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実質価値 目減りの一途

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 将来は、年金が減らされるそうだけど、どのくらい減るの。いつまで減らされるの?

年金の給付水準引き下げ

作図・デザイン課 吉田均

 少子高齢化が進んでも年金制度を安定的に維持するため、年金の水準は徐々に引き下げられる。これは2004年の制度改正で決まった。

 年金の水準は、その時点の現役世代の手取り賃金(賞与含む)と比べて何%になるかで示される。「所得代替率」といって、年金の実質価値を示す指標だ。

 平均的な賃金で40年働いた会社員と専業主婦という夫婦のモデルで見てみよう。受給開始時の年金月額は現在、2人分の基礎年金と夫の厚生年金で22・3万円。現役男子の平均賃金は35・8万円なので所得代替率は62・3%だ。これが2038年度には50・1%になると推計されている。

 給付水準の引き下げには、「マクロ経済スライド」という方式を用いる。新たに受給開始する人の年金額は本来、現役世代の賃金上昇率に応じて引き上げられるが、この方式では「調整率」を差し引いた分にとどめる。調整率は少子高齢化の進展度合いで決まり、厚生労働省は年0・8%程度と想定。この抑制は38年度まで続くと予測される。

 年金水準は少子高齢化や経済の状況に影響を受けるが、政府は将来もモデル世帯の所得代替率を50%以上にすると公約した。ただ、共働きや単身者の世帯は所得代替率がモデル世帯より低く、下限も設けられていない。男子単身世帯だと最終的に36・7%まで低下する見通しだ。

 誤解されやすいが、これらの所得代替率と、個人の賃金レベルに対する年金額の比率とは全く違う。個人の比率は、賃金が少ないほど高く、賃金が多いほど低くなる。

 受給開始後も、年金の実質価値は目減りしていく。受給者の年金額は物価の変動に応じて改定されるが、賃金上昇率が物価上昇率を上回ると見込まれるためだ。マクロ経済スライドによる抑制も行われ、1949年度生まれのモデル世帯では、受給開始時(65歳)の所得代替率60・1%が80歳には44・6%になる推計だ。

 マクロ経済スライドの適用は07年度の予定だったが、不況で賃金や物価が想定通りに伸びず、12年度になる見通し。将来世代に負担が先送りされた形で、制度の弱点が指摘されている。(林真奈美) 

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