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いきいき快適生活

介護・シニア

[認知症と向き合う](1)イコール絶望ではない

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 みなさん、こんにちは。この連載では『認知症と向き合う』というテーマで、認知症の方々のことを考えていきたいと思います。

 私は、訪問診療といって、日を決めて定期的にそれぞれのお宅にお邪魔して診療をしています。訪問先は、ご本人が認知症になって生活が大変になってしまった、あるいは、ご本人が外来にいってくれない、というご家庭がほとんどです。認知症という病を通じて、様々な気持ちの行き来や、こちらの胸が詰まるようなご家族の大変な心の痛み、そしてご本人の心の苦しみをじかに感じることもあります。

 今、認知症の方は200万人を優に超えるとも言われています。そしてどんどん増えると言うのです。現在、40歳の方が65歳になる2035年には、この数がおよそ倍になるというデータもあります。

 そこで質問です。『ご自身が世を去る前に、認知症になる』と思っている方、どれだけおられるでしょうか? ノーと答えるのは難しいのではないでしょうか。であれば、認知症の問題は、実は近い将来のみなさんの問題であると置き換えてもよいと思います。

 続いて聞きます。認知症イコール絶望でしょうか? 時折、介護殺人、介護心中、介護うつなどの文字を見かけます。認知症をテーマに診療を続けていると、人が人でなくなるような、悲しくて苦しい場面も散見します。私の今の支えは、愛情にあふれた周囲の人々のかかわりと、何より幸せそうな認知症のご本人がおられるということです。

 認知症イコール絶望とはしたくない。認知症になっても人生の主役であり続けたいものです。認知症の医療・介護は、そういう意識を前提に積み上げられるものなのでは、と思うのです。(木之下(きのした)(とおる)、「こだまクリニック」院長)

 1985年、東大医学部保健学科卒。87年、同大大学院博士課程進学。96年、山梨医科大卒。日本老年精神医学会評議員。

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