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[科学は人類に何をなしうるか] 質疑応答… 研究は刺激的 / 「社会に還元」意識を

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 ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム「次世代のメッセージ」の会場となった東京・品川区の昭和大学。医療人を目指す同大の学生ら約700人が、ノーベル賞受賞者らの刺激的な経験や提言に熱心に耳を傾けた。質疑応答や会場の声をまとめた。

質疑応答

 会場 学生時代に興味を持ったこと、しておけば良かったと思うことは何か。

 野依 大学に入ったころは講義は面白くなく、勉強もあまりしなかったが、全国から集まる様々な背景の人と出会い、友人になることは楽しかった。ただ、語学はもっと勉強しておけば良かったと思う。出来るだけ広く、基盤的な教養を身に着けるのが良いだろう。

質問する参加者(9月23日、東京・品川区の昭和大学旗の台キャンパスで)

 会場 若い科学者には2、3年自由にさせることが大切と言っていたが、自身の経験はどうだったか。

 ツアハウゼン 私の場合、米国で分子生物学的な技術を身に着けていたので、自由な研究に役立った。その意味で、若い研究者にとって自由な時間は、自分を磨くのに不可欠だと思う。

 会場 研究者への道はいつごろ考えたのか。

 野依 私は工学部出身で、技術者になり、いい製品を作ろうと思っていた。でも先生に引き留められて大学に残り、基礎研究の道に進んだ。職業選択では受け身だったと思うが、産業界にも貢献したいとずっと思っていた。

 会場 研究は単調でないか。

 ツアハウゼン そんなことはない。刺激的で、いまだに面白い。予期しなかった現象を発見したり、新しい着想を得たりすることも多い。自分の研究分野以外の人類学や考古学、宇宙工学にも興味がある。

 会場 ノーベル賞を受賞して後悔や困ったことはあるか。

 野依 人生が変わった。研究者としての時間を失い、社会的な活動や義務を負わされるようになったのは少し残念。だが若い人のために働いていきたい。だから悔いはない。

 ツアハウゼン 受賞はうれしい驚きだった。受賞時に人生は変わるかと質問され、いいえと答えていたが、私の周りが劇的に変化し、昔ながらのペースに戻すことはできなかった。世間に注目され、多くの取材に応えなければならないのは大変だが、今は楽しんでいる。

 会場 今後もウイルスが原因のがんは発見されるか。

 ツアハウゼン 個人的には、たくさん発見され、がんの早期診断、予防、治療に役立てられると思う。1962年に研究を始めた時は、人間のがんを引き起こすウイルスはなかったが、今では多く発見されている。集中的に研究していく必要がある分野だと思う。

 会場 行政刷新会議の事業仕分けで「なぜ1番でないといけないか」という声があったが、研究費を減らされることについて意見を。

 野依 研究者としては十分な研究費を頂きたいと思う。同時に、研究者はどんな形であれ社会に還元、貢献すべきだという心構えを新たにすべきだと考える。

「深く考えるきっかけに」学生の声

 フォーラムを聴いた学生からは、大学での学問、研究を進める上で参考になったとの声が相次いだ。

 「科学は社会にどう貢献すべきか、深いところまで聞けて良かった」と、会場でも質問に立った昭和大医学部3年の解良仁美(けらひとみ)さん(20)は語る。患者と向き合いながら研究を続けたいという解良さんは、多くの研究者たちと協力して成果を上げたツアハウゼン氏の姿勢に感銘を受け「今後も視野を広げていきたい」と話す。

 同じく研究者を目指す同4年の佐藤潤さん(23)は、様々な分野の融合の必要性を強調した野依氏の話に触れ、「科学と技術の橋渡しが重要だということが強く心に残った。また、科学者も人柄や人付き合いも大事だと感じた」と感想を述べた。

 野依氏の不斉合成の技術が、大学の後輩によって工業化された話を聞き、「基礎研究を実用化できる研究にかかわりたい」と話すのは、同大薬学部4年の沢田真衣子さん(22)だ。「ツアハウゼン氏のドイツの教育の話は大いに参考になった。今後、何をすべきか考えていきたい」と話す。

 同大医学部3年の新井良子さん(21)は、「科学者に対しマニアックで冷たいイメージを持っていたが、そうではなかった」と強調する。医師になるための勉強は、人間を物体と見がちで、時に反発を感じていたというが、「疑問を持ち、それを解き明かすことで心が豊かになることが自然科学であると聞き、納得した。いい意味で予想が裏切られた」と満足げだ。

 千葉大理学部1年の土田晃子さん(18)は、「科学研究が果てしない知の旅という野依さんの言葉が印象に残った。今回話を聞けて、学んでいる化学で何をするか、深く考えるきっかけとなった」という。

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