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介護・シニア

[読み得 医療&介護]介護保険でも「払い戻し」

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 高齢者には、介護も医療も必要とする人が多く、費用負担もかさむ。介護保険でも医療保険と同様、自己負担が一定額を超えれば払い戻しが受けられるほか、介護と医療の自己負担の合計に上限を設けた制度もある。(林真奈美)

医療と合算の負担上限も

北海道に住む母親に届いた高額介護サービス費のお知らせで、請求漏れに気づいた。「せっかくの負担軽減制度も、知らなければ意味がない。周知徹底してほしい」

 「えっ、介護の自己負担も返してくれるの。今まで余分に払っていたとは」。東京都内の女性(53)は、北海道に住む母親を遠距離介護している。その母親あてに自治体から届いた書類に驚かされた。それによると、介護保険の負担が一定額を超えれば払い戻しを受けられるという。「高額介護サービス費」という制度で、母親も該当するようだ。

 母親が要介護状態になって20年近く。2000年の介護保険導入からはずっと介護病棟(療養病床)に入院してきた。しかし、昨年夏に医療病棟に移り、それを機に、医療費関係の通知とともに高額介護サービス費の説明書類が届いたのだ。

 介護病棟での自己負担は、食費などを除き毎月4万円程度だったが、母親の収入なら1万5000円が負担の上限。書類を受け取ってあわてて請求手続きをしたものの、時効で直近2年分しか戻らない。それ以前の約190万円はいわば“払い損”になった。

 自治体は年1回、介護サービス利用額を知らせてきたが、払い戻しに関して個別に手続きを促す通知はなかった。「遠距離で経済的な負担も重い。最初から制度を使っていたら、どれほど助かったか。だまされた思いです」と嘆く。

 「高額介護サービス費」は、1か月間の介護保険の自己負担が、所得に応じて決められた限度額を超えた場合、超えた分が戻ってくる制度。1世帯に複数のサービス利用者がいれば、その負担額を合算できる。

 限度額は住民税課税世帯なら3万7200円。ただし、施設入所中の食費や居住費、在宅で利用限度額を超えて使った分、福祉用具の購入費や住宅改修費の1割負担分などは限度額の計算対象にならない。

 利用者から申請することが原則だが、個別に通知を出す自治体もある。以前は上限を超える月ごとに申請する必要があったが、現在は1回申請しておけば、後は自動振り込みされる。

 医療保険にも同様の「高額療養費」制度が用意されている。とはいえ、高齢世帯では介護も医療も利用するケースが多く、それぞれで負担軽減を受けても、まだ高額の負担が残ることがある。そこで、1年間(8月~翌年7月)の医療と介護の自己負担分を合算し、所得や年齢に応じた限度額を超えれば、その超過分を払い戻す制度も設けられた。2008年度に始まった「高額医療・高額介護合算療養費制度」だ。

 75歳以上の一般的な所得の世帯なら限度額は年間56万円。医療、介護の双方に自己負担があることが要件で、世帯内で合算できる。例えば夫が入院し、妻が介護施設に入った場合、それぞれの自己負担の合計が限度額を上回れば、払い戻しが受けられる。ただ、夫婦などで加入先の医療保険が異なれば合算できない。

 手続きをするときは、まず介護保険の窓口で自己負担額証明書をもらい、それを添えて加入先の医療保険に申請する。国民健康保険や後期高齢者医療制度などの加入者は、一つの窓口ですむこともある。

 国保などは対象者に個別通知を出す場合が多い。これに対し、健康保険組合や協会けんぽでは、介護保険の情報を持たないため通知は不可能。加入者が自分で判断するしかない。

 こうした負担軽減制度を適切に利用するポイントとして、社会保険労務士の萬沢明さんは「医療や介護の領収証などは最低1年間は保存しておく。制度が複雑なので、老親を持つ人は、親の要介護度や収入区分などをきちんと把握しておくことです。まずは介護保険のケアマネジャーに相談してみては」と助言している。

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