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いきいき快適生活

介護・シニア

介護職員、支え合う

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 仕事のきつさや賃金の安さなどによる職員の離職率の高さが問題とされる介護業界。最近、職場の枠を超えて介護職員が交流することで、仕事を見つめ直していこうという動きが活発化している。(赤池泰斗)

職場異なる先輩が助言

「もんじゅ」の仕組みを説明する飯塚裕久さん。「現場から介護業界を盛り上げていきましょう」と訴えた(9月下旬、東京都内で)

 東京都内の20代の女性ホームヘルパーは、週1回訪問している独り暮らしの認知症のお年寄りが、一度にアジの干物を何枚も買ってくることに困惑していた。古いものを食べて体調を壊さないか心配だった。

 そんな中、介護職員らで組織する民間団体「もんじゅ」を知った。悩みを持つ職員が、別の職場の先輩職員2人と一緒に答えを見つけていくというもの。都内の喫茶店で開かれた「もんじゅ」のミーティングで悩みを打ち明けた。

 その時のアドバイスにしたがって、お年寄りの話をじっくり聞くことにしたところ、実はアジは息子の好物で、本人は特別好きではないことなどがわかった。「アジは息子のために買っているのではないか」と気づいた。買い物をやめさせるのではなく、新しいアジの干物があったらラップにくるんで買った日付を書き込むようにした。

 6月に発足したもんじゅの会員は現在約80人。代表の飯塚裕久さんは「今後、インターネットで、相談内容や解決策を閲覧できるようにする計画です。元気に働く介護職員を増やしたい」と話す。

 今年2月に発足した「Linkスペース」は介護現場の「対話力」を高めていこうという団体だ。「良いケアとは」「幸せとは」といったテーマで4、5人でテーブルを囲んで語り合う。これまでに、計3回開催し各回30人程度が参加。ホームページに話し合いの内容を公開している。

 川崎市内でデイサービスの管理者をしている代表の金山峰之さん(27)は、最初に勤務した大手の介護会社で、職員の対立を目の当たりにした。同期入社した同僚はすでに半分が辞めたという。「介護現場は忙しいこともあって対話の文化が育ってこなかった。考え方の違いを超え、より良いケアを追求していきたい」と話す。

 ネットのブログを軸にした活動もある。今春発足した「笑わせてなんぼの介護福祉士会」のブログには現在、全国から100人以上の会員が参加する。今月中旬にはネットを離れて神戸市で大会を開く。「グループホームにおける入居者参加型会議」「ミキサー食」「排せつケア」などの実践発表がある。

 同会会員で鹿児島国際大教授(社会福祉学)の古瀬徹さんは「現場から発信される取り組みを共有し専門性を確立していけば、介護職員に対する社会の見方も変わってくるのではないか」と話す。

人材確保 待ったなし

 介護職員の社会的地位が向上しない理由の一つに、仕事の専門性が確立されていないことが挙げられる。無資格者、ヘルパー2級、介護福祉士のいずれであっても同じ業務が可能なこともあり、だれでもできる仕事だと誤解されている面がある。

 「もんじゅ」代表の飯塚裕久さんは「介護の仕事は、お年寄りの成育歴や性格、家族構成など様々なことを勘案した総合的なサポートであり、介助の技術だけで語れるものではない。そこに専門性があるのだが、過渡期でもあり一般に理解されにくい」と話す。

低賃金、改善へ道半ば

 社会的な評価は賃金水準にも表れている。厚生労働省の調査では、2009年の福祉施設の介護職員の給与は月額21万円、ホームヘルパー同20万円で、全産業平均より約10万円低い。財団法人介護労働安定センターによると、09年9月までの1年間に辞めた人の割合を示す離職率は17%で、このうち8割を勤務3年未満が占める。2年連続で改善したものの全産業平均(16・4%)より高い状況が続いている。

15年後、倍の職員必要

 しかし、政府の推計では高齢化の進展で2025年には07年の倍にあたる212~255万人の介護職員が必要と試算される=グラフ=。条件設定によって人数に幅があるが、人材の確保と定着は急務だ。

 こうした中、厚労省は09年度の改定で介護報酬を3%引き上げるなど処遇改善を図った。しかし、事業所によって給与への反映にばらつきがあり、効果を疑問視する向きもある。

 首都圏のある男性介護職員は月5000円のアップにとどまった。事業所の運営母体が医療法人であるため、介護部門だけ大きく給与を上げることはできないと説明を受けたという。「ぎりぎりの人員で頑張っており、もっと職能が評価されると期待していただけに残念」と話す。

 淑徳大准教授(社会福祉学)の結城康博さんは「介護職員の給与水準をどの程度まで引き上げるか議論すべき時期に来ている。ベテラン職員が定着しづらい状況が続き、仕事の専門性が確立されないという悪循環を断たねばならない」と指摘する。

 その上で、「将来的には、一部の医療行為などが許される上級資格を段階的に設定するなどして、キャリアアップの仕組みを明確にすれば、利用者や一般社会に専門性が理解されやすくなる」と提案している。

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