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[科学は人類に何をなしうるか] パネルディスカッション(2) 地球を守る挑戦

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医薬の発展は

 田中 感染症の時代は終わったと言われたが、多剤耐性菌が騒がれている。次々に抗がん剤も出ているが、根治薬はほとんどない。新薬の開発の将来性は。

 ツアハウゼン 新たな治療法の開発はこれからも続いていく。しかし、画期的な薬が出るかというと、既存の化学合成だけでは出てこないかもしれない。広く使われる分子標的薬に加え、遺伝子治療が多くのがん種に応用されるだろう。一方、循環器系、神経系の疾患には、予防に焦点を当てることが重要だ。

 田中 患者個人に合わせた「テーラーメード医療」の将来性は。

 中江 遺伝子診断は、さらに広がるだろう。副作用のない、患者に見合った薬剤を選択的に投与する時代が来ることを期待し、研究を進めている。

「次世代へのメッセージ」をテーマに活発な議論が行われた(9月23日、昭和大旗の台キャンパスで)=若杉和希撮影

 田中 今後の科学教育はどうあるべきか。

 ツアハウゼン 科学は社会の基礎であり、学生を科学好きにするよう刺激することだ。科学教育のセンターを作り、若い研究者が海外で経験を積み、独自研究を行えるよう経済的にも支援することが大切だ。ドイツでは、若い研究者グループに自由な研究環境を提供し、4、5年かけて実を結ぶかどうかをみる。生徒を適切なポジションに配置するのも我々の大事な任務だ。

 野依 理科教育の水準を向上させるのは、経済のためではない。人生80年をどうやって生きるか、まっとうな人生観、自然観、社会観を持つために科学がある。科学は、論理、情緒、言語と並ぶ文化の大きな要素の一つだ。子供たちは生まれながらの科学者、芸術家だが、学校教育を経て、だんだん文学少女、理科少年でなくなる。根源は大学入試にあると思う。日本の大学入試で理科は必ずしも最重要科目ではないからだ。

 片桐 学長になる前に1年生の教育を3年間担当したが、2年時の専門教育についていけない学生がいる。専門教育に通じる理科の力をいかに持たせるか、何年も検討しているが、最適な答えは出ていない。

 田中 最後に、資源の枯渇、温暖化などの課題に、科学はどう取り組むべきか。

 ツアハウゼン 強く言いたいのは、基礎研究を大切にすること、そして応用へつなげていくことだ。教育制度を見直し、若い科学者が輝くような研究ができる環境づくりも必要だ。

 野依 物理学、化学、生物学と分けず、学際的に融合しないといけない。いかにつなげていくか、課題解決型の研究体制が必要。そのために政府は、社会的な課題に対応できる基礎研究や人材養成に対して、十分な公的資金を投入すべきだ。

 中江 地球規模の問題の解決なしに、95億人に達する人口増には耐えられない。企業も基礎研究を発展させ、応用展開することが求められる。世界中の研究者や経済人が、技術をベースに議論し、新しい世界を作っていくことが重要だ。

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