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(6)干ばつのアフリカで見たもの

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

 「創刊135周年スペシャルフォーラム」から、9月24日に横浜市の関内ホールで開かれた、歌手でエッセイストの、アグネス・チャンさんの講演「がんに打ち勝つ」の内容をご紹介いたします。

歌手・エッセイスト・教育学博士(Ph.D.):アグネス・チャンさん
香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。芸能活動のみでなく、ボランティア活動、文化活動にも積極的に参加する。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。94年教育学博士号(Ph.D.)取得。98年、日本ユニセフ協会大使に就任。2008年、全国112ヶ所に及ぶコンサートツアー「世界へとどけ平和への歌声」を成功させ、第50回日本レコード大賞の特別賞を受賞。 芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、目白大学教授(客員)、日本ユニセフ大使など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。
 

 私は実は、自分が生きているということに、あまりこだわっていたわけではなかったんです。というのは、いろんな国に行って、たくさんの人が目の前で死んでいったので。命はみんな同じ重さだから、別に自分の命だけが大事とは思っていなかったんです。でも手術の前には神様に祈りました。下の子が義務教育終わるまでは、15歳になるまで、何とか生かしてもらえませんか、と。もっと、長く言えばよかったかな、と今では思うんですが。

 私が最初にアフリカに行ったのは、1985年です。それは、私の人生を変えました。その年、エチオピアは、干ばつと日照りで100万人の人が飢えで死んでいきました。今もマリとか、ブルキナファソとかで多くの人が亡くなっています。

 私はその年、24時間テレビの総合司会、テレビパーソナリティーに選ばれたんですね。私は100万人の人が飢えで死んでいるというのを見たことがない。経験したことがない。内戦中ですからダメだと言われたんですけど、頼み込んで、頼み込んで、行かせてもらいました。

 車で北へ北へと向かいました。どんどん砂漠化していって、すごい砂嵐です。そして、どんどん、どんどん、さまよう人たちが増えました。現地の人たちはどれぐらい細いか。私たちは、細い人のことを、骨と皮しかないと言いますが、急速にやせていく人は、骨と皮がくっついていないんです。後ろから見ると、1枚の皮をぶら下げて、それでその皮がおしりのところで揺れるんです。歩くがい骨と言いますよね。うそです。本当にがい骨みたいな人は歩けません。倒れています。

歌で気持ちが通じた!

 私は現地の言葉を教えてもらって、替え歌を作りました。キャンプには3500人の子どもたちがいました。何とかコミュニケーションをとろうと思った。遊ぼうと思った。でも、言葉ができない。そうだ、さっきの替え歌を歌ってみよう。歌っているうちに、子どもたちが寄ってきて、踊り出したんです。それがかわいくて、かわいくて。本当にいとおしかったですね。だから、ここで病気になってもしょうがない、ここで死んだら、それは運命だって、思わず子どもたちを抱きしめたり、キスしたり、本当の触れあいができました。

 もう死んでも構わないと思って子どもたちを抱きしめたとき、私は生きているんだなあ、私は生きていたんだなあ、と実感したの。なぜかよくわからないけど、胸いっぱいの幸せを感じたんですね。そうか、一人で生きているのもとてもいいことだと思います。でも、やっぱりみんなとこうやって一緒に生きていることがすてきなんだなあと教わりましたね。

 あれから、どこに行っても怖くなくなりました。戦時中の国とか、病気がはやっている国でも、子どもたちが一生懸命、勇気をくれたんですね。でも、そんな時でも、子どもたちはバタバタ、バタバタ倒れて、死んでいきました。

ユニセフ大使に任命されて

 1998年、日本ユニセフ協会から、大使として任命されました。それからは日々勉強です。知らないことがいっぱいです。いまだに、毎年920万人以上の子どもたちが5歳になる前に死んでしまうんです。何億人の子どもたちが学校に行けない。何億人の子どもたちが働かされているんです。

 最初に大使になった年に行った国は、タイでした。児童買春、児童ポルノの実態を見てこいと言われたんです。私はその問題を知りませんでした。タイでは、子どもを売らないと生計を立てられない家族がいまでもあるんです。子どもが売られる。売られた子どもは、もし買春宿に入れられたら、毎日十人、十何人のお客さんをとらされます。100%性病になります。地域によりますが、30~50%の子どもはエイズになってしまうんです。

 その次の年はスーダンに行きました。児童兵士の問題を見てくれと言われたんです。私が会った子ども兵士は何歳だと思いますか。12歳です。6歳の時、目の前でお父さんを殺されて、8歳で自ら反政府軍に入りました。戦って、戦って、11歳で、撃たれて、下半身不自由になり、12歳でベテランです。私たちはいろんな国に行って、子どもを返して下さいと頼みます。それでも、いまだに30万人ぐらいの子ども兵士が戦っているのではないかと言われています。

アグネス・チャンさんの講演は8回に分けて掲載しています
(1)ゴルフボール大の腫瘍 良性?悪性?(2010年1月1日)
(2)戻らない?! 顔のマヒ(2010年1月3日)
(3)乳房にしこり・・・。「何で、私が」(2010年1月5日)
(4)乳がん手術、患者仲間からの励ましメールに涙(2010年1月6日)
(5)大量の汗、関節痛、顔の腫れ・・・ホルモン治療で副作用(2010年1月7日)
(6)干ばつのアフリカで見たもの(2010年1月8日)
(7)戦争の国で、子どもたちの命(2010年1月12日)
(8)がんになっても前向きに生きる (2010年1月13日)
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