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いきいき快適生活

介護・シニア

[読み得 医療&介護]ケアプラン、自分で作成

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 必要な介護サービスを組み合わせ、高齢者の生活を支える介護保険の「ケアプラン(介護計画)」は、ケアマネジャーに作成を依頼するのが一般的だが、自分で作ることもできる。自己作成の利点と、自分に合ったプランを作るポイントをまとめた。(飯田祐子、写真も)

無駄なくなり、きめ細かく

作成した書類に間違いがないかチェックする金子さん

 千葉県流山市の金子恵美子さん(59)は、16歳で関節リウマチを発症した。関節リウマチ患者は、40~64歳でも介護保険を使うことができるため、要介護2の認定を受けてサービスを利用している。

 2000年に介護保険が始まると、ケアマネジャーにケアプランを作ってもらい、訪問介護やデイケアなどを利用していたが、3年前にケアマネが交代。新しい担当者は、利用するサービスの種類を勝手に決めようとしたり、自社のサービスを使わせようとしたり、「私の希望や生活習慣を理解しようとしなかった」と言う。

 金子さんは、インターネットなどで情報を集め、自己作成者らが集まる「全国マイケアプラン・ネットワーク」の島村八重子代表らのアドバイスを受けてケアプランを立てた。市の担当者は「手書きの書類を見たのは初めて」と戸惑っていたが、翌月からは、手続きの滞りもなくなった。

 以前は、ケアマネの勧めで限度額ぎりぎりまでサービスを利用していたが、自己作成すると、無駄なサービスが目につき、削るようになったという。金子さんは「自分の暮らしを作っているという実感があり、計画を立てるのが楽しい」と笑顔を見せる。

 介護保険は、サービス費用の1割を利用者が負担するのが原則だが、ケアマネにケアプランを作ってもらう場合は、費用の全額が保険でまかなわれる。このため、ケアプランを自己作成する人は限られ、介護保険を運営する市町村の受け入れ態勢も整っているとは言い難い。同ネットワークが昨年、全国の市町村を対象に行った調査(回答数896)では、継続的に自己作成している人は、要支援者の0・04%、要介護者の0・01%。自己作成者向けのマニュアルがある市町村は1割にとどまった。

 利用者や家族がケアプランを作る場合、訪問介護やデイサービスなどの事業所を自分で見つけ、サービスを依頼したり、書類を作り市町村や事業所とやりとりする必要がある。こうした手間も敬遠される一因だが、「慣れれば面倒とは感じない程度。メリットの方が大きい」と島村代表は話す。

 利点を生かすにはどんな点に注意するのか。要介護5の母親のケアプランを作ってきた福島県会津若松市の林幸子さんは「事業所などの情報を集め、自分の目で確認することが大切」という。林さんは、母親が今年2月に亡くなるまで、心理カウンセラーの仕事と並行して介護を続けていた。「信頼できる事業所を選び、直接、連絡を取りながらサービスを利用することで、安心して仕事に打ち込めた。本人の状態や家族の都合などに合わせて、きめ細かいプランを立てることもできた」と振り返る。

 助けになるのが、同ネットワークが発行する冊子「あたまの整理箱」だ。介護を受ける人のこれまでの生活や今後の希望などから、必要なサービスを考え、書類を作る方法を解説している。計算には、同ネットワークのサイトからダウンロードできる専用ソフトを活用すると良い。島村代表は「自己作成には、難しい作業は必要なく、やる気さえあれば誰でもできる。ぜひ一度、挑戦してみてほしい」と話している。

◆全国マイケアプラン・ネットワーク(ファクス042・405・5950、サイト http://www.mycareplan-net.com
◆マイケアプラン研究会(京都)(ファクス075・581・9956、サイト http://homepage3.nifty.com/mycare/)も、指導書「私にもつくれますマイケアプラン」を発行している。
◆介護事業者のリストなどは、市町村でもらえる。地域包括支援センターでも、自己作成の支援を行っている

ケアプラン
 12年度の介護保険制度改正に伴い、厚生労働省は、保険料の上昇を抑えるため、1か月500円か1000円の利用者負担をケアプラン作成に導入する案を示した。しかし、「負担感から、利用抑制を招きかねない」など、現場のケアマネや利用者の反発が強く、24日に見送りが決まった。


自己作成のポイント
〈1〉これまでの生活や今後の希望、家族など周囲の人との関係を見つめ直す
〈2〉家族や近隣住民、地域の団体や公的制度の支援を得られるか確認する
〈3〉介護保険制度の仕組みやサービスの種類、内容などを把握する
〈4〉最初から完璧を目指さず、少しずつ改善を重ねる
〈5〉限度額を使い切ろうとして不要なサービスを詰め込まない
〈6〉生活リズムを大切に。ケアプランに生活を合わせるのは本末転倒
〈7〉偏りを避けるため、周囲の意見を取り入れる
(全国マイケアプラン・ネットワークの島村八重子代表の話をもとに作成)
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