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一病息災

闘病記

[俳優 中尾彬さん]肺炎(3)大切な日常に気づく

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 入院10日目に集中治療室を出たが、筋肉が痛み、5メートルも歩けなかった。体力の回復を待ち、手足を動かすリハビリを始めた。看板のテノールの声もかすれて出ない。病室内で大声で歌い、発声訓練を繰り返した。

 大阪から東京へ転院した後、1か月半ぶりに退院。復帰後、「感謝(アリガトウ)」という朗読CDを制作した。その中で「志乃が与えてくれた安心が私を元気にしてくれました」と妻への思いを読んだ。自身も体が弱いのに、入院先の大阪に泊まり込み、毎日看病してくれた妻。直には照れくさくて言えなかった。

 たばこは自然にやめ、夜は10時に寝て朝5時半に起きる。散歩が日課になり、道ばたの花や空の色に目がとまるようになった。

 「日常生活の大事さに気付いたんです。芝居も、これまでは表現することにこだわっていたのが、日常生活の目線で自然にやればいいと思うようになりました」

 肺炎の発症や重症化を予防する肺炎球菌ワクチンを知り、退院直後に夫婦で受けた。肺炎予防推進プロジェクトの大使となり、啓発イベントで体験を話す。

 「肺炎を軽く考えるなと、体験者だからこそ説得力を持って言える。我々の年齢層は、残された時間が貴重なんですから、真剣に予防を考えてほしいですね」(文・岩永直子、写真・藤原健)

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