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山口デスクの「ヨミドク映画館」

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ボブ・マーリーが皮膚がんを治療していれば…

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ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド 9月1日(土)から、角川シネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷他にて3週限定ロードショー
© SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

 ロンドン五輪の陸上競技の金メダリスト、ウサイン・ボルト選手。彼の活躍で知名度が一気に上がった国と言えば……そう、ジャマイカですね。

 カリブ海に浮かぶこの国が生んだ「レゲエの神様」が、ボブ・マーリーです。今日は、彼のドキュメンタリー映画「ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド」(2012年/アメリカ、イギリス、9月1日公開)を紹介しましょう。

 「紹介しましょう」なんて書いておいて何ですが、実は私、ボブ・マーリーについてはほとんど知らないんです(苦笑)。知っている曲は、エリック・クラプトンがカバーした「アイ・ショット・ザ・シェリフ」と、「ノー・ウーマン、ノー・クライ」「ジャミング」の3曲だけ。アルバムは一度も聴いたことがありません。

 「そんなヤツがボブ・マーリーについて語るなよ!」とファンに怒られそうです。でも、だからこそ、彼を知らない人と同じ目線で映画の感想を語れるのだっ(開き直ってます)。実際、無知な私でさえ、ボブ・マーリーという人物に興味を持ってしまう映画でした。

 彼は1945年、ジャマイカの山間部にある小さな村で、白人の父と黒人の母との間に生まれます(彼がハーフだということも初めて知りました)。首都キングストンのゲットーに移り住んだ彼は、貧しい生活の中で音楽に情熱を燃やし、彼と仲間たちによるレゲエは、世界中の音楽に大きな影響を与えました。アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、日本など世界各国のステージで愛と平和を歌に託して訴え続け、1981年、36歳の若さで亡くなりました。

 映画は、ライブやインタビューなど過去の貴重な映像と、彼の妻や子どもたち、ミュージシャンらへのインタビューで構成されています。

 
この澄んだ瞳で、何人の女性をほれさせたのか…。
© SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

 音楽家としてもすごいけど、妻子がいるのにミス・ジャマイカをはじめ様々な女性と付き合うモテ男だったんですね~。女性たちの証言をまとめると、「彼はハンサムで、シャイだったわ」。一見、草食系に見えて、中身は肉食系男子。いわゆる、「ロールキャベツ系男子」? これまでドレッドヘアで気づかなかったけれど、よく見るとたしかに彼はハンサム。それも映画を観て初めて気づきました。

 中でも感動的だった映像は、次のエピソードです。

 1976年、彼は、当時ジャマイカで対立していた2大政党の争いに巻き込まれて狙撃されて重傷を負い、亡命しました。しかし2年後の78年、ジャマイカに戻ってコンサートを開催。会場にいた対立政党の党首2人をステージ上に招き、和解の握手をさせたのです。「音楽」が「政治」を動かした瞬間! その現場に立ち会った観客たちは、さぞかし興奮したことでしょうね。

 さて、彼は36歳の若さで亡くなりました。死因は脳腫瘍と書かれているものもありますが、実際は、足の指にできた皮膚がん「メラノーマ」が全身に転移したのが真相のようです。

 映画ではそのことにも触れ、「黒人はめったにメラノーマにならないのに、彼の中を流れる白人の血でそうなったんだ」というようなことをだれかが言います。

 このメラノーマ(悪性黒色腫)は、たしかに白人に多く、黒人には少ない。日本人の患者も少なく、毎年、人口10万人に2人程度の発症とされています。手足に発症することが多く、特に足の裏が30%を占めます。

 でも、患者数が少ないとはいえ、メラノーマは転移しやすく、進行すると有効な治療法がない、怖いがんです。

 私の長男(大学4年生)が小学生だったころ、足の裏に急にホクロができて、心配になって皮膚科に連れて行ったことがありました。幸い、がんではありませんでしたが、検査を受けるまではけっこう心配でした。

 
© SHANGRI-LA ENTERTAINMENT LLC AND TUFF GONG PICTURES LP 2012

 ボブ・マーリーは、メラノーマと診断されたのに、ある信仰上の理由から体を傷つけることを拒み、手術を受けませんでした。でも、メラノーマも早期なら、切除して完治することができます。もし彼があの時すぐに手術を受けていたら、もしかしたら今も、67歳の渋い声でレゲエを歌っていたかもしれませんね。

 最後に、ちょっとマニアックな感想を。

 ボブ・マーリーって、私の好きな武道家兼俳優のブルース・リーに似ているんです。

 ブルース・リーにも白人の血が入っています。父親は中国人、母親はドイツ人と中国人とのハーフ。だから彼はクオーターです。亡くなったのは32歳(公式発表では死因は脳浮腫。暗殺説もあり)。で、やはり女性にモテモテ。亡くなったのは愛人宅でした。そして、非白人でありながら、映画という芸術の力で、欧米、東南アジア、中近東、アフリカ、日本と、洋の東西を問わず世界中にカンフーブームを巻き起こし、熱狂的なファンを産み出しました。

 ね? 共通点が多いでしょう?

 今ごろ2人は、天国でレゲエや武道について語り合っているのかもしれません。周りにマリリン・モンローやホイットニー・ヒューストンをはべらせながら……。

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山口デスクの「ヨミドク映画館」_顔87

山口博弥(やまぐち ひろや)

読売新聞医療部デスク

1987年 早稲田大学法学部卒、読売新聞入社

地方部、社会部などを経て1997年から医療情報室(現・医療部)。

趣味は武道。好きな映画は泣けるヒューマンドラマとアクションもの。

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3件 のコメント

お返事

山口博弥(記者)

ハルさま  「ロールキャベツ系男子」は、私が作った言葉ではないですよ。活字でもよく見るようになりました。  反対に、一見肉食系だけど実は草食系の...

ハルさま



 「ロールキャベツ系男子」は、私が作った言葉ではないですよ。活字でもよく見るようになりました。

 反対に、一見肉食系だけど実は草食系の男を、「アスパラベーコン巻き系男子」と呼ぶそうです。



寺田次郎さま



 彼が信仰を選んだのかどうか。

 どうなんでしょうねえ。。。 

 まさか死ぬことはない、とタカをくくっていたのかもしれません。



 映画でも、彼自身のコメントは全体的に少ないんです。多くを語らない人なのでしょうね。

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何のために生きるのか・・・

寺田次郎 元関西医大放射線科

他の先生方のコラムと混じりますが、本文によるとボブ・マーリーは家族や仕事よりも信仰を取ったということですね。 (それも実は表向きの理由なのかもし...

他の先生方のコラムと混じりますが、本文によるとボブ・マーリーは家族や仕事よりも信仰を取ったということですね。

(それも実は表向きの理由なのかもしれませんが・・・)



そういう死に様=生き様こそが彼の魅力なのでしょう。



それにしてもモテモテっていいですねー。

愛人宅で死亡とかなかなかハードル高いですよ。

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ロールキャベツ男子

ハル

この方がメラノーマで若くして他界されたという事、初めて知りました。有色人種の罹患率が低いからといって安心できませんね。草食系に見えて、実は肉食。...

この方がメラノーマで若くして他界されたという事、初めて知りました。
有色人種の罹患率が低いからといって安心できませんね。

草食系に見えて、実は肉食。
そのこころは…ロールキャベツ。

上手い事を言いますね。

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