文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いきいき快適生活

介護・シニア

[認知症と向き合う](9)「注意障害」ゆったり構えて

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 私が直接担当している方ではないのですが、認知症の方から電話があり、話を聞いてほしいと言われました。持病の治療法に関する相談で、注射から飲み薬に変えたいとのことでした。

 主治医に相談しやすいように内容を整理しようと、私はその方に質問をしました。しかし、私の声がよく聞こえないというのです。

 質問の仕方を短く変え、「注射は何単位打っているのですか?」と大きな声でゆっくり尋ねました。すると「周りがうるさくてよく聞こえないんです」と言われます。再び質問を変え、もっと大きな声で「注射の種類は何ですか?」と聞くと「朝18単位……」と、今尋ねている内容とは違う答えが返ってきました。

 家族の方が代わって電話に出ました。「周りがだいぶうるさいようですね」と聞くと「別にうるさくないですよ」と言われました。

 それを聞いて、アッと思いました。私は、この方の認知症の状況をよく把握していなかったばかりか、心理的なプレッシャーをかけてしまった。その結果、ご本人はその状況から逃れたい一心で、最後の質問に、半ば当てずっぽうで答えたのだと気づいたのです。

 アルツハイマー型認知症の場合は記憶障害が有名ですが、認知症があると、「注意障害」も伴うことがあります。様々な音から必要な音だけを拾いだす能力、相手の声を理解するために集中する能力、状況の変化に合わせて、今の注意を解き放ち、新しい対象に注意を向ける能力などがこれにあたります。

 注意障害を伴う時は、電話でなく、静かな部屋でゆっくりと丁寧に話を聞くべきでした。注意障害と思われる人に対しては、焦らず、目を見つめながらゆったりと構えて向き合うことが大切です。(木之下徹、「こだまクリニック」院長)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

いきいき快適生活の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事