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介護・シニア

基礎からわかる介護保険…制度見直し大詰め

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 2012年度からの介護保険制度見直しが大詰めを迎えている。地域で安心して暮らせる仕組みをどう築き、上昇する保険料をいかに抑制できるかが焦点で、政府は月内に改正案を公表する予定だ。「介護の社会化」をうたった同制度がスタートして10年。創設の狙いや仕組み、改正で予測される変更点などをまとめた。(社会保障部の小山孝、飯田祐子、野口博文が担当しました)

どんな仕組み?…40歳加入、5割税で賄う

 介護保険制度は2000年、介護を社会全体で支えようと始まった。医療や年金と同様、条件を満たす人が強制加入して保険料を払う社会保険制度の一つで、40歳以上の約7000万人が加入している。

 ただし、介護サービスを使えるのは原則65歳以上の高齢者。40~64歳の現役世代は、関節リウマチなど加齢が原因とされる病気になった場合に利用できる。

 運営は原則、市町村単位で行われる。介護サービスを使う場合、まず、市町村の窓口に申請する。調査員が心身状態をチェックし、専門家の合議を経て介護の必要度(要介護度)が決まる。要介護度は最も軽い要支援1から最重度の要介護5まで、7段階ある。

 訪問介護などの在宅サービスを受ける場合、一般的には専門家であるケアマネジャーが必要なサービスを組み合わせたケアプラン(介護計画)を作成、これに沿って介護を受ける。介護サービスの価格(介護報酬)は国が定めており、利用者は要介護度ごとに定められた限度額の範囲内なら1割の自己負担で利用できる。施設に入る場合はこのほか、食費や光熱費などがかかる。

 財源構成は、利用者負担を除き、公費が50%、保険料が50%。保険料の割合は高齢者が20%、現役世代が30%で、高齢者の保険料は市町村ごとに異なる。現役世代の保険料は医療保険と一緒に徴収される。

 制度が始まる前、高齢者介護は税財源による福祉制度で行われていたが、サービスの量が乏しく、家庭の介護負担の重さが問題になっていた。また、自宅で暮らせない高齢者が必要もないのに長期入院する「社会的入院」も多かった。

 介護保険は保険料収入で財源を増やし、住み慣れた自宅で暮らせるよう、民間参入を進めることでサービス量の拡大を図った。市町村が必要なサービスを決める制度から、利用者が事業者を選んで契約する制度に改めることで、質の向上も狙った。

現状と課題は?…保険料、月5200円「負担の限界だ」

 2000年に149万人だった利用者は、10年には403万人に増加。00年度に3・6兆円だった総費用も、10年度には7・9兆円と倍増した。利用が増えると保険料も上がるため、当初は全国平均で月2911円だった高齢者の保険料は、09年度には月4160円となった。

 厚生労働省の試算では、12年度からの保険料は月5200円程度になる見込み。介護保険は高齢者の7人に1人しか使っていないこともあり、「負担の限界だ」という声が出ている。

 社会の変化も著しい。高齢化に伴い、高齢者の単身世帯や高齢夫婦世帯が増えている。現在、推計208万人の認知症高齢者も、25年には323万人に増える見込みだ。

 制度の導入で救われた人は多いが、要介護高齢者の自立生活や介護者の負担解消の実現には不十分だという指摘がある。自宅で暮らせないことなどから、特別養護老人ホームの入所待ちをしている人は42万人を超えている。また、09年度の高齢者虐待件数は、約1万6000件に達した。

 介護職員の低賃金と人材不足が社会問題化し、厚労省は09年度に職員1人に月1万5000円を支給する交付金制度を導入した。制度は11年度に終了予定だが、継続する場合、年1900億円に上る財源をどう確保するのかも課題だ。

負担どうなる?…高所得者2割に上げ検討

 保険料上昇を抑えるため、厚労省は利用者負担の引き上げや基金の取り崩しなどを検討している。

 利用者負担増の検討項目として挙がったのは、高所得者や要介護度が軽い人の自己負担割合の引き上げ(現行1割から2割)、ケアプランの有料化、施設の相部屋への居住費負担の導入など。高所得者は年金収入320万円以上の人を想定している。

 軽度者の引き上げは、限られた財源の中、中重度者への給付を手厚くする狙いがあるが、反対論も強い。東京都内の要支援1の男性(78)は、腰が悪く、週2回、ヘルパーが風呂やトイレの掃除をしている。男性は「できない部分だけを頼っている。負担増なら回数を減らすしかない。リハビリをせずに重度化した方が得だ」と憤る。

 現在は無料のケアプラン作成を有料にすることに対しても、日本介護支援専門員協会が「サービス利用が抑制され、重度化につながる」と反発している。

 こうした動きを受け、制度改革の方向性を議論してきた厚労省の社会保障審議会介護保険部会は、11月末にまとめた意見書で、軽度者の負担増やケアプランの有料化に関しては両論併記とし、慎重な姿勢を示した。

 現役世代の保険料算定方法として、高所得層により多くの負担を求める案も検討されたが、現役世代の保険料を折半する企業側などの反発が強く、同じく両論併記となった。

 一方、民主党も今月上旬にまとめた提言で、ケアプランの有料化に反対するなど、利用者の負担増に難色を示している。党内には「国民に説明できない」「来春の統一地方選を戦えない」などの意見が強い。だが、負担増に代わる具体的な提言はない。利用者負担増などを最大限導入しても、保険料軽減効果は355円程度に過ぎず、依然、課題は残る。

改正でどう変わる?…24時間対応で訪問も

 改正の狙いは、介護が必要でも住み慣れた地域で暮らし続けられるようにすることだ。医療や介護、配食や見守りなどの生活支援が、30分以内に駆けつけられる地域で提供される体制を目指している。厚労省はこれを「地域包括ケアシステム」と呼んでいる。

 そのための新サービスとして、24時間対応の「定期巡回・随時対応訪問介護」を導入する方針だ。現在の訪問介護は多くの場合、30分~1時間滞在する一方で、1日に1回程度しか訪問していない。新サービスは1日に複数回、20分未満の訪問をするほか、利用者から連絡があれば、介護・看護職員を派遣する。在宅生活を続けられる人が増えるという期待が高い反面、認知症の介護には限界があるとの指摘もある。

 また、医療と介護を一体的に提供するため、訪問看護と訪問介護などを組み合わせた複合型事業所も認める方針。高齢者向けの住宅整備も強化する。生活支援サービスが付き、段差などをなくした賃貸住宅を「サービス付き高齢者住宅」(仮称)と位置付け、建設費の補助や利用者向けの情報提供を手厚くする。

今後の見通しは?…来年2月にも改正法案提出

 厚労省は民主党と調整して、年内に政府案をまとめ、来年2月にも通常国会に改正法案を提出する方針だ。

 政府の方針で、財政支出の増加には歯止めがかけられており、負担増に踏み込まざるを得ない事情がある。しかし、党内の反発に加え、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」の下では野党の理解を得ることも必要なことから、負担増を避け、小幅な改革にとどまりそうだという見方が強い。

 改正法成立後、市町村は12年3月までに保険料を決め、4月に新制度が始まる。

 今回の改正を乗り切っても、急速な高齢化が制度を揺るがす状況は続く。団塊世代が75歳以上になる25年には、現在7・9兆円の総費用が19兆~23兆円に膨らむ見通し。介護だけでなく医療や年金など社会保障財源の安定確保のため、消費税率の引き上げが急がれる。

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