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(3)第1部:講演「うつ病」について

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第5回医療機器市民フォーラム

 主催:医機連(医療機器産業連合会)、医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS)
 後援:内閣府、厚労省、経産省、文科省

 

講演者:樋口 輝彦 氏  国立精神・神経センター 総長

 1972年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、埼玉医科大学、群馬大学医学部精神神経学教室、昭和大学藤が丘病院精神神経科教授を経て、1999年 国立精神・神経センター国府台病院副院長、2000年国立精神・神経センター国府台病院院長、2004年国立精神・神経センター武蔵病院院長、2007年より現職。日本学術会議会員。

 うつ病は、はっきりした脳の変化がありません。まず、うつ病と非常に関係が深いストレスには、身体的なストレスと心理的なストレスが知られています。身体的ストレスとは、地震に遭って圧迫され骨折したというような物理的なストレスであり、心理的なストレスは色々な不安や緊張などによって引き起こされます。

 身体的ストレスは体が防御しようと働くメカニズムで、極めて適応的なものです。いったん対処行動が終われば生理的反応、例えば血圧はすぐに標準値に戻ります。

 ところが心理的なストレスは、多くの場合が慢性的です。例えば大震災で受けた心理的なストレスは長期間続き、体に影響を及ぼして、それが病気につながると考えられます。

 最近は、ストレスが関係する精神的な疾患をストレス関連疾患といいます。代表格がうつ病(気分障害)、その他に不安障害。不安障害には大震災後、震災時の夢を見る、不眠が続くなどというPTSDも含まれます。

 うつ病は、うっとうしい、物悲しいという気分と、物事を考えようとしてもうまく考えられない、停滞して前に進まない、悪いことばかり考えてしまう、なかなか行動に移せない、自分に自信を失って最終的には死にたくなるなどと、自律神経系が多いのですが、様々な身体症状を伴う病気です。

 

 うつ病の生涯有病率は6.5%ぐらい、1年間で2.2%ですから全国で200~300万人になります。うつ病の原因は、脳の神経細胞が情報を伝達していく仕組みがうまくいってないと推察されます。

 まだよく分かっていませんが、脆弱性ストレスモデルが有力です。元々うつになりやすいものを持った人が、ストレスが加わって発病してくると考えられます。病気そのものが遺伝するという証拠はありません。しかし、病気になりやすさ、性格傾向、気質、体質などが遺伝的な影響を受けているのではないでしょうか。

 

 うつ病は臨床症状で診断せざるを得ません。基準を作って診断しますが、7割方は抗うつ薬、十分な休養、サポーティブな精神療法、色々な日常生活の仕方のアドバイス、その方の心理的な悩みに対応していくことで、解決できています。

 しかし残りの3割は慢性化、難治化します。うつ病は治りやすい病気だと言われますが、必ずしもそうではありません。根治療法ではなく、あくまでもうつ状態を軽減させる治療ですので、一度軽快しても、また何らかのきっかけで再発することが大きな特色です。いかに予防するかが大事になります。

 今の抗うつ薬は副作用が少なくなっていますが、薬だけで治療するのではありません。うつ病の方は非常にネガティブな考えに陥ります。回復した後も、自分を駄目な人間だという自己否定が染み込んでいる方が結構います。そういうパターンで生活をしていると再発しやすいので、認知療法という認知のゆがみを矯正していく方法に関心が集まっています。

 うつ病は、画像や病理診断でできません。診断の基準は共通していますが、見立て方、症状の引き出し方、とらえ方に微妙な違いがあると、ばらつきが出てしまいます。それを克服していくために、診断に有用な客観的な指標研究が進んできています。

 1つに脳の血流を見る近赤外線トポグラフィー(NIRS)があります。被験者に課題を与えると、健常者の頭葉の血流がぐんと上がっていきますが、うつ病の方は、上がりが非常に悪く、フラットに近い状態の場合もあります。診断の補助として先進医療が認められています。

 

 うつ病の話をまとめましょう。(1)病因は不明ですが、仮説としてはストレス――脆弱性モデルが提唱されています。(2)うつ病は将来、健康生活支障度において全疾患の1、2位になると推計されます。(3)7割方のうつ病はお薬と精神療法と環境調整で治療ができますが、再発をしやすいところが問題です。(4)客観的診断法としてNIRSが一番有力です。

第5回医療機器市民フォーラムは5回に分けて掲載しています
(1)第1部:講演「脳卒中」について(2010年3月29日)
(2)第1部:講演「アルツハイマー病」について(2010年3月30日)
(3)第1部:講演「うつ病」について(2010年3月31日)
(4)第2部:パネルディスカッション(上)(2010年4月1日)
(5)第2部:パネルディスカッション(下)(2010年4月2日)
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