医療部発
医療・健康・介護のコラム
子どもの睡眠を守りたい
小学校時代からの睡眠不足が、日常生活に著しい支障をきたす状態に陥った小児慢性疲労症候群の男性について取り上げた連載4回目に対しては、読者から様々な反響がありました。都市部では中学受験のために小学生の頃から塾に通わせており、帰宅、就寝時刻も深夜に及ぶ子どもを持つ家庭も珍しくありません。決して人ごとではないと感じる人も多かったのだろうと思います。
兵庫県立子どもの睡眠と発達医療センター長の三池輝久さんによると、センターで治療を受けている子どもは、小学校4年~6年生で塾通いを始めてから睡眠が不足し続け、中学入学時に発症することが多いと言います。親の期待に応えようと頑張る、まじめな子がほとんどで、せっかく志望校に入学しても、学校に登校できないほどの睡眠障害に陥ってしまうのです。個人の体質や、生活背景の違いもあり、睡眠不足の子どもすべてが、同様の状態に至るわけではなく、たまりかねた両親から「なぜ、うちの子がこんなことに?」と問われることもあるようです。
患者の子どもたちの知能指数を調べると、治療前と比べて治療後は15~20%程度、スコアが上がるといいます。短期間で知能指数が大幅に変化することは考えにくいので、睡眠不足が重症化して脳機能が低下していたとみられるようです。
ただ、治療を受けても、発症前の状態に完治する例はそれほど多くないと言います。それだけに、三池さんは「予防のためには、子どもの睡眠をどのようにして守るか、家庭だけではなく、社会全体でも考え、取り組まなければならない」と強調しています。我が家にも、中学入試のため塾から帰宅後も毎日遅くまで机に向かう受験生がいます。「休日に昼まで目を覚まさない子どもは問題です、せめて1時間でも早く寝かせるように心がけて」と話す三池さんの言葉が、重く響きました。
野村昌玄(のむら・まさはる) 2010年から医療情報部。主な取材分野は、糖尿病、胃がんなど。趣味は、地酒漁りと豚カツ屋めぐり
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