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介護・シニア
[認知症と向き合う](6)「静かにさせる薬」の悪循環
今回は、認知症と薬のことを話しましょう。
私たちの診療所には、認知症で生活が大変になった方々から診察の依頼が寄せられます。ご自宅に伺ってみると、向精神薬など、いわゆる「静かにさせる薬」が必要以上に使われているケースが目立ちます。
大声を出すから薬の量を増やす。薬で意識がもうろうとなるから、さらに大声を出す。悪循環です。興奮を抑える薬が必要な時もあります。しかし、状態をよく診ずに薬の量や種類を増やすと害も大きいのです。
認知症のタイプによっては、適切な薬を選ぶのが難しい場合もあります。認知症の方をケアするご家族から、「歩き方がおぼつかなく、唐突に支離滅裂な言葉を発する」とSOSが寄せられました。「以前、『アリセプト』(一般名・ドネペジル塩酸塩)を飲んだら症状がひどくなった。これをやめて今は鎮静系薬剤を飲んでいるが、今の状態も良くない」というのです。
私たちは、元の薬を適量で使うことを提案しました。最初は渋っていたご家族も、予測される事態を1時間ほどかけて説明すると、「やってみます」と決心されました。症状は一時悪くなりましたが、その後、改善しました。
この方は、「アルツハイマー型認知症」に次いで多いとされる「レビー小体型認知症」で、しっかり目覚めていない状態が繰り返し表れていました。この症状に対する薬の効果がきちんと考えられていたかどうか。
薬には、保険適用という問題もあります。アリセプトは、アルツハイマー型認知症の薬としてよく知られていますが、レビー小体型認知症に用いても保険がききません。服用する人の負担軽減のためにも、必要な使われ方が早く認められることを願っています。(木之下徹、「こだまクリニック」院長)
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