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Q&A (1) 「右目だけ白内障、手術した方がいい?」

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医療ルネサンス 名古屋フォーラム


筑波大学教授(眼科学) 大鹿哲郎(おおしか・てつろう)さん
東大医学部卒。東大助教授などを経て2002年から現職。日本眼内レンズ屈折手術学会理事長など。49歳。

愛知県眼科医会会長 安間哲史(やすま・てつし)さん
名古屋大医学部卒、同大大学院修了。同大医学部講師などを経て1988年から安間眼科院長。2006年から現職。60歳。

コーディネーター 読売新聞東京本社医療情報部長・田中秀一


 田中 会場の皆様からも事前にたくさんの質問をいただいています。時間の許す限り、講師のお二人に答えていただきましょう。

 白内障について、59歳の男性です。1年ぐらい前から右目に軽い白内障の症状が出て、視力が急激に落ち、二重に見えるようになった。左目は度の進行はない。こういう場合、右目だけ白内障の手術をした方がいいのか、左目にも同様な白内障が出るまで、右は眼鏡で対応するしかないのでしょうかという質問です。

 大鹿 水晶体が硬くなって、近視が進行しているので、手術で治ります。ただ、反対の目とのバランスが大切です。健康な方の目の度数や水晶体の状態をみないとわかりません。右目だけやるか、少し待って両目とも手術するか、それはケースバイケースになると思います。

 田中 次は81歳の主婦です。72歳の時に白内障の手術をしました。最近、目がかすむので、診察してもらうと、ドライアイと言われました。手術の効果は10年しかもたないと聞きましたが、再び白内障が現れてきたのでしょうか、という質問です。

 大鹿 眼内レンズの耐久性に心配はありません。白内障の再発もありません。あるとしたら後発白内障でしょうが、そうでもなさそうです。ドライアイで涙の状態が悪いと、かすんで見えないこともあります。ドライアイの治療をされたらいいかと思います。

 田中 次は64歳の男性です。近く白内障の手術をしますが、手術後は、跳んだり跳ねたりの激しい運動は控えた方がいいのでしょうか。12年続けている太極拳を、術後も続けたいとの質問です。

 大鹿 手術直後の運動はやはりよくないですね。汗が目に入るのも好ましくありません。1か月以上経過して傷口が治っていれば、太極拳や普通の運動なら大丈夫だと思います。ただ、ボクシングとか空手のような格闘技やラグビーのような激しい運動はやめたほうがいいと言います。

 田中 71歳の男性から、最近、日光がまぶしくなり、白内障の初期と思うが、どう治療すべきでしょうかという質問です。

 大鹿 まぶしいこと以外に症状がなくて、困っていないのであれば、経過観察でいいでしょう。ただ、白内障の初期だというのが自己診断なら、やはり眼科医の診断を受けてください。

 田中 62歳のホームヘルパーの女性から、白内障についての質問です。ホームヘルパーとしてお世話をしている方の中に、白内障の方が多くいます。点眼薬はどの程度、進行を遅らせることができるのでしょうか。80歳代の方に手術を勧めてもいいでしょうか。

 大鹿 正直いってあまり目薬の効果は期待できません。気持ちの問題だと言ってお出しすることもあります。白内障の手術は年齢とは関係ありません。100歳の方でもお体が健康ならば手術を受けられます。

 田中 次に緑内障についての質問です。58歳の女性ですが、眼圧が正常な緑内障と、眼圧が高い緑内障の人では、治療方法や将来の目の状態に違いが出てきますか。

 安間 基調講演でも触れられていたように、開放隅角の緑内障に限っては、眼圧の高さと視神経の強弱とのバランスの問題です。ですから眼圧で治療は変わらないし、予後も本来は変わらない。しかし、高眼圧の緑内障は、眼圧が高いことで見つかりやすいのに、正常眼圧緑内障は視野が欠けてからでないと気付かない。このため、治療の開始時期がかなり違い、正常眼圧緑内障は中期以降の人がほとんどです。予後も不利になります。

 田中 62歳の男性です。現在の視野検査の方法では、正常眼圧の緑内障を判断する場合に、検査を受ける人の協力の度合いに左右されてしまう。もっと進んだ検査方法や手段はありますかと、かなり高度な質問です。

 安間 眼科医は視野を緑内障診断の基準にはしていません。やはり眼圧と視神経の所見が基準です。視神経は眼底写真を撮れば傷んでいるかどうかわかります。基調講演の中で、加齢黄斑変性の検査の一つとして出てきたOCT(光干渉断層計)は、網膜の厚みも調べられる。これによって、網膜の視神経が薄くなっているのがわかります。視野は、緑内障の診断後、その進行具合のチェックに使うと考えればいいでしょう。

 田中 80歳の男性から緑内障についてです。60代になって突然、緑内障といわれ、目薬を差しています。眼圧は10から13ミリ水銀柱で、高くないと言われてきましたが、現在、視野の欠損があります。両眼とも白内障の手術をしています。夕方になると、目にかすみがかかります。視力は眼鏡の使用時で、0・5から0・7、裸眼で0・1以下です。緑内障の点眼薬は、どんなものがいいでしょうか。遺伝のことを考えると、孫たちにはどんな手当をしておけばよろしいでしょうか、という質問です。

 安間 原因としては、いろんなことが考えられます。1つは明るさの問題です。夕方になると、暗くなるので、どうしても少し見にくくなります。眼圧は日内変動します。緑内障の人の方が、正常な人よりも変動幅がかなり大きいので、質問者の眼圧が夕方になって上がっているかもしれない。午前中は10ぐらいでも、夕方になると30ぐらいまで上がる人もいます。調べる必要はありますが、午前中に差すのが基本の交感神経β受容体遮断ではなくて、夕方に差す点眼薬、キサラタンなどのプロスタグランジン系統の薬がいいでしょう。また、ほとんどの目薬には防腐剤が入っているので、点眼は出来るだけ少ない方がいい。2種類の目薬がひとつになった合剤がいいのかもしれません。

 後発白内障の可能性もありますが、原因がわからないと、確かな対策は立てられません。

 遺伝のことですが、近視の人の子どもは近視が多いというのと同じ程度に、緑内障のなりやすさも遺伝します。心配だというなら、早めに検査することが一番いい方法です。

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