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(2)第1部:講演「アルツハイマー病」について

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第5回医療機器市民フォーラム

 主催:医機連(医療機器産業連合会)、医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS)
 後援:内閣府、厚労省、経産省、文科省

 

講演者:井原 康夫 氏  同志社大学 生命医科学部 教授

 1971年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、都老人総合研究所などを経て、1991年東京大学 大学院医学系研究科 脳神経医学専攻・基礎神経医学講座・神経病理学分野 教授、2001年同大学脳神経医学専攻長、2008年より現職。日本認知症学会 理事長。ベルツ賞1等賞、1995 Potamkin Prize(米国神経学アカデミー)、MetLife Award for Medical Research、紫綬褒章などを受賞。

 アルツハイマー病は、まだ根本的な治療法が確立していません。80代では100人に20人、90代で100人に40人が認知症になるわけで、認知症全体の約6~7割をアルツハイマー病が占めています。

 

 アルツハイマー病は一言でいうと個体の寿命が神経細胞の寿命に近づいたために起こるようになった。長生きと引き換えにアルツハイマー病という十字架を背負うようになったと思います。

 アルツハイマー病の患者さんの脳を調べると、2つ病変が見つかります。Aβという小さいタンパク質からできている老人斑と、神経細胞の中にタウ(τ)という神経原線維変化です。この両方が存在することが診断要件です。どちらか1つではアルツハイマー病と診断しません。2つあることが重要です。

 

 私は都老人総合研究所にいた時、非認知症の脳を調べていました。Aβはたくさんたまっているけれど、τはない人が非常に多かったのです。もちろんアルツハイマー病とは診断されません。

 アルツハイマー病の発症は、Aβの蓄積から始まりますが、まだ認知症の症状はありません。2期になりτが蓄積すると症状が出てきます。非常に長い潜伏期間があることが大きな特徴です。

 Aβが蓄積し、何らかの作用を通じて10~20年すると、τが蓄積してきて、神経細胞がなくなり、認知症になります。Aβの蓄積を阻止できれば、認知症の発症を阻止できるという仮説に基づき、創薬を必死にやっているわけです。

 臨床症状が出た時点では病理的に手遅れです。その前の段階で治療を施していかなければいけない。1999年、アメリカでワクチン療法を初めて創始しました。ワクチンを接種すると、Aβの沈着は除去されます。非常にセンセーショナルなニュースで、マウスでは認知機能の改善が知られています。2000年以降ヒトの臨床試験が行われ、今それが発展した受動ワクチンが最終段階で、欧米では恐らく一両年中に市場に出回ってくるのではないでしょうか。

 有効な治療時期はAβが出現してτがたまっていない時期と考えています。認知機能は正常で、τはあまりたまっていない時期に治療することが、根本的な対策ではないでしょうか。


アルツハイマー病の抗危険因子、危険因子


 食事と環境が、脳の中の病理に大きく影響することが分かってきました。例えばカレーの中の黄色い色素であるクルクミンという成分が、老人斑の除去に良いらしいと分かってきました。

 また快・不快の感じは脳内の遺伝子発現に影響し、病理にも影響しているようです。マウスの実験で、一つは「普通」に水と餌を入れて飼育し、もう一つは、運動ができるように「回し車」を入れるなど「豊かな環境」にして飼育しました。すると「回し車」を入れた「豊かな環境」で飼育したマウスには老人斑があまり出ません。

 60歳を過ぎたらどうすればいいのかと、よく聞かれますが、2つだけお勧めします。1つは、高血圧のコントロールです。高血圧の薬を飲まない人を飲む人と比べると、認知症の有病率は増えます。ほとんどがアルツハイマー病で、倍ほど違います。

 

 もう一つは運動です。誰も運動に関して悪く言いません。運動することを推薦します。どの位の運動をすればいいのか。ホノルルの日系二世のデータでは、1日2マイル歩くと発症率が全然違うそうです。2マイルは3.4キロメートルです。恐らく犬を飼っていれば、朝晩の散歩でその位すぐ歩くのではないでしょうか。

第5回医療機器市民フォーラムは5回に分けて掲載しています
(1)第1部:講演「脳卒中」について(2010年3月29日)
(2)第1部:講演「アルツハイマー病」について(2010年3月30日)
(3)第1部:講演「うつ病」について(2010年3月31日)
(4)第2部:パネルディスカッション(上)(2010年4月1日)
(5)第2部:パネルディスカッション(下)(2010年4月2日)
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