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(8)がんになっても前向きに生きる

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

 「創刊135周年スペシャルフォーラム」から、9月24日に横浜市の関内ホールで開かれた、歌手でエッセイストの、アグネス・チャンさんの講演「がんに打ち勝つ」の内容をご紹介いたします。

歌手・エッセイスト・教育学博士(Ph.D.):アグネス・チャンさん
香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。芸能活動のみでなく、ボランティア活動、文化活動にも積極的に参加する。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。94年教育学博士号(Ph.D.)取得。98年、日本ユニセフ協会大使に就任。2008年、全国112ヶ所に及ぶコンサートツアー「世界へとどけ平和への歌声」を成功させ、第50回日本レコード大賞の特別賞を受賞。 芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、目白大学教授(客員)、日本ユニセフ大使など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。
 

 私は何度も命を助けてもらいました。だから、残りの人生は、できるだけ、ほかの命に貢献できるような活動をしたいんです。毎日、毎日、考えています。どうしたらもっと、残りの時間を有効に使っていけるのか。

 できることがあったら、どんどんやっていきたい。思いついたこともやっていきたい。せっかくいろんな場所に行かせてもらって、現地で見てきたんだから、一人でも多くの人たちに知ってもらいたい。

 せっかくがんになったんだから、自分のことを知ってもらって、一人でも多くの方に検査に行ってもらいたい。頼むから、みなさん、定期的に検査に行ってください。そうすると、私の命に意味が出てくるんです。そうじゃなければ、私は助かったって意味がないんです。ぜひ、みなさん、私の命に意味を与えてください。

 私は、リレー・フォー・ライフの仲間から、教わったことがあるの。助けをつないで歩く、命のリレー。それはどういう意味かと言うと、命はなくならないという真実です。大きな意味で、命はなくならないんですよ。

 アグネスの命はなくなるかもしれない。でも、なくなった仲間は、いま私の心の中で生きていますよね。そうすると、なくなってないんですよ。私がなくなっても、次の人の心の中で生きていれば、私もなくなっていないんで、長い間隔で考えれば、命はなくなっていないんです。で、助けをつなぐわけじゃないですか、だから自分が歩ける距離が……、できるだけ多く歩いた方がいい、そうすれば、次の人が少し楽になるじゃないですか。で、せっかく歩くんだから、輝いて、明るくて、楽しく歩きたい。そう思うようになりましたね。毎日がとてもとてもありがたいんです。

 そして、私がいま一番大好きな言葉が、毎日が誕生日です。ハッピー・バースデー・トゥミー。そうするとね、腹が立たないです。毎日がお祝いなんで、楽しいです。しかも、周りの人もみんな誕生日ですから。ちょっとしたこと言われても、怒らないんです。その人も誕生日だからね。一緒に生きている喜びをまずね、お祝いしないといけない。

 私はがんになって良かったと思います。人の痛み、もう少しわかるようになった。命の大切さを感じています。ぜひ、みなさんにも、病気になっても、前向きに。元気だったら、検査。病気は怖くないんです。うまくつきあっていけば、長く、長くいる友だちになるかもしれません。

天国と地獄はどう違う

 天国と地獄のたとえをしたいと思います。天国と地獄はどう違う。同じなんです。丸いテーブルがあって、ごちそうがたくさん並んで。みんなで食べようとしています。おはしがあります。とても長いおはしです。じゃあ、どう違うの。

 地獄の場合は、おいしそうなものをおはしでとって、自分の口に運ぼうとします。おはしが長すぎて、自分の口には届かないんです。手でとろうとしても、おはしがあるからそれはできない。おいしいものがあるのに、食べられない。欲求不満で、いらいらして、しまいには、あなたのせい、あなたのせい、あなたのせい、と大騒ぎです。

 天国の場合は、その長いはしを使って、おいしいものを相手の口元まで運んであげるんです。はい食べてくださいって。食べ終わったら、はい食べてくださいって、自分も同じことをやってもらうんです。お互いにおいしいものも食べられて、おなかいっぱいになって、和気あいあいで、幸せいっぱいだそうです。

 いったい、今私たちが暮らしているこの社会、この地球、天国に近いのか、地獄に近いのか、本当に考える時期に来たんじゃないのかな、と思います。でも、きっと私たちの心構え一つでね、次の世代が大人になる時には、快適で、少しでも天国に近いような状況になれば、うれしいなあ、と思います。みんなと一緒に頑張りたいと思います。

アグネス・チャンさんの講演は8回に分けて掲載しています
(1)ゴルフボール大の腫瘍 良性?悪性?(2010年1月1日)
(2)戻らない?! 顔のマヒ(2010年1月3日)
(3)乳房にしこり・・・。「何で、私が」(2010年1月5日)
(4)乳がん手術、患者仲間からの励ましメールに涙(2010年1月6日)
(5)大量の汗、関節痛、顔の腫れ・・・ホルモン治療で副作用(2010年1月7日)
(6)干ばつのアフリカで見たもの(2010年1月8日)
(7)戦争の国で、子どもたちの命(2010年1月12日)
(8)がんになっても前向きに生きる (2010年1月13日)
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