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(3)がん診断されると誰しも落ち込むが、立ち直ることができる

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第24回日本がん看護学会学術集会・市民公開講座

 国立がんセンターがん対策情報センター がん医療情報コンテンツ室長・精神科医:加藤雅志さん
 国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部診療実態調査室長・看護師:高山智子さん
 日本がん看護学会理事長 座長:佐藤禮子さん
 
加藤雅志さん

 加藤: 再びお話しさせていただきたいと思います。今度は精神科医として、一人の臨床家としてお話しができたらと思います。

 がんと診断されてからも、自分らしく生活していくことを考えたとき、どうしても整理しなくてはならないものがあると思います。それは何かというと「感情」です。つまり気持ちの整理が重要になってくるのではないかと思います。

 がんと告げられたとき、家族ががんと診断されたとき、心の中でいろいろな反応が起こります。がんと告げられた直後、数日間は「否認」という反応が起きて、自分はがんと診断されたが、そんなことはないだろうという気持ちになったりするかもしれません。また、もう何もかもおしまいだと絶望してしまったり、今までの自分がすべて台無しになってしまったという気分になるかもしれません。

 そして怒り。なぜ自分はがんにならなければならないのだ、定期的に健康診断受けてがんにならないように生活に気を配っていたのに、なぜ、がんになってしまったのだ、という怒りが診断直後に出てくることもあります。

 こういった時期が続いた後、多くの人が「苦悩と不安」の時期に入っていくと言われています。いろんな感情が、わきあがってきます。将来に対する不安。気持ちの落ち込み。恐怖。無力感や不眠、食欲低下、集中力の低下、こういったものが出てくることがあります。

 このような時期は、長ければ数か月続く場合もありますが、少しずつ現実的なことを考えることができるようになってきます。がんと診断されたが、どうやって向き合っていこうかと考えてみたり、今後の計画、仕事や家族について考え始めたり、自分自身の病気について調べてみようというような気持ちも徐々に出てくるものです。

 ただし、全員がこのような経過をたどるわけではありません。診断直後から、がんと向き合っていこうと前向きに取り組む方もいる一方で、数か月たっても気持ちの落ち込みから回復できない方もいます。しかし、多くの方は数週間から数か月かけて通常の生活が送れるようになるようです。


がん患者の二つの不安


 がん患者さんが抱える心の負担は、代表的なものとして二つ挙げられます。

 一つは、これからのことに対する不安。二つ目は、がんによって失ってしまうもの、仕事を失ってしまったりとか家族の中での役割を失ってしまったりだとか、そういったものに対する気持ちの落ち込みです。

 さて、がんと言われても自分らしく過ごす、そのためにはどうしたらいいのでしょうか。そして家族ががんといわれたとき、どのようなサポートができるのでしょうか。

 自分ががんになった場合についてですが、まず、自分を責めないということです。人によっては自分の生活習慣が悪かったとか、こういうことをしてしまったからバチがあたってしまったとか、自分を責める方がいます。

 そういう気持ちになってしまうことはよく理解できますが、自分を責めてばかりいると今の状況から回復することが難しくなってきます。むしろ今の状況を受け止めて、正しい情報を理解したうえでどのように向き合っていくのか、まわりの人と相談しながらどのように臨んでいくのか気持ちを整理していくことが大事です。

 次に、主治医と納得いくまで話すこと。これも重要です。いくつか重要なポイントがあります。自分自身ががんについてどのように理解しているのか、必ず主治医に伝えてください。医師も一人の人間ですから、自分が伝えたつもりでいて、患者さんがすべて理解していると思いこんでいることもありますし、言ってないことでも言ったつもりになっているかもしれません。自分自身の病状の理解をしっかりと主治医に伝えることが重要です。その上で、自分がどこまで知りたいのか伝えることです。例えば、取りかかっている仕事を片付けていくという観点では、今後の見通しを知ることは重要です。その一方で、あまりそういう怖い話は聞きたくないという人もおります。また、より正確に数字などで説明してもらいたいという人もいれば、あまり具体的な数字は言わないでおおまかな方針だけ示してほしいという人もいます。主治医とコミュニケーションをとるときに、自分はどのように理解していて、そしてどこまで知りたいのか、どのように伝えてほしいのかといったことをあらかじめ伝えておくといいと思います。

 また、人によっては難しい場合もありますが、身近な人、心から信頼できる人にはありのままを話すということも重要です。ご家族、友人、同じ病気を抱えている方、自分が信頼できる人に、自分のつらい状況を理解してもらうということは力になります。がんと向き合っていくときにはサポーターがいると大変心強いものです。心を許せる方には、ありのままを話してみてください。きっと、気持ちが楽になるはずです。


心のケアの専門家に頼ってください


 がんと診断されると、不安や気持ちの落ち込みが出てくるものだと先ほど話しましたが、

 多くの場合、次第に改善していくものです。しかし、人によってはなかなかよくならない場合があります。そういう時はあまり無理をせずに心のケアをする専門家に頼ることをお勧めします。

 精神科や心療内科を受診することは、人によって、恥ずかしいことだとか心が弱いからだとか思う方もいらっしゃいます。しかし、私は心の専門家に利用することで、より自分らしく生活していくことこそが心の強さだと思いますので、ぜひ恥ずかしがらず、専門家を利用してほしいと思います。

 そして何よりも重要なことは正しい情報を集めていくことだと思います。誤った情報を真に受けてしまって、間違ったことを信じて取り組んでしまっている方もいらっしゃいます。もしこれがまちがった情報なのかどうか知りたいときは、主治医をはじめ、医療従事者に確認し、遠慮せずに確かめていってほしいと思います。

知っていれば役に立つ『がん情報の調べ方・読み方』は4回に分けて掲載しています
(1)がん情報の提供体制が整ってきた(2010年3月1日)
(2)がん診療連携拠点病院の相談支援センターを利用してください(2010年3月2日)
(3)がん診断されると誰しも落ち込むが、立ち直ることができる(2010年3月3日)
(4)家族ががんと診断された時(2010年3月4日)
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