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基調講演 (2) 「負担小さい腹腔鏡手術」

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医療ルネサンス相模原フォーラム

 続いて、外科的治療についてお話しします。外科的治療には、従来の開腹手術と腹腔(ふくくう)鏡下手術があります。開腹手術と腹腔鏡下手術は相対する別個のものととらえている方が多いのですが、私たちの施設(虎の門病院)のように多くの腹腔鏡下手術をした立場から見ると、これは別個の手術では決してなくて、単に用いる手術手技の違いだと考えています。


開腹手術

 開腹して、がんの病変部を切除し、腸をつないでおなかを閉じます。大腸というのは広がりのある臓器ですから、大きくおなかをあけないと手術できません。傷も大きくなります。


腹腔鏡下手術

 最初に、おへそに細い管を刺して、おなかに炭酸ガスを入れます。おなかをカエルみたいに膨らませることによって、手術操作をする部位をつくっているわけです。次に、ポートと呼ばれる器具を4か所から5か所に差し、そこから、おなかの中を観察するカメラや、手術器具を挿入します。

 私たちは大きなモニターを見ながら手術操作をしております。腹腔鏡下手術の特徴は、鮮明な同じ映像を、3、4人の医師が見られることです。複数の目で見ることができるのです。そして、幾らでも臓器に近づくことができますから、がんをより近くからも、拡大して見ることもできます。

 直腸がんの手術をする場合には、骨盤の奥深くの手術をするのですが、例えば私が手術をしているとしますと、通常の開腹手術では私しか見えない場面があるんです。ところが、腹腔鏡下手術では、麻酔医を含め、立ち会っている医師ら全員が同じ映像を見ることができます。

 腹腔鏡下手術の効果は、傷を小さくできることです。ということは、手術後の痛みが少なくなります。痛みが少ないということは、早期離床、ベッドから早く離れることができて、早く歩行、運動ができる。そうすると、一般的には回復が早く、合併症も少なくなります。そして早期退院。早期退院できるということは、早期に社会復帰ができて、トータルでは医療費の削減にもつながります。

 一方、腹腔鏡下手術の問題点は、手術に慣れが必要であること。そして、高価な器具が必要であること。また、執刀医の視野が限定されるという問題があります。

 次に、大腸がんの手術後の障害ですが、排便機能の問題があります。また、直腸がんでは排尿の障害、性機能の障害があります。これらを減らせるよう機能温存手術が工夫されています。肛門(こうもん)括約筋温存術というのは、わかりやすく言えば、人工肛門にならない手術。次に、自律神経温存術というのは、主には性機能、次に排尿機能障害をなるべく少なくする手術と考えていただいたらわかりやすいと思います。

 次に、大腸がんの化学療法についてです。大腸がんの化学療法には、がんが取り切れたが、再発予防を期待して行う方法と、がんが取り切れない場合に行う方法の2種類があります。前者は再発をなるべく防ぐ、そして再発するまでの期間を長くすることが目的です。後者の大腸がん化学療法はがんを治す治療では決してありません。生存期間の延長、生活の質の向上のために行います。近年、大腸がんの化学療法は随分よくなって生存率も高まっているのですが、決して根治できるものではないことはご理解ください。

 化学療法の副作用には、口内炎、食欲不振、吐き気・嘔吐(おうと)、そして下痢、脱毛、皮膚炎、貧血や血小板減少等の血液障害があります。効果と副作用は裏腹の関係にありますから、命がかかっているものとして、副作用にはある程度目をつぶっていただかなくてはいけないのが現実です。

 大腸がんは着実に増えております。最終診断には大腸の内視鏡検査は必要不可欠ですから、嫌がらずに、必要な場合には受けてください。大腸がんは全体としては予後のよい病気ですから、それほど怖がる必要はありません。そして、近年では内視鏡的な切除が発達し、手術を受けなくても、それで治る症例がどんどん増えてきています。手術になっても、腹腔鏡下手術の普及で手術後の負担が軽減されています。

 病気を嫌がらずに仲よくと言っても相手は確かに嫌なやつですけれども、うまくつき合っていただければと思います。


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