文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

お知らせ・イベント

お知らせ・イベント

(4)認知症患者との接し方

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ちば健康塾


1,自尊心を傷つけてはいけない

 間違った行動・意味不明な行動をしても、例えばおもらししても、だめだよと言うのではなく、「おもらししちゃったら隠すのではなく教えてね」と言ってあげられれば、隠したりすることがなくなります。

2,後ろから声をかけない

 「何してんの」と後ろから声をかけるとびっくりして転倒したりします。憂うつな気持ちや不安神経症があると、恐怖を与えてしまうことがあります。ですから声をかけたり後ろから手でポンとたたいたりは絶対やめて、前に回ってください。

3,ゆったりと穏やかに笑顔で接する

 言葉かけや対応のスピードを落とし、本人のペースにあわせてあげてください。家族の都合で速く話すのではなくゆっくり話して、理解してもらわなければなりません。穏やかに話す環境を作ってあげてください。一度にたくさんの話をすると混乱します。ひとつひとつゆっくり伝えて待つということですね。そして物事の意味やことばが理解できないことがあります。

 最近の携帯電話、GPSという言葉とか、意味がわからないから聞きたいんだけど聞けない。そういったこともあります。ボディーランゲージ、道具や写真、物を使って伝えることを心がけてください。「座りましょう」は椅子を示して、一緒に座る動作をすることも大事なんですね。

4,感情豊かに暮らす

 心がうごく働きかけをすることです。「あれが奇麗だよ、見にいかない?」とかね。それから何か行事があれば、「今日はにぎやかだけど、遠くのほうだったらあんまりうるさくないから見にいこうか」と誘うことで、季節を感じさせたり華やかな気分になってもらったり、そういったサービスが必要です。認知症は治らないと言いますが、こういった心の働きかけにより、よくなったような感じがすることがたくさんあります。それが意欲低下や、無気力を解消するといったことにつながるんですね。明らかに良くなる疾患ではないんですが、良くなったようになるということは非常に重要です。

5,暮らしの場面の「わかる」「できる」を増やす

 暮らしの場面の「わかる」「できる」を増やすと、ストレスが少なくなります。認知症になると、わからないことだらけになります。トイレのふたをあけるのもわからなくなって、そのまましてしまったりします。下手するとトイレに足をつっこんじゃったりするわけですね。これはやってはいけないんだということがわからなくなっているわけですから、責めたりするのではなく、わかりやすく「トイレ」と書いてあげます。日にちが数えられなくなることが多いので大きなカレンダーを用意するということもあります。

6,徘徊(はいかい)や妄想への対処法

 認知症の方には、その人の世界があるわけです。徘徊や妄想や、どこかへの帰宅を訴えることがあります。理解は非常に困難なものですね。どうすればいいかというとですね、例えば「実家に帰る」と言い出したら、荷物を持ってあげるといいんですね。「じゃあ一緒に帰ろう、じゃあおかあさんどっちに帰る?」と言って町内をぐるぐるっとまわって帰ってくるケースもあります。

 それから「私の実家ってどこだっけ?」と言い出したら、「随分遠いところだから今日はここに泊まって休もうよ」と言って自分のお家へ誘導すればいいわけです。そうすると、こういう田舎に帰りたかったけど、遠いんだねえとわかるわけです。そういうような理解の仕方をさせてください。これを無理に拉致して家に帰って、「あのおじいちゃんと過ごした田舎じゃないと生きていけないよ」と言われれば、もう何も言えなくなってしまいます。ですから事態を流していただきたいと思います。

 物とられ妄想・徘徊・帰宅願望・暴力といったものはうつ病が原因である可能性がありますので、やはりお医者さんに相談するのが一番だと思います。

 物とられ妄想はよくありますね。家族が犯人になってしまうことがあります。犯人にされてしまったら、犯人役をつとめなければなりません。ですがやはり協力者を得て犯人役を脱してほしいんですね。潔白を証明するのを自分でやるのではなくて、それを協力者にゆだねてほしいんです。ケアマネジャーでもいいです。訪問看護師さんでもいいです。お医者さんでもいいです。協力者を得て、みんながみんな同じことを言うように協力してもらってください。介護する側の発想というのが大事になってきます。

