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[科学は人類に何をなしうるか] 解説…子宮頸がんの原因解明、分子生物学の進歩が背景

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 ハラルト・ツアハウゼン名誉教授が、ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸(けい)がんの原因となることを突き止めたのは、DNAレベルで細胞を調べる分子生物学の進歩が背景にある。がんの発症の仕組みが解明され、有効なワクチン、治療薬が開発された。


発症の仕組み

 人間の体にある約60兆個の細胞は、数十回の分裂を経て寿命を迎える。毎日、その1%が死ぬが、中には死なずに分裂を繰り返すものがある。がん細胞だ。

 細胞が、がん化するのは、細胞のDNAにできた傷が修復されず、生命の設計図「遺伝子」の異常が蓄積するからだ。その代表として細胞増殖のアクセル役の「がん遺伝子」の暴走や、ブレーキ役の「がん抑制遺伝子」の不活化がある。

 健康な人でも1日に数千個のがんの芽が生まれ、本来、免疫細胞によって除去される。しかし、DNA損傷が頻発する生活習慣を続けていると、がん細胞が免疫をすり抜ける。1センチ大になるのに10~20年かかるのに、その後の成長は早く、2センチになるには、わずか1~2年だ。

 HPVが子宮頸がんを引き起こすのも、遺伝子異常が蓄積するからだ。人間のDNAに潜り込んだHPVによって、遺伝子異常の細胞が徐々に広がり、がん化するわけだ。肝炎ウイルスも同様の仕組みで肝臓がんを引き起こす。

 DNA損傷を引き起こすのは病原体だけではない。たばこの煙には、発がん物質が多数含まれ、肺がん、食道がんなどの危険性を高める。動物性脂肪の多い食事は、ホルモンのバランスを崩し、前立腺がんや乳がんに影響。塩分の過剰摂取も胃粘膜細胞を破壊し、胃がんを招くとされている。

◇     ◇     ◇

個人の症状ごとに治療

治療薬

 分子生物学の進展で、がんの3大療法の一つ、化学療法も発展した。その代表例が、がん細胞だけを集中攻撃する「分子標的薬」。副作用の少ない薬として注目される。

 分子標的薬は、がん細胞の特定の部分(分子)だけを狙い撃ちする。「低分子(小分子)薬」と「抗体医薬」に大別される。

 人工合成する低分子薬は、がん細胞内に入り込み、増殖の信号を出す物質をブロック。慢性骨髄性白血病の治療薬「グリベック」(一般名イマチニブ)が代表的で、有効率は90%以上だ。

 一方、抗体医薬は、がん細胞表面の、増殖にかかわる突起(受容体)をブロック。元々、生体が作り出す抗体(免疫物質)を基に作られた。例えば、転移性乳がんの患者の約3割には、がん細胞の表面に「HER2」と呼ばれる突起が多く見られる。このHER2のある細胞だけを攻撃するのが、抗体医薬の「ハーセプチン」(同トラスツズマブ)だ。有効率は20~40%。

 「分子標的薬の登場によって、化学療法は患者個人の症状などに見合った『個別化医療』が可能となった」と国立がん研究センター中央病院の田村研治・通院治療センター医長は語る。

 子宮頸がんワクチンは予防ワクチンで、HPVの新たな感染を防ぐが、既に感染しているHPVは排除できない。

 治療用ワクチンもある。合成したがん特有の破片(ペプチド)を投与し、がん細胞を直接攻撃する「キラーT細胞」の働きを活性化させる「がんペプチドワクチン療法」が注目されている。

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