医療部発
医療・健康・介護のコラム
脚のむくみ 片脚だけ極端に悪化したら注意
今回、医療ルネサンス「静脈の詰まり」(11月12日~19日掲載)で、脚などの静脈にできた血栓に伴う病気「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症+肺塞栓症)」を取り上げました。
実は、私の妹も昨年、左脚の深部静脈に血栓ができたのですが、なかなかきちんと診断されず、治療が遅れました。今回は、そうした身内の経験もあり、エコノミークラス症候群という呼び名だけ知っていても、その病状などは十分に知られていないのではないか、と思い取材に臨みました。
ちなみに、妹の場合、左脚ふくらはぎがむくみ、かかと付近に痛みが出たのが最初でした。入院や飛行機搭乗など血流停滞を招きそうな明確なきっかけは思い当たらないとのことです。
痛みが増し、少し脚に熱も感じたため、最初に近くの整形外科に行くと、「こむら返りではないか?様子を見ていましょう」と言われたそうです。
言われたとおり1か月ほど様子を見ていたら、症状は一進一退しつつも徐々に悪化。左ふくらはぎは、「右の1・5倍」に腫れ、今度は総合病院の内科へ。そこでは「たぶん血栓があると思います」と言われつつも、なんとなく中途半端で「とりあえずワーファリンを1日1ミリ」という処方をされたようです。
しかし全く改善しないので、改めて地元の大学病院を受診。総合診療部から血管外科に回り、やっと「左脚の太い静脈がほとんど詰まっている」との診断に至りました。最初に異変を感じてから3か月以上経過していました。即日入院し点滴治療も受けましたが、すでに血栓は固まっていたようで、大部分は溶けずに残ってしまいました。それまで大きな病気もありませんでしたが、検査の結果、プロテインS欠乏症という、先天的に血液を固まりにくくする抗体が少ない体質(=血栓ができやすい体質)ということもわかりました。(プロテインS欠乏症は日本人に1~2%程度だとか…)
というわけで、発症から1年以上経った現在も、血栓をできにくくする薬ワーファリンを毎日7~9ミリ飲んで、締め付けの強い弾性ストッキングをはき続けています。血栓でふさがれた静脈の働きを、周りの静脈が補うようになって、むくみは徐々に軽くなり、熱も痛みもなく日常生活に支障はないとのことですが、それでも、いまだに血栓が残る左脚だけ、むくみやすいそうです。
もっと早く正しく診断され、血栓が固まる前に適切な治療を受けられたら、完全に溶かせただろうに…、と思わずにはいられません。
というわけで、今回のシリーズでは、傷があるわけでもないのに、片脚だけ極端にむくみ出した場合は、静脈血栓によるうっ血の可能性もある、ということを一つお伝えしたいと思いました。どちらかというと左脚に出ることが多いようです。
とはいえ、長時間の立ち仕事などで脚(両方)がむくむことは珍しくなく、むくみがあるだけで病気を疑うことはないと思います。ただ、片脚だけ極端にひどくなった場合は、念のため、注意した方が良いのではないか、というお話です。
血栓の一部が肺に飛ぶと呼吸困難に陥り命にもかかわりますが、そうならず、主に脚の症状だけ悪化する場合もあるのですね。
連載1回目(こちら)で取材した患者さんも左脚が極端に腫れましたが、なかなか正しい診断に至らず、「医師でも専門外だと的はずれな事を言うことがある」と感じたそうです。この病気に詳しい三重大病院・循環器内科講師の山田典一さんは、担当する診療科について、循環器内科や血管外科などを挙げています。
以下広辞苑より
こむら【腓】脛(すね)の後方のふくれたところ。ふくらはぎ。こぶら。
―・がえり【腓返り】腓の筋肉がにわかに痙攣(けいれん)を起すこと。
高橋圭史 2005年から医療情報部。がん放射線治療、腰痛・ひざ痛、こころの病気などを担当。主な取得資格は、プロボクサーライセンス(過去)、剣道二段。
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古い記事を見ていて、ドキッとしました。2年ほど前から足が太くなっているのです。特に左足。膝下から足の甲まで、ちょうど赤子のようにふっくらとしています。
それまでは足首が細く、昔テニスで走り込んだ自慢の足でした。今は見る影もなくボッテリしています。
2年ほど前に、足にフィットする靴を買い、颯爽と歩き、平均12000歩毎日歩いていました。脛からふくらはぎにかけて湿疹が出来、皮膚科通いが続いています。皮膚科の医師から、足がむくんでいるので内科医に診てもらいなさいと言われました。
内科医は、特に心配ないので、ときどき足を心臓より高く上げ、血行をよくすることと言われました。足のポンプが老化し、血液が足の方に溜まっている所為だろうとのこと。
血栓が出来ると聞き、少し気になり始めました。さてどうしたものか。
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