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(4)寝る前の歯磨き重要
[パネルディスカッション] 糖尿病にも影響
パネリスト(敬称略) |
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柏木厚典(かしわぎ・あつのり) 滋賀医科大医学部付属病院長、医師 |
村上伸也(むらかみ・しんや) 大阪大歯学部付属病院副病院長、歯科医師 |
土井善晴(どい・よしはる) 料理研究家、「おいしいもの研究所」代表 |
コーディネーター : 前野一雄 読売新聞東京本社編集委員 |
――糖尿病はぜいたく病だと戦後の日本では言われていましたが、決してそうではないのですね。
柏木 食事の質が変わり、脂肪が増えて食物繊維が減りました。それで糖尿病が増えたのが日本の現状です。海外でも、インド、中国で増えていますが、必ずしも生活が豊かな人ばかりがなるのではなく、都市部に住む人の生活習慣が問題となるケースもあります。
糖尿病の治療の課題は、今の薬では血糖の管理が困難なことです。インスリンを使った治療では、患者全体の20%ぐらいしか目標値に達していないのです。できるだけ早く治療を始め、厳しい血糖管理を達成することがとても重要です。
――糖尿病と関連の深い歯周病。その原因となる口の中の歯周病菌はどれくらい多いのでしょうか。

村上 十分に磨いていない歯の周りには、驚くほど大量の細菌が生息しています。口の中と肛門(こうもん)の周囲で細菌の数を比べると、口の方が多いかもしれないというぐらいです。今この瞬間も口の中で増え続けています。ですから毎日、汚れの管理をする必要があります。
――歯周病菌がいても、歯周病になるかならないか、個人差はあるのでしょうか。
村上 人はそれぞれに何らかの病気になりやすい、あるいはなりにくいということがあります。ご家族が重度の歯周病で早いうちから入れ歯のお世話になったという方は、「自分は歯周病になりやすいかもしれない」と気をつけた方がよいかもしれません。
土井 歯を磨くのは朝起きた時がよい、というようなイメージもあるのですが、夜のほうがいいのでしょうか。
村上 寝ている時は歯周病菌が増えやすいので、寝る前の歯磨きが一番大切で効果的です。晩ご飯を食べた後よりも寝る直前にしっかり磨くことを、ぜひ今日から実践してください。
――たばこと糖尿病や歯周病との関係はいかがでしょう。
柏木 日本人は米国人に比べて圧倒的に喫煙率が高い。日本では糖尿病の人で足が壊死する原因になる動脈硬化などの病気を見つけると、ほとんどの人が喫煙しています。
――土井さんはかかりつけの歯科医院で歯周病のチェックをしているそうですが、糖尿病に関してはどうですか。
土井 歯周病と糖尿病が実はつながっているんだという認識は全然なかったですね。このことを知ったのは、今後の健康管理の上でとても有意義だったと思います。

――糖尿病の診断基準になるヘモグロビンA1cの値はご存じですか。
土井 全然知らないですね。この数値なら大丈夫という言葉だけが頭に残って、内容は全然覚えていません。意識すべきことだということを聞かされもしなかった、というのが事実ですね。
柏木 ヘモグロビンA1cは、過去1~2か月の平均の血糖状態を表します。糖尿病は慢性的な高血糖状態が特徴ですので、ヘモグロビンA1cの値に非常に反映されているだろうと考えられ、世界的に糖尿病の診断基準に用いられることになりました。日本でも今年から診断基準に取り入れられました。
――そうなると、糖尿病と診断される人が今までよりも増えるのでしょうか。
柏木 それはありません。糖尿病の患者さんをたくさん作ろうという意図の変更ではありませんので、誤解がないようによろしくお願いします。
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