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いきいき快適生活

介護・シニア

[禅寺料理日記](1)寒の座禅 粥を頂く

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 精進料理を学ぼうと思い立ち、京都の禅寺の門をたたいた。禅宗では「典座(てんぞ)」と呼び、料理番は重要な修行とのこと。寺での生活とともに報告する。

人生後半 59歳の京都修行

障子を開け放し底冷えがする夜の禅堂で、座禅を組む住職ら。手前が筆者=安斎晃撮影

 砂利道を進むと、瓦屋根の山門。門柱には「不許拝観」「坐禅(ざぜん) 朝夕6時~7時」と墨書されていた。ここは京都市右京区にある臨済宗妙心寺の塔頭(たっちゅう)(末寺)のひとつ。そこに今回、典座修行をお願いした。

 午前3時半。起床を知らせる宗豊(そうほう)住職(45)の声と振鈴の音に、禅堂の中で跳び起きた。まだ漆黒の闇だ。3月になってもお寺の中はとにかく寒い。朝の読経と禅堂での座禅が終わっても、身体の震えはとまらない。

 朝食「粥座(しゅくざ)」は白い(かゆ)だ。1人0・5合の白米を人数分研いでなべに入れ、たっぷり水を加える。これを一晩置き、朝の座禅後にガスコンロにかけた。その間に漬物、梅干し、昆布のつくだ煮をお(ぜん)に並べる。朝食はこれだけだ。

 「沸騰したら弱火にして、20分が目安」と和尚さん。米をお玉でかき混ぜようとしたら、「焦げやすいので、そのまま静かに見守って」と注意された。火を切るとお膳に運び、食べる直前に熱湯を注いでスープのようにする。これを(わん)に取って、音を立てずにさらさらといただくのが禅寺流だ。

朝食は白粥と漬物類

 大学紛争のさなかの学生時代、この寺に1年余置いてもらったことがある。その縁で今回、無理を言って取材をお願いしたのだが、打ち合わせに訪れたのは雪が舞う2月。寺には火の気がなかった。畳や板敷きを歩くだけで体温を吸い取られる。

 「作務着(さむぎ)の下にフリースを着るなど、寒さ対策をしっかり立てて来てください」

 和尚さんと話す室内も氷点下だ。気の毒がって石油ストーブをつけてくれるが、メモを取る手先が冷え切り、字が書けなくなってきた。今年59歳というアラカン(還暦前後)世代がこの厳しさに耐えられるか、不安もよぎる。

 精進料理は、肉や魚介類を使わない実に質素なものだ。しかし不規則な記者生活を重ねる中で、四季折々の素材を生かして禅僧の健康を支えてきたこの食生活が、養生にも良いことを痛感していた。人生の後半に向けて、もう一度、原点の寺の生活に戻ってみようと意を決した。

 初めてこしらえた熱々の朝粥。米とは、こんなに甘いものだったのか――素材自身が持つ味わいが、実にありがたく感じられる。早朝座禅の寒さと緊張は、(のど)を通る粥とともにほぐれていった。(編集委員 小出重幸)

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