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[読み得 医療&介護]「高額療養費制度」賢く活用

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 がんなどで、医療費の自己負担が高額になった場合、健康保険から一部の払い戻しが受けられる「高額療養費制度」。複雑な制度を使いこなすための注意点を紹介する。(針原陽子、本田麻由美)

入院時に「認定証」→限度額のみ支払い

抗がん剤治療を受ける乳がんの女性。経済的負担ものしかかる(都内で)

 「収入がないのに、医療費負担は一生続くんですよね……」。再発乳がんの治療を続ける東京都内の女性(48)は、ため息をつく。

 女性は2001年に乳がんが見つかった。手術と放射線治療を受けたが、08年秋に左肺に再発、昨年初めには座骨などに転移した。

 再発後の医療費負担は月約5~8万円。治療関係の昨年の支出は80万円を超えた。派遣社員として旅行の添乗員の仕事をしていたが、治療で休みがちに。昨年の収入は約50万円しかなく、年末には退職を迫られた。

 7月初め、がんの脳転移が見つかった。入院し、放射線治療の後、リハビリと抗がん剤治療を続けている。

 こうした場合の安全網となる高額療養費制度は、年齢と所得に応じて、1か月当たりの自己負担限度額が決まっており、それを超えて窓口で支払った医療費が高額療養費として払い戻される。例えば、一般的な所得の70歳未満の人の場合、自己負担限度額は約8万円、住民税非課税の人であれば3万5400円に下がる。

 さらに、直近1年のうち3回、制度の対象になった月があれば、4回目から自己負担限度額がさらに下がる措置もある。

 この女性は、6~8月に窓口で払った医療費が限度額を超えたため、高額療養費制度の対象になった。9月以降は、4回目ルールが適用されるため、限度額は住民税非課税の場合の2万4600円になる見通し。「収入がないので不安は残るけれど、負担が軽減されるのはありがたい」と話す。

 高額療養費制度が創設されたのは1973年。医療の高度化により、自己負担が高額になる患者が増えたことが背景にある。高額療養費の支給実績は、07年度で3765万件、1・6兆円に上り、利用者は、がんや神経性難病などの患者が多いとされる。最近は、新しい薬や治療法の開発がめざましく、生存率は大きく改善したものの、巨額の開発費を反映し、治療費の高騰が激しい。例えば、慢性骨髄性白血病の特効薬「グリベック」を服用した場合、薬代だけで自己負担が月約10万円になる。肺がんや大腸がんでも、自己負担が月50万~60万円という治療法も登場している。

 重要性を増す高額療養費制度。その仕組みを理解すれば、負担をさらに軽くすることもできる。

 高額療養費は、窓口で3割の自己負担分を支払うのが原則で、払い戻しには約3か月かかる。しかし、入院の場合、健康保険から「限度額適用認定証」の交付を受け、事前に提出すれば、窓口での支払額を自己負担限度額にすることができる(70歳以上の場合、認定証の提出は不要)。通院には認定証は使えないが、加入している健康保険によっては、無利子の貸し付けなどが利用できる。

 「治療に支障のない範囲で、医療機関や入院日を選ぶという手もあります」

 社会保険労務士で、がん患者の個別相談も手がける近藤明美さん(40)は言う。まず、入院はできるだけ月初めにする。月ごとの医療費が対象となるため、同じ月であれば払い戻しになる治療であっても、月をまたぐと限度額に届かないこともあるからだ。

 また、複数の診療科で受診する場合も注意が必要だ。別々の医療機関で治療を受けると、70歳未満では、窓口での自己負担額が1医療機関あたり2万1000円以上の分しか合算できないためだ。

 「大企業の健保組合などは組合が手続きしてくれるのに対し、協会けんぽは自分でやらなければならないなど、手続きの方法もまちまちです。加入している健康保険に相談しましょう」と、近藤さんは話している。

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