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(4)乳がん手術、患者仲間からの励ましメールに涙

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

 「創刊135周年スペシャルフォーラム」から、9月24日に横浜市の関内ホールで開かれた、歌手でエッセイストの、アグネス・チャンさんの講演「がんに打ち勝つ」の内容をご紹介いたします。

歌手・エッセイスト・教育学博士(Ph.D.):アグネス・チャンさん
香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。芸能活動のみでなく、ボランティア活動、文化活動にも積極的に参加する。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。94年教育学博士号(Ph.D.)取得。98年、日本ユニセフ協会大使に就任。2008年、全国112ヶ所に及ぶコンサートツアー「世界へとどけ平和への歌声」を成功させ、第50回日本レコード大賞の特別賞を受賞。 芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、目白大学教授(客員)、日本ユニセフ大使など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。

 医者はすごく一生懸命、丁寧に説明してくれました。やっぱり乳がんです。でも、早期です。「まだ、しこりがとても小さいと思います」と。ただし、私の乳がんは珍しい乳がんで、粘液がんっていうんです。粘液がんっていうのは、粘液の中にがんが浮かんでいるみたいな感じなんです。想像するとちょっと気持ち悪いけど、そういう形。要するに、袋があるみたいな感じなんです。

 比較的、おとなしいがんなんですが、面積が広いんです、固まってないですから。しかも、しっぽがありまして、リンパ腺の方に向いていくんです。リンパ腺に転移してしまうと、色んなほかの臓器に行きやすくなってしまう。そうすると治療が大変になるから、早めに手術した方がいいですねって言われて。

 もしリンパ腺に転移していたら全摘、転移してなかったら先生の言うとおりに温存手術を受けて、おっぱいを残そうっていうことになったんです。10月1日に手術しました。

 麻酔からさめると、看護婦さんが鼻と鼻がくっつくぐらいそばにいて、「転移してませんよ。転移してませんよ」って、10回ぐらいほほえんでささやいてくれたんです。うれしかったですね。本当に心の底からみんな喜んでくれたみたいな感じで。

 

 実は先生との話し合いで、1日手術受けて、6日コンサートがあるので、その日から復帰しようということだったの。でも先生が「6日に退院というのは無理だね。管もきっと抜けないだろうし、これはちょっと無理だね。休んでくださいね」と。

 何で休まなきゃいけないかっていうのを発表しなきゃいけないんです。母や姉は反対しました。しかし、もし世の中に姉や母のように、まだ少しでもがん患者、あるいは闘病している方に対して差別が残っているんだったら、これは発表した方がいいと自分で決心しました。

 おっぱいがちょっとちっちゃくなったけど、アグネス・チャンはアグネス・チャンで変わらないんです。しかも、あまりおっぱいを見せる仕事をしてないので、大丈夫です。それで、発表すること決めました。

10月1日はカレー記念日

 そうしたら、本当にびっくりするほどたくさんの方が心配してくれました。「こんなに皆さんに愛されているのか」ってびっくりした。

 たくさん大丈夫ですか、大丈夫ですかっていうメールが来てた。その中で、リレー・フォー・ライフの仲間からのeメールがあった。「新聞読んで、アグネスさんも乳がんだったって聞いて、びっくりしました。でも、早期発見で良かったですね。助かって良かったですね。きっと、会えなかったんだけど、天国に行った仲間がアグネスさんに教えたんでしょう」って書いてあった。もう手術しても、何しても泣かなかったのにうわーって泣いちゃいました。

 一時退院、正式退院の間に2日間、家に戻ることを許されました。先生から言われました。「一時退院の時に必ず1回、外食してください」って言うんです。

 「約束よ。乳がんだったら、落ち込んだり、外へ出なかったり、それがかえって病気に良くないんですから。治りが遅くなるので、ちゃんとお化粧して、髪とかして、着替えて外食1回してきなさいね」って言われて。「やだなー」と思ったんです。でも、約束だし行かなきゃと思って、ちゃんとお化粧しました。下着買ってきてもらって、着替えて出かけました。

 近所のレストランが全部いっぱいで、唯一空いていたレストランがインドカレー。自分が気にしているほど、誰も気付かないし、気にしないんですよ。それはすごく励みになった。本当にささやかな夕食だったんですけど、すごい楽しかったんです。だから、あれから毎年、10月1日は必ずインドカレーです。記念日として

アグネス・チャンさんの講演は8回に分けて掲載しています
(1)ゴルフボール大の腫瘍 良性?悪性?(2010年1月1日)
(2)戻らない?! 顔のマヒ(2010年1月3日)
(3)乳房にしこり・・・。「何で、私が」(2010年1月5日)
(4)乳がん手術、患者仲間からの励ましメールに涙(2010年1月6日)
(5)大量の汗、関節痛、顔の腫れ・・・ホルモン治療で副作用(2010年1月7日)
(6)干ばつのアフリカで見たもの(2010年1月8日)
(7)戦争の国で、子どもたちの命(2010年1月12日)
(8)がんになっても前向きに生きる (2010年1月13日)
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