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日野原重明さんが語る

イベント・フォーラム

(3)10歳の子どもに命の授業 聴診器を使ってみる

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読売新聞創刊135周年スペシャルフォーラム

語り手:聖路加国際病院理事長 日野原重明さん 98歳
1911年山口県生まれ、1937年京都帝国大学医学部卒業、41年聖路加国際病院の内科医となる。1998年、東京都の名誉都民、99年文化功労者、2005年、文化勲章を受章
聞き手:読売新聞編集委員 南砂(まさご)さん
1979年、日本医大卒。ベルギー国立ゲント大学留学。85年、読売新聞入社

 

 :大変な教育効果ですね。先生は10歳の子どもたちを対象に「命の授業」というものを熱心にされておられますが、「葉っぱのフレディ」 はつながりますね。

 日野原:私が小学校で授業をしたのは、今から23年前、各分野の名士たちが自分たちの母校にかえって授業をやるというNHKの番組でやったのがきっかけです。

 私は神戸の小学校で授業をしました。

 今から15年前までは、看護師さんが聴診器を使うことはありませんでした。身体検査をし、血圧を測るとき看護師さんは数字を書くだけでした。今から考えると60歳以上になった医者が難聴もあるはずなのに、聴診器をあてる。

 私は授業で、クラスに40本の聴診器を持っていき、1時間の間に聴診器のききかたと血圧の測り方を教えて、今日帰ったらお父さんお母さんの血圧を測ってやりなさいと教えました。子どもは耳がよいのでぱっと測ることができました。

 算数や国語や音楽の授業があっても命の授業が小学校にはないのです。だから私は聴診器をもっていって心臓が動いているということを教え、心臓に命があるのではなく心臓は酸素や栄養をもった血液を脳や手足、内臓に送るポンプなのだと、壊れることもあるということを教えました。

 命というのはどこにあるのか見えないのだけれど、見えないものの中に大切なものがある、空気や酸素は見えないけれど大切。みなさんの体の3分の2は水でできているのに、風が雨雲を持ってこないと雨はふらない。部屋の中では風も酸素も見えない。見えないものの中に本当があって、命は見えないけれど、君たちはもっている。君たちが使える時間のことを寿命という。自分のためだけではなく、その寿命を誰かのために使いなさいということを子どもに話すと子どもはわかってくれるんです。

 いろいろな話をした後に最後にしゃぼん玉の歌をうたいました。

 命を大切にするお祈りの歌があのしゃぼん玉の曲だということもお話ししました。

 子どものうちは寝たり、食べたり、遊んだりしていいが、大きくなったらきみたちの時間を、命を誰かのために使おう。これが私の命の授業です。

 

命の授業は3年先まで予約がいっぱい、だから長生きしなければ

 :先生のお話を聞いた10歳の子どもたちが大きくなるころには、命を本当の意味で大事にする子が育ってほしいですね。

 日野原:誰でも、いじわるすることはあるけれど、されたことがある人は、仕返しをしないからと伝えて遊んでしまうとすぐに仲直りします。仕返しをするともっと強い仕返しになる。アメリカが9・11テロで仕返しをしましたね。その仕返しがずっと続いてしまうんです。許すということが必要です。外国と日本の小学校の違いは、「命を持っている人、手をあげなさい」と言うと、アメリカの子どもたちは一斉に手をあげるのですが日本の子どもたちは、隣をみながらゆっくりあげる。つまり、行動が遅いのです。自分の思いをぱっと表現するのが遅いのです。他人を見て他人と同じことをするのが無難だという考えなんですね。

 :先生の授業を受けた子どもたちの中に、勇気や許すという考えをもった人が生まれてほしいと思います。多いときは1週間に3本あるとか。

 日野原:予約が3年先まで決まっているから僕はどうしても長生きしなければならない。

 :先生が10歳という年齢にこだわるのは先生が10歳の時に病気をされて・・・

 日野原:私の母が腎臓病でけいれんをおこし、死にかけたことがありました。僕はどうかお母さんが死なないようにとお祈りしました。 先生が注射したら、母のけいれんがとまったんです。

 その時から、お医者さんていいなあ、あんな人になりたいと思ったのが医者を目指したきっかけです。

 :10歳に先生ご自身にも原点があるんですね。

 日野原:10歳になると、男の子でも女の子でも目上の人が好きになるんです。私もそうでした。10歳というのは、両親が不仲だと、どちらに問題があるかわかるんです。みんなが思うより10歳というのはませている。子どもは大人の言うことを遊びながら聞いているんです。そういう10歳の時に本当のことを教える。学校だけではなく家庭の中でもしつけが必要だと思っています。

老人と呼べるのは、75歳から

 :先生の活動は広がりが多いのですが、もう一つだけご紹介するとすれば「新老人運動」。これも、子どもや命の授業とかなりつながりがあるようですね。

 日野原:はい。

 「60歳以上は老人」とか、「65歳以上」とか国連が決めたんです。50年前、日本人の平均寿命は60歳台。だから60歳過ぎて引退するのはいいだろうということになったのですが、50年前には100歳以上の人が日本の総人口のうち125人しかいなかったのです。今は平均寿命が80歳、女性は86歳です。

 100歳以上の人が4万人を超えているんです。2、3年すると5万人超えるんです。

 だから、私は国連に行って、75歳以上を老人と定めてほしいと言ってこようと思うんです。75歳以上でどこか体が悪くても、現在の医療で1日1回薬を飲めばいいんだとすれば普通に仕事ができる。病気があっても気持ちは強くて、そういう人を集めて「新老人の会」としました。

 75歳以上をシニアメンバー、60歳以上をジュニアメンバー、20歳~59歳までをサポーターとしてこれを9年前に発足しました。

 「命を大切にしよう」という運動を日本から発信して、アメリカやブラジルなど各国に波及させ、将来平和な運動にもっていきましょうということなので、私は忙しくて、寝る時間も死ぬ時間も全然ないんです。

 :1万人という人数が1人ずつ若い方たちに「命の大切さ」を教えるという役割を担ってくれると大変な力ですね。

 日野原:そして、1人ではなく夫婦で入ってくださいと伝えてるんです。

 もともと「老人」の「老」という字は中国では尊敬の言葉だったんです。「老練な」とか。

 英語ではthe elderyという、「あのような年配になりたいな」という尊敬になるような意味が「老齢」。くたびれた印象を持つのは間違いなんです。

日野原さんの講演は6回に分けて掲載しています
(1)ただ一つのバラとして自分を大切に(2009年11月24日)
(2)「葉っぱのフレディ」で、カーネギーホールの舞台に(2009年11月25日)
(3)10歳の子どもに命の授業 聴診器を使ってみる(2009年11月26日)
(4)運動を止められたら、ピアノを練習(2009年11月27日)
(5)食事は1日1300キロカロリー(2009年11月30日)
(6)生活習慣病は自分で治す(2009年12月1日)
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