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いきいき快適生活

介護・シニア

[山里通信](1)限界集落に生きる

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村おこし 助っ人青年

春が来て来冬用の薪割りをする村田さん(左)と、桝本さん(奥)と水原さん=安斎晃撮影

 衰退が進むという農山村の本当の姿が知りたくて、秋田に向かった。目指したのは明治以来の村を守り続ける上小阿仁(かみこあに)。1か月の滞在で、強い(きずな)の中に生きる村人の姿が見えた。

 村役場から山道を走って20キロ、そこが八木沢集落だった。携帯電話の電波は届かない。その代わりにキツツキの声が聞こえる。

 ここに住む8世帯20人のうち15人が65歳以上だから高齢化率は75%になる。暮らしは不便だが、不思議と暗さはない。ゆっくりと時が流れ、みんなが生き生きと暮らしている。

 「美容院さ、行きて」。一人暮らしの村田チサさん(88)が、集落の人の車に乗って村の美容院へ出かけて行った。長い冬が終わったからだ。やがてパーマをかけ薄化粧もしてもらって帰ってきた。いくつになっても女らしさを忘れないかわいいおばあちゃん。美容院の方でもチサさんが大好きで、いつも1000円引きにしてくれる。

 棚田では苗代づくりをする人がみえる。集落の自治会長、佐藤良蔵さん(86)が雪囲いを外している。「やあ、最高の季節になったな」と良蔵さん。しばらくぶりに自家製のどぶろくを造り始めたという。

 「限界集落」。老人だけになって集落が維持できなくなる所をこう呼ぶ。村の南に孤立する八木沢は典型的な「限界集落」とされる。マタギが開いて200年。戦後は国有林作業の拠点として一時は350人も住んでいたが、今は商店もない。

 だが、一度行ってみればわかる。ここに暮らす人々に「限界集落」のレッテルをはって片づけることができるだろうか。子供を都会に送った後も残って暮らしてきた強さがある。互いに支え合うやさしさがある。

 「びっくりしました。90歳近いおばあちゃんが一人で屋根に上って雪下ろしもするし、(おの)を握って(まき)割りもやる。人間ってすごい」

 「いつも誰かが差し入れてくれる。漬物だったりウサギ肉の煮込みだったり」

 こう話すのは、昨年11月からここに住みはじめた水原聡一郎さん(23)と桝本杉人さん(36)だ。2人は村がこの集落のために全国公募した「地域おこし協力隊」に採用されてやって来た。水原さんは大学卒業後の就職がうまくいかず悩んだ末に東京から、桝本さんは社会人入学した大学を休んで京都から。共同で自炊生活をして半年、集落の人たちにすっかり魅せられた。

 その2人が今、耕作放棄地の再生に乗り出した。さて、うまくいくだろうか。(編集委員 青山彰久)

秋田県上小阿仁村
 県のほぼ中央にあり、人口は約2900人。面積(257平方キロ)の93%が山林や原野。高齢化率は秋田で最も高い44%。
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