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(3)乳房にしこり・・・。「何で、私が」

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

 「創刊135周年スペシャルフォーラム」から、9月24日に横浜市の関内ホールで開かれた、歌手でエッセイストの、アグネス・チャンさんの講演「がんに打ち勝つ」の内容をご紹介いたします。

歌手・エッセイスト・教育学博士(Ph.D.):アグネス・チャンさん
香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。芸能活動のみでなく、ボランティア活動、文化活動にも積極的に参加する。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。94年教育学博士号(Ph.D.)取得。98年、日本ユニセフ協会大使に就任。2008年、全国112ヶ所に及ぶコンサートツアー「世界へとどけ平和への歌声」を成功させ、第50回日本レコード大賞の特別賞を受賞。 芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、目白大学教授(客員)、日本ユニセフ大使など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。

 2007年は私もデビュー35周年なんですけど、中国と日本の国交正常化も35周年だったんですよ。中国でもコンサートをやろうと打診してみたの。そしたら、中国の大きな会場「人民大会堂」っていうところでのコンサートが決まったんですね。

 フォーク歌手では初めてのリサイタルが許されたというので、みんな張り切って一生懸命準備したの。そしたら、9月30日予定だったコンサート、1か月前に突然向こうから電話が掛かってきて、「すいません、党大会やるので延期にしてください」って言われて。

 ついてないなと思った。でも、これはついてないなではなかったんです。ちょっと暇が出来たんです、リハーサルの日にちも替えなきゃいけないということで。9月の中旬に休みをいただいて、寝っ転がって家でテレビを見てたら、なんか右胸の奥にちっちゃいしこりがあったっていう感覚なんです。ちょっとニキビができたかなみたいな感覚なんです。何となしに触ってみたら、本当に小さい小豆くらいのしこりがあったんですよ。

 普通だったら私、何とも思わないと思います。でも、たまたまなんですが、その10日か1週間前、私は「リレー・フォー・ライフ」という活動に参加したの。がん患者の皆さんが競技場を借り切って、24時間たすきをつないで歩く、そういう運動です。

 

 会場の中で一生懸命歩いて、そして明るくしているサバイバーの皆さんを見てすごい感動したの。大変な闘病をしているのに、こんなに輝いているってすごい感激して帰ってきたところだったの。

 だから、自分の胸を触って、もしかしたら自分もがんかなって。医者に診てもらおうと思って。「総合病院に行ってちゃんと調べてもらった方がいいですよ」って言われて、紹介状をもらって、何日か後に総合病院に行ったんです。

 マンモグラフィーっていう、乳がんの時に胸を挟んで調べる機械ありますよね。マンモグラフィーを受けて、また超音波で診てもらって、そして先生に呼ばれたんですね。そしたら、「うーん、やっぱりちょっと何かあるね。しこりがあるね。30代の女性だったら乳がんだと疑いませんけど、どれどれ、あー、アグネスさん50代なんですね」って言うんです。ダブルショックです。

 「それは疑った方がいいですね。組織を取って調べてみましょう」って、麻酔かけられて、少し大きめなストローみたいなのを刺すんですよ。刺して、機械みたいなのでシュッシュッって取り出すんです。

 「何で私、乳がんになるんだろう」。私は結婚して以来、食事もとっても気をつけていたんです。食材も取り寄せですよ。私、インスタント食品も食べないんです。家族にも食べさせない。実は、冷凍食品も食べないんです。全部手作りです。「何でこんな努力してもこうなっちゃうんだろう」ってやっぱりちょっと思いました。しかも、母から覚えた薬膳(やくぜん)料理を毎日、実行してきました、自分のためじゃなかったんです。結婚した人を長生きさせたいと思って始めたんですよ、あと子どものためと思って。

夫の言葉に気持ちも救われ

 悔しくて、泣きました。そうしたら、夫が私に怒るんだ。「まだ、先生の話も聞いてないのに。あのね、人間っていうのは寿命があるの。お前の寿命が来たら死ぬんですよ。まだ来てなければ死なないんですよ。そういう無駄な涙を流しても仕方ないんですよ」って言われて。

 冷たく聞こえるように感じるんですが、とても納得しました。しかも、プンプン怒っている自分の感情を抑えられない夫の横顔を見て、ちょっと愉快になりました。男の人って面白いなって思って。で、楽になったんですよ、かえってそういう風に言われて。

アグネス・チャンさんの講演は8回に分けて掲載しています
(1)ゴルフボール大の腫瘍 良性?悪性?(2010年1月1日)
(2)戻らない?! 顔のマヒ(2010年1月3日)
(3)乳房にしこり・・・。「何で、私が」(2010年1月5日)
(4)乳がん手術、患者仲間からの励ましメールに涙(2010年1月6日)
(5)大量の汗、関節痛、顔の腫れ・・・ホルモン治療で副作用(2010年1月7日)
(6)干ばつのアフリカで見たもの(2010年1月8日)
(7)戦争の国で、子どもたちの命(2010年1月12日)
(8)がんになっても前向きに生きる (2010年1月13日)
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