 帰宅願望も、否定せず、受け止めることからはじめてください。うまくアドリブで自宅へ誘導してください。

 暴力に対してですが、これも難しいんですね。暴力に対しては、ゆっくり穏やかな口調で対応してください。このように介護にはいろいろなノウハウがあります。私が示したのはほんの氷山の一角にすぎません。介護施設の方々やサービス、予防教室などでどんどん勉強を重ねていただいて、認知症で苦しむ人を一人でも少なくするよう努力してまいりたいと思います。みなさん、ご協力お願い致します。

【質疑応答】
 

 参加者からの質問:15年ほど前に不眠症になりデパスという薬を処方され、それから物忘れがひどくなった気がするんですけれども、不安でいっぱいなのですが、薬の副作用なのでしょうか、それとも認知症の始まりなのでしょうか。

 保田:デパスというお薬は、安定剤と申しまして、気分を安定させる作用と少し筋肉が緩むという症状が出るんですね。行動が少し緩やかになります。ちょっとのろのろとした感じになるんですね。それで対応に遅れが出て、物忘れが出やすくなります。ただ、デパスによる物忘れは一過性でして、その時だけなんです。お薬を飲んでその後ですね。5~6時間たつと体から薬は出てしまいますので、時間が経過しても物忘れがあるのはデパスのせいではありません。もしかしたら認知症が進んでいるかもしれませんので、薬とは違うタイミングで頻繁に出てるなあと感じるのであれば気をつけてください。あまり緊急性を感じないようであれば気にしないようにしてくださいね。

 主催側からの質問:読売新聞でも、一般の企業でもそうだと思うんですけれども、メンタルヘルスが大変なことになっているようでして、うつにかかる社員も多いようですね。2年ぐらい前に読売新聞の記者が「私のうつノート」という自分のうつ体験を記事にして本にして随分評判が良かったんですけど。実は10年前には私の部下でした。その頃は非常に優秀な部下だったんです。その後で長期療養になるんですけれども、ただ「私のうつノート」をみていくと、その当時から隠れて通院していたらしいんですね。無理をしたからどんどん悪くなっていったんです。自分がうつじゃないかなって思っても単なるなまけ癖じゃないかとか、単なる一瞬の落ち込みなんじゃないかなと思うことがあると思うんですね。クリニックを訪れるときに、あまりたいしたことないのに行っちゃまずいかなと思うんですね。そのへんの通院する目安というのを教えていただければと思うんですが。

 保田:確かにうつは発見しにくいんです。自分自身でわかるということはあまりないんですね。家族に言われてしぶしぶ来たという方がほとんどです。早期発見・早期治療の概念で言えば、やはりおかしいと思われたら、クリニックに足を運ぶべきだと思います。なぜなら、その時点で支障がおこっているんです。例えば、会社に遅刻して怒られちゃったとか、学校に行きたくなくて仮病だ!と怒られたりしているわけです。でもやっぱり自分でおかしいと感じているわけですから、遠慮なさらずクリニックに行ってほしいですね。そうするとわたしどもはお薬をお渡しします。病気ですよという感覚でお話しするんですが、あくまで軽症ですので一時使っていただくだけで治りますよとか、そのような形でお話しすれば上手に使ってことなきをえるんですね。遠慮なく相談してください。

知っていれば役に立つ『がん情報の調べ方・読み方』は4回に分けて掲載しています
(1)がん情報の提供体制が整ってきた(2010年3月1日)
(2)がん診療連携拠点病院の相談支援センターを利用してください(2010年3月2日)
(3)がん診断されると誰しも落ち込むが、立ち直ることができる(2010年3月3日)
(4)家族ががんと診断された時(2010年3月4日)
–>
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

お知らせ・イベントの一覧を見る

最新記事