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仁科亜季子さんが語る

イベント・フォーラム

(4)男の子が「女性って偉大ですね!」

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

女優:仁科亜季子さん
1972年デビュー。NHKの大河ドラマなどで清純派女優として活躍。79年から芸能活動を一時休止し、99年に復帰。女優業のほか、がんに関する講演や啓発運動なども行う。
群馬大産婦人科教授:峯岸敬(たかし)さん
1977年群馬大医学部卒。海外留学などを経て、92年に日本内分泌学会の研究奨励賞を受賞し、2000年から現職。
聞き手:読売新聞編集委員 南砂(まさご)さん
1979年、日本医大卒。ベルギー国立ゲント大学留学。85年、読売新聞入社

検診後進国・日本

 :検診をすれば随分早く見つけることができるとありましたが、日本の検診の実態はすごく悪いんですよね。

 峯岸:残念ながら日本は、先進国の中でも最も検診率が低い国です。今20%くらいしか検診されていません。欧米諸国は80%くらいですので、日本は大変少ないんですが、死亡率もいちばん少ない方に入りまして、いかに検診の効率がいいかということです。

 たとえば南アメリカの国々では検診率が80%ですが、非常に死亡率も高く、何のために検診をしているのかわかりません。日本は今の検診のシステムが優れているので、それを上手に使って、ますます死亡率を減らすことが必要になってきます。

 :ただ、検診も結構な負担になりますね。検診の頻度というのは年に1回とかでしょうか?

 峯岸:最近は2年に1回とかになっていますね。検診は1回だと評価しづらいというのがあります。2年間で2回診てもらって、2回とも何ともない方は、その後は2年に1度でもいいんじゃないかと思います。

 細胞診でいったん、「異形成」といって細胞の様子が悪い形になっても、ほとんどの場合正常に戻っていきます。しかし、時間の経過とともに悪い方へ行った場合は、だんだん正常に戻りづらくなる、ということも分かっているんですね。だから悪い方へ進むようだったら、間隔を短く診ていかないと、適切な治療ができないかもしれません 。

 ただ、細胞診による検診は診る先生によって判断が違ってしまう可能性があります。客観性に乏しく間違いが起きる可能性があります。

 そこで、誰が診ても分かるような、数値で出るようなもの。例えば、ヒトパピローマウイルスのDNAを検査して、「ある」「ない」なら、プラスマイナスが出るので客観性が高くなります。もしプラスであれば、こういうふうに診ていきましょう、というスケジュールが組める。そういう進歩はしていくと思います。

勇気をもって検診を!

 

 仁科:ただ、やっぱり日本人は若いころから婦人科に行き慣れていないですよね。それに、検診台にあがりたくない、という思いもありますので。

 先日、大学生の方たちと話したんですが、男の子が興味をもって検診台に乗ったんですって。「それから女性を見る目が変わりました」って。「女性って本当に偉大なんですね」と言われました。勇気をもって、若い方に検診をしていただくのが第一歩ですよね。

 でも、学生さんたちにお話をうかがっても、母親とそういう話をしたことがないし、恥ずかしい、とおっしゃるんですよ。「検診行く」って言うと、親が「え、なんでー?」って。「親も行ってないし」って言うんですよ。だから、親子でそういう話題を作ることが検診の前の第一歩かもしれませんよ。

 :たしかに、そういう話自体がタブーになっちゃっている部分がありますよね。そこがまず先かもしれませんね。

 仁科:日本って、そういう点で変に閉鎖的というか、奥ゆかしいというか。

 妊娠して初めて子宮がんが見つかる、っていうケースがすごく多いらしいですよ。私は2人いるからいいですけど、妊娠で分かって、赤ちゃんがだめ、その後も赤ちゃんを産めない、なんていうことになることが多いですから。日本人って本当に危機管理意識が高くないですね。「なるかならないか分からないじゃない」という感じですからね。

 でも、今は検診台も私の時と違ってずいぶん進歩的になって、カーテンも自由にひくことができます。女医さんも増えていますから、そういうところをご自分でいろいろなネットワークを使って、ハードルをクリアしていただくのが一番早いかもしれませんね。

仁科さんの講演は6回に分けて掲載しています
(1)偶然がんが見つかって(2010年1月14日)
(2)がん告知に夫が倒れた…(2010年1月15日)
(3)「これ、あっこちゃんの敵だよ」(2010年1月18日)
(4)男の子が「女性って偉大ですね!」(2010年1月19日)
(5)初体験前にワクチン接種を (2010年1月20日)
(6)ストレス、あってもなくても…(2010年1月21日)
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