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対談 (1) 「切らずに済むのは、どんな場合?」

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医療ルネサンス相模原フォーラム


虎の門病院(東京都港区)消化器外科部長 沢田寿仁(さわだ・としひと)さん
神戸大医学部卒。大腸がんの腹腔鏡手術を得意とし、今年4月末現在、手術件数は2258例。虎の門病院を6月で退職、7月からは、宮崎県都城市の横山病院で、大腸がん腹腔鏡手術を担当する。虎の門病院では、毎週金曜日午前8~10時に診察予定。60歳。

ジャーナリスト 鳥越 俊太郎(とりごえ しゅんたろう)さん
京都大文学部卒。元毎日新聞記者。2005年に大腸がんを発症、その後、肺、肝臓への転移で手術を受ける。テレビのコメンテーターなどとして活躍中。70歳。

コーディネーター 読売新聞東京本社医療情報部長・田中秀一



 田中 大腸がんになったときの治療法ですが、大きく分けて、治療法には内視鏡で治療する方法と手術をする方法があるというお話でした。まず、どういう場合であれば、内視鏡で治療できるのでしょうか。

 沢田 単純に大きさで言えば2センチ以内ですね。丈が低くて広がりがあるものは、多くは粘膜下層まで行っていない症例なんです。それは何でわかるかというと、形態、ポリープの形ですね。形でわかるといっても、やっぱり病理検査で最終診断がつきますから、取れたから手術にならないというわけでは決してなく、ポイントはやはり粘膜下層に行っているかどうかです。

 そして、脈管侵襲という言葉があるんですが、がんの周囲のリンパ管とか、静脈にがんが入っていると、それは即手術です。それ自身は顕微鏡で見ないとわかりません。けれど、内視鏡で取れそうか、取れれば、それで終わりそうかというのは、単純に大きさだけではなくて、形です。丈が低くて広いものというのは、まずは内視鏡で取れます。ただ、それが手術につながらないとは必ずしも言えないということです。

 田中 逆に手術が必要なのはどういう場合になるんでしょうか。

 沢田 もちろん、進行がんは手術しかないんです。そして、がんであって、早期がんの中で手術になる、ならないというのは、粘膜にとどまっていて、きちんと内視鏡で取れれば、それは手術する必要はありません。それ自身は100%治ります。

 そして、粘膜下層まで行っていれば、じゃあ手術かというと、そうではなくて、今は顕微鏡で見て、粘膜の一番下からミクロン単位で、1000ミクロン以上行っているものは手術ということになりますが、多くはさっき申し上げた脈管侵襲があるかどうかによります。

 そして、脈管侵襲があると、5%から15%ぐらい大腸の壁の外のリンパ節に転移がある可能性があるんです。5%から15%ということは、医者サイドから見ると100%黒、つまり、疑わしきは罰するという考えです。

 田中 次に、手術の方法ですが、今までは非常に大きくおなかを切って手術する、開腹手術ですね。それが今は腹腔(ふくくう)鏡といって、大変小さな傷でできるということでした。ただ、それは病院によって全く考え方が違って、腹腔鏡を先生のようにたくさんやっている病院もあれば、あまりやっていない病院もあるということです。大腸がんのほとんどは腹腔鏡で手術できると考えていいのですか。

 沢田 私どもの施設だと、基調講演で申し上げたとおり、腹腔鏡下手術、開腹手術という区別は頭になくて、まず、腹腔鏡から入っていって、だめなものは開腹に切りかえるという考え方です。この二つは手技の違いがあるだけで、ほとんどは腹腔鏡下手術でできると考えています。

 全国平均では早期がんしか腹腔鏡下手術の適用にしていないところがほとんどですが、早期がんで見つかる割合が25%ですから、その医療機関で年間50例手術があるとすると、十数例しかないんですね。十数例しかないということは、月1例。それだと手術はうまくならないんです。うまくなるために数を増やしているわけではないんですけれども、やっていない施設は経験を積んでいけないですね。

 田中 鳥越さんは、直腸がんの手術は腹腔鏡で受けられたということでした。手術後、痛みとか、何か不都合なことがあったのでしょうか。

 鳥越 傷口の痛みは全くありません。傷跡は1センチに満たないぐらいで、そのうち蚊が食ったぐらいの跡になってきますから。それから今、痛みを和らげる麻酔の技術というのはものすごく進んでいるわけです。もちろん手術中は全身麻酔で全く痛みも何もないわけですが、手術の直前に、硬膜外麻酔といいまして、背中の脊髄(せきずい)の硬膜の外に軽い麻酔剤を入れるんですね。これは術後もそのままにしておくんです。

 そういうこともあって、術後の痛みというのは全くなかったですね。やっぱり術後で一番嫌なのは、体からいろいろ出ているチューブですね。最初は肛門(こうもん)からも出ていましたし、尿道、おちんちんからも出ていました。それが1本ずつ取れていくのが楽しみでした。一番不快なのは導尿ですね。これが煩わしくてね。男の尿道は長いんです。15センチぐらいある。女性は短い。そこへ入っているわけです。チューブがちょっと尿道のところへさわって、不快感がずっとありました。

 2度目の手術のときに、手術後、割と間もなく看護師さんに「これを早く取りたいんだよね」と言ったら、「いいですよ、取りましょうか」と言うので、「ああ取って、取って」と言って、ぱっと取ってもらったんです。そしたら、硬膜外麻酔が入っているものですから、神経が麻痺(まひ)しているわけで、膀胱(ぼうこう)の排尿の神経も麻痺しているんですね。尿が出ないんです。それで、夜の7時になっても出ない。8時になっても出ない。9時になっても出なくなって、先生が再導尿しますと。再導尿?って思いましたけどね。

 最初の導尿のときは全身麻酔で何にもわからないときに入れられているので、痛みも何も感じていないんですが、再導尿というのは麻酔なしに、普通のときにあそこに管を突っ込まれるんです。拷問ですよ。覚悟を決めてやってもらいましたけど、痛かったです。これが一番つらかったですね。それ以外は、先生からしてもらった手術そのものについては、術後の痛みとか、術後の不具合とかいうのは全くなかったです。それぐらいの今の腹腔鏡の手術というのは進んでいます。

 沢田 誤解がないようにお話ししておかないといけないんですけど、大腸がんの手術は腹腔鏡下手術がないとできないわけでは決してないのです。

 腹腔鏡下手術で何が加わったかというと、昔の手術だと、がんが治ればいいということが一番でした。人間生きてないといけないですから。腹腔鏡下手術によって、患者さんが手術後に楽になるかどうか、それを考える時代が来たということなんですね。

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