

 食道がんは、抗がん剤と放射線を同時に使う化学放射線療法を行うと、手術と比べてほとんど同じ治癒率です。

 子宮頸がんも実は手術と放射線で同じ治癒率です。そして、放射線のほうは入院する必要もない。仕事をしながら通える。だったら、放射線のほうがいいと思います。欧米では放射線のほうが多く行われています。

 子宮頸がんをどれだけ手術しているかを各国別で見ると、例えばちょうど中ぐらいの進行度の2期の子宮頸がんで、日本では8割近くが手術、2割が放射線です。欧米各国では、2割しか手術していない。8割が放射線です。こんなに差があります。

 同じ治癒率ですから、手術がいけないわけではもちろんないんです。どちらでもいいのです。しかし、この違いはやはり一般の方が、手術以外の方法があるということをよく知らない。そのせいではないかと思うのです。

 今、放射線治療はどんどん進歩しています。がんだけにピンポイントに放射線をかけられるように、改良されています。最近は、水素の原子核を加速してがんに照射する陽子線治療や、炭素の原子核を使った重粒子線治療の研究も進んでいます。どちらも、普通のエックス線と違って、がんの病巣にピンポイントに放射線を集中することができる利点があります。

 また、臓器は呼吸などで動くので、がんの部分も一緒に動いてしまいますが、動いている臓器の位置をその場で計算し、動くがん病巣を追いかけて放射線を当てる方法も開発されています。

緩和ケアで痛み取った方が長生き

 最後に、緩和ケアに少し触れたいと思います。日本のがん患者さんで、亡くなる方の7~8割の方が激痛の中で一生を終えています。

 がんの痛みをとる切り札は、モルヒネなどの医療用の麻薬です。この使用量を国際的に見ると、日本は先進7か国の中でビリであるだけではなくて、アジア、アフリカを含む、世界の平均以下なんです。アメリカ人と比べると、1人あたりの使用量は20分の1。こんなに少ない。だから、その分痛いんです。

 多くの患者さん方が口にするのは、医療用の麻薬なんか使ったら、命が縮むのではという不安です。

 実は、痛みをとる緩和ケアを行ったほうが長生きなんです。つまり、治療とケアを同時に提供すると、患者さんの痛みの症状がとれ、生活の質がよくなるだけではなくて、長生きすらする傾向があるんです。

 放射線治療というのは、実は、キュア、つまり治すという治療行為と、ケア、つまり痛みをとるような、また癒やすような行為、これのかけ橋になるのです。例えばがんが骨に転移して骨折してしまう。ところが、放射線をやると、骨が復活する。痛みがとれるだけじゃなくて、骨が再生したりすることもある。

 実は今までこういったことは延命につながらないと思われていた。しかし、患者さんのつらい症状をとることは、結果的には延命につながる。足が全く動かない人が歩けるようになったら、長生きするに決まっています。

 亡くなるまでの限られた時間を豊かに過ごすための手助け、こういったことも放射線治療にはできるのです。(続く)

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