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日野原重明さんが語る

イベント・フォーラム

(6)生活習慣病は自分で治す

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

語り手:聖路加国際病院理事長 日野原重明さん 98歳
1911年山口県生まれ、1937年京都帝国大学医学部卒業、41年聖路加国際病院の内科医となる。1998年、東京都の名誉都民、99年文化功労者、2005年、文化勲章を受章
聞き手:読売新聞編集委員 南砂(まさご)さん
1979年、日本医大卒。ベルギー国立ゲント大学留学。85年、読売新聞入社
 

 :今、日本がおかれている状況はとても22万の医師だけでどうにかできるということではありませんね。

 日野原:もうひとつ、生活習慣病についてですが、「あなたがたばこをやめないからがんになるんだ」「糖分が多いし、運動しないから糖尿病になるんだ」というそういう自分が作っている慢性の病気。あなたが自分で生活を変え、食事を変えるようにするということをしないと薬ではダメだということです。大人の病気なんて意味はないんです。

 あなたの生活スタイルで起こっているからあなたが治すんだということです。

 30年前から厚労省に言って、20年たってやっと10年前に名前が変わったんです。

 :そうですね、成人病といっても言葉自体が死語になりつつありますよね。「生活習慣病」という言葉は、先生が生みの親ですね。

ギブ&テイクはいい言葉

 :ボランティアのような仕事でホスピスを支える人たちを教育するためにライフプランニングセンターを作られたんですよね。

 日野原:はい。ボランティアというのは、自分の持つ体力とか能力とかお金を有用なことのためにささげるということなんです。ギブ&テイクという言葉がありますでしょう。みなさん息をする時に炭酸ガスがあれば、まず炭酸ガスをスーッと吐き出して、炭酸ガスがなくなるとちょっと吸うだけで酸素がばっと入ってくる。だから吐き出すことをしないと呼吸をできないでしょう。声楽の発声法というのは、吐き出しているでしょう。それで一息ついて言葉が出るでしょう。これが呼吸法の本体です。

 だからまず出すこと。もらうことではなしに。出すことによって後は与えられるということです。ギブ&テイク、いい言葉ですね。まず、私は持ってる時間を、お金を、能力を必要とする人のために与えようということです。

 :ボランティアという言葉も昔からありますが、その言葉の意味がきちんと理解され根づいているとはいえないかもしれませんね。

 日野原:ボランタリーという言葉は音楽にもあるんですよ。ミサで、みんなが集まって頭をさげている時にはじまるプレリュード。感じたまま即興曲を弾くことをボランタリーといいます。思いのままやる、人からやりなさいと言われてやるのではなく自分でやる。

ボランティア、プライドを持ちながら最善を

 日野原:これは誰かがしなくてはならないとかそういうことではないんですね。自分が飛び出す、これをボランタリーというんです。

 :ボランティアこそが最高の立場だとアメリカでは言われていますね。

 今日ここに足を運んでくることができた方々は、意欲もあって来ることができた方々だと思うんですが、ご存じのように自ら命をたつ人が3万人以上もいる状態が11年も続いています。今日来てくださった人の周りにも必ず、落ち込んでどうにも助けの手がさしのべられない方がいると思うのですが、先生からアドバイスはありませんか?

 日野原:読売新聞が10年前から、ボランティアとしてなにかを継続してやっている人を表彰するということをやっているんですよね。私はみなさんが、みなさんの立場でいろんな社会貢献ができるんだと思います。大学を出てないからできないとか、そういうことは関係ないんです。みなさんの誠意があって、勉強をして、十分にこなせるような勉強をするとまた新しいことに挑戦しようとする自然な力がある。挑戦をするということ、チャンスだということ。困った中でわたしはどう耐えるかということですね。その時、そばでひじを支えてくれる友達がいるととてもいい。

 とにかく死ぬつもりでやってみること。

 わたしは年をごまかしてジェットコースターにあちこちでトライしてみました。

 勇気を持ってするとやったという達成感を得られ、さらに勇気を持てる。

 :なるほど。悩んでいるかたに対しても、声をかけるという勇気。人との絆(きずな)を作っていくことが社会全体をよくしていく知恵かもしれませんね。

 日野原:世界にわたししかないバラを大切にしていきましょうというふうな意味でプライドを持ちながら最善を尽くしてみてください。自分のためにという考えだと不純になるんですね。例えばもうけるために・・とかね。

 :今日は本当に様々な教訓がみなさんの中に残ったことと思います。

 先生ラストメッセージをお願いできますか?

 日野原:人間にはチャンスがないのではないですよ。チャンスがあるのに横をむいている。

 もっと真っ向をみてチャンスを受けましょう。うまくそれにかみあわないこともあればじーっとそれを待ち、耐え忍ぶことによって、みなさんは得ることがたくさんあり、より不幸な人のことがよくわかってくる。

 入学試験で、いつもストレートで名門校に行く人はどうしても冷たくなりますよ。どっかで傷ついた人は他人の気持ちがわかる。

 最後に、わたしたちが死ぬとき、閻魔(えんま)さまの前で「自分のために使った時間」「他人のために使った時間」とやり、ほとんどの時間を自分のために使った人は極楽には行けないんですよ。わたしはわたしなりに、誰かのためにわたしの時間を、命を提供したんだと思うと、わたしたちは人生を安らかな気持ちで眠ることができるということをみなさんにお伝えしたい。

 良いと思ったら、勇気を持って、失敗をしてもいいから勇気を持ってやろうということ。耐えることと、みなさんが前進するということ。そうして上を向いて歩こうということです。ぼそぼそと下を向いて歩くのではなく、上を向いて歩こうと。

 みなさん帰るとき、上を向いて歩いてください。

 :みなさまの顔が輝いてまいりましたね。

 みなさまもぜひ極楽に行けるように、先生から貴重なアドバイスをいただけましたので、それを大切にお持ち帰りください。

日野原さんの講演は6回に分けて掲載しています
(1)ただ一つのバラとして自分を大切に(2009年11月24日)
(2)「葉っぱのフレディ」で、カーネギーホールの舞台に(2009年11月25日)
(3)10歳の子どもに命の授業 聴診器を使ってみる(2009年11月26日)
(4)運動を止められたら、ピアノを練習(2009年11月27日)
(5)食事は1日1300キロカロリー(2009年11月30日)
(6)生活習慣病は自分で治す(2009年12月1日)
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