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(1)食後の高血糖に注意

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医療ルネサンス さいたまフォーラム

 患者と病気の可能性がある予備軍をあわせると全国で約2200万人いると推定される糖尿病。国民病ともいえる糖尿病の予防や治療を考える「医療ルネサンスさいたまフォーラム」(読売新聞社主催、埼玉県、埼玉県医師会、さいたま市後援)が2009年7月3日、さいたま市浦和区の埼玉会館で開かれた。医師ら3人の講師は、患者急増の背景や合併症の怖さなどを説明、食事・運動療法の大切さを訴えた。約400人の参加者には、熱心に耳を傾けながらメモをとる姿が目立った。

[基調講演]東京慈恵会医科大学教授・田嶼尚子(たじま・なおこ)さん
慈恵医大卒。同大内科助手、助教授を経て1997年から教授。専門は糖尿病学。日本糖尿病学会常務理事。64歳。

 糖尿病は戦後、日本が豊かになるのと並行して増えてきました。糖尿病の怖さは、この病気が原因で人工透析を始める人が年間に約1万6000人、壊疽(えそ)で下肢切断に至る人が約3000人に上ることからもよく分かります。

 糖尿病で血糖が高くなるのは、膵臓(すいぞう)から出ている血糖を下げるインスリンがうまく働かない、あるいは出なくなるからです。血中のブドウ糖が増えると、活性酸素が発生して、血管の壁を攻撃します。高血糖が続くと、全身の血管が傷つき、そこにコレステロールのかすがたまり、動脈硬化を引き起こすのです。

 細い血管に起こるのは網膜症、腎症、神経障害で3大合併症といわれます。太い血管に起こる合併症は動脈硬化が原因で、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などです。これらを防ぐには、予備軍の段階から、食後血糖値の上昇に注意しなくてはなりません。

 健診で測るのは主に空腹時血糖値ですが、これが正常域にあっても安心できません。空腹時血糖は正常なのに、食後の血糖値が高い場合があるからです。気づきにくいので、「隠れ糖尿病」と呼ばれています。

 食後高血糖は、糖尿病の最初のサインです。この段階から血管は傷つき、糖尿病の進行が始まります。

 食後高血糖を見つけるには、ブドウ糖液を飲んでから、血糖値を測る方法がありますが、過去1~2か月間の血糖平均値を示すHb(ヘモグロビン)A1cを血液検査で測定する方法もあります。HbA1cを糖尿病の診断に使おうという考え方が生まれています。日本では既に、国の糖尿病実態調査で糖尿病とその予備軍のふるい分けのためにHbA1cが用いられています。

 食後高血糖が下がると、HbA1cも下がり、様々な合併症が起こるのを防ぐことができます。

 糖尿病の予防、治療は何よりも、生活習慣の改善です。予備軍の方に食事、運動を心がける指導をしたところ、発症の危険度が67%低下したという研究結果もあります。食事と運動は根幹となる治療法で、発症後も有効です。

 運動は連続していなくとも1日に30分ぐらい体を動かすと、効果があることが分かってきています。体重減少や筋肉がつくことで、インスリンの働きがよくなり、心肺機能も高まります。

 食事は、バランスよく召し上がることです。日本伝統の食材を使って、気長に食事療法を続けることが大切だと思います。(この回は、2009年7月30日掲載の読売新聞から転載しました)

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