お知らせ・イベント
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(3)「これ、あっこちゃんの敵だよ」
読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム
女優:仁科亜季子さん |
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1972年デビュー。NHKの大河ドラマなどで清純派女優として活躍。79年から芸能活動を一時休止し、99年に復帰。女優業のほか、がんに関する講演や啓発運動なども行う。 |
群馬大産婦人科教授:峯岸敬(たかし)さん |
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1977年群馬大医学部卒。海外留学などを経て、92年に日本内分泌学会の研究奨励賞を受賞し、2000年から現職。 |
聞き手:読売新聞編集委員 南砂(まさご)さん |
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1979年、日本医大卒。ベルギー国立ゲント大学留学。85年、読売新聞入社 |
患者も意識改革を!
南:医師と患者が治療に向き合うときに、大事なことはどういうことだと思われますか?
仁科:大学病院は2時間まって3分とか言うじゃないですか。患者さんからの意識改革も必要だと思います。患者は、めげずひるまず、自分が言いたいことを訴える。とにかく少しでも多く情報を提供しなければならないので、メモにして一生懸命話す。そうすると、お医者さんは答えを引き出してくれますから。それがすごく必要だと思います。
痛みに関してだけでも、患者側がきちんと、どこがどう痛いのか、毎日なのか、そういう情報を発信しないとキャッチできないですから、お医者様だけの責任ではなく、患者側の責任でもあると思うんですよね。
峯岸:治療で放射線をかけたりすると、膀胱(ぼうこう)の機能が落ちるんですね。例えば超音波検査をしたときに、膀胱がいっぱいになっているので「排尿してきましたか?」と聞くと「はい、してきました」。でも、膀胱に結構おしっこがたまってきているので、そこで初めて、「あ、ちゃんと出せない状況になっているのか」と。それも時間をかけて聞かないと、「たまっていても全然わからないんですよ」という言葉は引き出せない。
南:そうですか。先生側も患者の言葉をもとにいろいろな可能性を考えているんですね。やっぱりコミュニケーションが大事ということになりますね。
仁科さんは治療そのものでは何が一番つらかったですか?
仁科:抗がん剤の後の吐き気には苦しみました。抗がん剤を入れる処置をしていただいた場所から自室に戻るまでに、3分おきに起こるんですよね、つわりの強いのみたいのが。特に私は「動注(どうちゅう)」といって、足のそけい部の血管から抗がん剤を入れてもらったので、動けないまま、ゲーゲーやっていました。それはつらかったです。
南:子宮頸がんに関して言えば、チーム医療だとか化学療法による吐き気を抑える治療の進歩とか、そういうものもずいぶん様変わりしているんですよね。
峯岸:そうですね。治療をサポートするようなこと、吐き気を止める薬も開発されていますので、治療を始める前にあらかじめ投与しておいたほうが効くというのが分かっています。そういう意味では進歩した治療になっていると思います。
コミュニケーションが大事
南:患者さんの立場だと、この治療を受けたら次に何が起きるんだろうとか、予想できませんものね。
仁科:それは、インフォームド・コンセントということで事前に先生がお話ししてくださるんですけど、そこでもコミュニケーションが大事だと思うんです。
私を担当してくださった先生はとても口の悪い先生でしたけど、心のある、きちっと教えてくださる先生で、おもしろいことに、手術後、先生が当直の時に大きな顕微鏡で見せてくださったんですね、「これ、あっこちゃんの敵だよ」って。私のがん細胞。どれがどれだか分からないんですけど、紫色に着色してあって、地図みたくなっていました。
「これに向かって頑張ろうね。僕も一生懸命頑張るけど、君も一生懸命やってよね」って。そういうちょっとした先生との対話というか、体温のある接し方がとてもよかったと思います。
峯岸:今はきちんと時間をかけて説明をして、必要であればご家族にも同時に説明しています。ただ、「ここから先はあなたが決めるんですよ」というふうになりがちなんですが、医師としては「この方法が、こういう理由でこういうふうにいいと思うんですよ」というところまで説明できればいいと思っています。
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仁科さんの講演は6回に分けて掲載しています |
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(1)偶然がんが見つかって(2010年1月14日) |
(2)がん告知に夫が倒れた…(2010年1月15日) |
(3)「これ、あっこちゃんの敵だよ」(2010年1月18日) |
(4)男の子が「女性って偉大ですね!」(2010年1月19日) |
(5)初体験前にワクチン接種を (2010年1月20日) |
(6)ストレス、あってもなくても…(2010年1月21日) |
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