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(7)戦争の国で、子どもたちの命

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

 「創刊135周年スペシャルフォーラム」から、9月24日に横浜市の関内ホールで開かれた、歌手でエッセイストの、アグネス・チャンさんの講演「がんに打ち勝つ」の内容をご紹介いたします。

歌手・エッセイスト・教育学博士(Ph.D.):アグネス・チャンさん
香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。芸能活動のみでなく、ボランティア活動、文化活動にも積極的に参加する。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。94年教育学博士号(Ph.D.)取得。98年、日本ユニセフ協会大使に就任。2008年、全国112ヶ所に及ぶコンサートツアー「世界へとどけ平和への歌声」を成功させ、第50回日本レコード大賞の特別賞を受賞。 芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、目白大学教授(客員)、日本ユニセフ大使など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。
 

 毎年、毎年、いろんな国を訪ねました。一番心壊れるのは、戦時中の国ですね。そこで苦しんでいる子どもたちですね。近年で言えば、一番つらかったのは、ダルフールとイラクかな。

 私がイラクに行ったのは、2003年です。その年の3月、戦争が起きました。5月に、アメリカが1回、終戦宣言したんです。戦争は終わったと思って、6月、私たちは子どもたちのことが心配で、行きました。その後、爆破事件とか、誘拐事件とかがあって、行けなくなりましたが、その1か月だけは行けたんです。

 たぶん多くの方は、イラクまで行っても、おぜん立てされているところしか行けなかったと思う。バリケード裏。本当の触れあいはできなかったと思う。でも、実際に触れあってみるとね、いい民族です。

 私は、イラクの方は怖いのかなあ、と日本にいた時は思いました。そんなことはないんです。日本が大好きな民族なんです。よく遠くから来てくれた、私たちは日本を尊敬しているんです、日本は子どもたちを一生懸命教育したから、世界第2の経済大国になったんですよねと言うから、そうですよ、と言うと、僕たちもそうすれば、そうなるよねって言うから、はい、なると思いますと一生懸命、励ましたんですよ。

 街に入ったら、街のど真ん中は子ども墓地でした。見渡す限り新しいお墓。お墓と言っても、ただ単に砂を掘っただけなんですよ。大きさがわかります。黒いベールをかぶっている母親が泣いているんです。慰めてあげようと思うと、周りから人がいっぱい集まってきて。空襲の時はどうだった、誰かが死んだ、どうのこうの。親が子どもを連れてきて、服をめくるんですよ。見てください。これは、やけどの跡ですよ、針が刺さったままなんですよ、とか。正直言って、見ていられない。

病院で、心が壊れた

 でも、病院に行ったら、心が壊れた。医者の先生たちは必死でした。水も来ない。電気も来ない。麻酔もない。薬もない。子どもが運ばれてきても、助けることができない。どうしても手術しなければいけない時は、麻酔なしで、みんなで子どもを押さえて、手術するんですよ。わめき声。血のにおい。すごかったです。

 がん病棟の先生が私のところに来てと言うので、ついて行きました。そしたら、小さい子が泣きっぱなし。末期患者だって。どうしてこんなたくさん。もちろん、現地の人たちは劣化ウラン弾のせいだと言うんですけど、国際社会はまだはっきり認めていなかったので、なんとも言えない。これぐらい大きなおなかになってしまった3歳ぐらいの男の子が泣きっぱなしなんです。

 その若い母親は、先生が来ると、ぱっと先生の手をとって、ねえ先生、正直言ってくれませんか、この子は助からないんでしょ、助からなかったらかわいそう過ぎるよ、私は絞め殺してもいいでしょ、絞め殺してもいいでしょ、と。もちろん、とめました。そしたら、私のところに来て、私の肩をぽんとたたいて、あなた日本から来たんでしょ、被爆ってどういうことか教えてください。助けてください、子ども助けてくださいと言うんです。

 私は言葉を失いました。私は人間は愚かだなと思いました。人体にどういう影響があるかどうかわからない武器をもう絶対使わないと約束したはずなのに……。もしかしたら、まだ使っているのかなぁーって。

アグネス・チャンさんの講演は8回に分けて掲載しています
(1)ゴルフボール大の腫瘍 良性?悪性?(2010年1月1日)
(2)戻らない?! 顔のマヒ(2010年1月3日)
(3)乳房にしこり・・・。「何で、私が」(2010年1月5日)
(4)乳がん手術、患者仲間からの励ましメールに涙(2010年1月6日)
(5)大量の汗、関節痛、顔の腫れ・・・ホルモン治療で副作用(2010年1月7日)
(6)干ばつのアフリカで見たもの(2010年1月8日)
(7)戦争の国で、子どもたちの命(2010年1月12日)
(8)がんになっても前向きに生きる (2010年1月13日)
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