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シリーズ痛み 続・私の物語

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さかもと未明さんが語る (3) 恨みを捨てて生き直し

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歌は心の「安全弁」です

ライブで歌うさかもとさん(亀石利光さん撮影)

 病気になって、唯一の趣味だった歌を本格的に始めようと思いました。09年秋にはCD「人生(いのち)」でデビューしました。下手とかうまいじゃなくて、マイペースで続けていきたいと思っています。

 病気が進行し、だんだん手や足の関節を動かすのが難しくなっています。今は、指の関節はほとんど動かないし、足首も動きません。握力も落ちて、歯磨き粉をしぼるのも一苦労。かろうじてペンを握ることはできますが、こまかなタッチはアシスタントに任せて、何とか続けています。でも全くマンガを書けなくなったら・・・・考えたくはないですが、その時に絶望しないために歌っています。

 ただ、最初は歌は安全弁でしたが、今はちゃんとした歌手として成立したいと思っています。そうでないとお客さんに失礼だから。

 そして、歌は多くの出会いをもたらしてくれました。人と出会えるのが楽しい、と思うようになったのは、病気になってからですね。

 以前は、猜(さい)疑心のかたまりで、だまされないようにと人と距離を置くことばかり考えて生きていました。

 でも病気になって、ものすごく人を求めたんですね。甘えたい、甘えられたいって。人と深く関わりたい、だまされてもいいから命以外はとられてもいいからたくさんの人に出会いたい、って思っています。だからライブも仕事も命の限り続けたいの。

たくさんの優しさに感謝

 振り返れば、発症前の私はとにかく「恨み」をバネに生きてきました。2009年秋に自伝「神様は、いじわる」と出版しました。そこに詳しく書きましたが、幼いころから、家庭内で悩みが多かったです。「父や母のような大人にならない」という両親への恨みがエネルギーになり、仕事をしてきたところがあります。

 病気になって、その恨みが消えました。たくさんの優しさと出会い、生きていることに初めて感謝しました。「こんなに大切な命なのに、私、なんでこれまで恨みいっぱいに生きてきたんだろう」って思うようになったのです。だからそんな風にかわるきっかけをもらえた意味では、病気にも感謝しているんですよ。

 病気は徐々に進行しています。今はステロイドや痛み止めなどたくさんの薬を使っていますが、何とか入院せず、仕事をしています。でも、常に痛みはあります。特に、全身の関節や背中や首、ももの後ろが痛みます。

 とても痛い時もあれば、「あれ?なおっちゃうのでは」と思うぐらい痛みがない日もありますよ。

 これからも出来る限り仕事を続けていきたいと思っています。

 マンガでは、働く女性や心の闇というテーマで漫画を描きたいと思って、取材を進めています。歌ももっともっと頑張りたい。どちらも淋しさや苦しみの中にいる人にそっと届くような表現にしたい。心のお薬みたいな。愛いっぱいの。

 来春には初めての個展も決まっています。うまく手が動かなくなった今だからこそ、1枚、1枚丁寧に描きたい。だから、個展は願ってもない話です。

 仕事、将棋、歌やフランス語のレッスンと毎日忙しくとびまわっていますが、個展に向けて、久しぶりにひきこもって作品をかかないといけませんね。

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