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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

母乳をめぐる都市伝説

 
ダンボールで初つかまり立ちをする娘

 お盆休みで東京はいつもより人が少ないようです。保育園がお盆でお休みなので、休める仕事は休み、月齢の近い子供がいる友達を家によんでゆったり過ごしたりしています。

 娘は脚の筋肉がしっかりしているとずっと言われてきたのですが、先週つかまり立ちをするようになりました。立ち上がったあとに誇らしげに親の顔を見るのが微笑ましいです。

母乳が足りないのかも

 先週、離乳食について書きましたが、離乳食を食べるようになってから母乳の分泌量が減ってきたようなのです。保育園で「ミルクを飲んだあと哺乳瓶をずっとしゃぶっていますよ。もしかしたら母乳が足りないのかも」と言われたので急に不安になり、職場で休み時間に助産師さんに見てもらいました。「初めの頃よりおっぱいが小っちゃくなったんじゃない?」と言われたのですが、確かに以前ほど緊満感を感じることはなくなってきました。 

 マッサージしながら「いいおっぱいなので頑張ればまだまだ出る」と言ってもらって少し安心しましたが、やはり離乳食を始める前ほど母乳は出ていないようでした。実際の分泌量は分からないのですが、飲みながら娘が時々怒っていたり、ガブッと噛まれたりするので、満足していないのかもしれないと感じていました。

 そして、その後、それを裏付けるように、産後初めての月経が来たのです。授乳中は乳汁分泌を維持するためにプロラクチンというホルモンが出ているのですが、このプロラクチンによって排卵に関わるエストロゲンが抑制されるので、通常、産後は月経が来ないのです。産後7か月にして月経が来たので、月経の煩わしさに加えてプロラクチンが減ってきて母乳が減ってしまうということかと悲しい気持ちになりました。ちなみにエストロゲンそのものにも母乳の量や質を低下させる働きがあり、授乳中にピルの使用をすすめられない理由の一つになっています。

増える努力してます

 現在は母乳分泌が増加するといわれるあらゆる方法をためしています。授乳や搾乳前の乳房マッサージ、仕事の合間の搾乳、母乳分泌が増えると言われている漢方薬、そして何よりも頻繁におっぱいを吸わせること。これによりプロラクチンと愛情のホルモンと言われるオキシトシンを分泌させて母乳の分泌と射乳を促進させています。これらの努力により、全盛期ほどではありませんが、子供の小腹を満たすほどには出ているようです。

 今回の母乳不足感を数人の産婦人科女医と助産師たちに相談したのですが、おっぱいケアの助産師たちにもいくつかの「流派」があるそうです。マッサージの方法だけでも、おっぱいの根元から揺さぶる派や表面を優しくなでるだけで十分とする派など様々なようです。

授乳中の食べ物にも都市伝説

 また、授乳中の食べ物についても医師や助産師、ママ友によって言うことがまちまちです。「餅を食べると母乳の出が良くなる」という人もいれば「餅を食べるとおっぱいが詰まる」と言う人も。また、乳製品を食べると詰まるから食べないという人もいて、授乳中に特定の食材を除去している人も珍しくありません。

 しかし、これらには科学的根拠がありません。おっぱいが詰まるかどうかは乳汁の産生量と出ていく量のバランスであり、母親が摂取した食材によって母乳中の脂の粒の大きさが変わるということはないため、理論的にもありえません。「コラーゲンを経口摂取すれば肌がつるつるになる」と同質の都市伝説と言えます。

 離乳食だけでなく母乳育児にも都市伝説は蔓延しているので、母乳育児の生理について復習しながら意味のある努力をしていきたいと思います。授乳している時間は、オキシトシンが分泌されることもあってか、とても幸せで楽しいです。出来るだけ長く続けたいと思っています。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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10件 のコメント

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疑問

りか

2人目の子どもを母乳育児中です。 1人目の出産直後は検証する余裕もなく何となく口コミで良いと言われている和食中心の食事をしていましたが、あるとき...

2人目の子どもを母乳育児中です。

1人目の出産直後は検証する余裕もなく何となく口コミで良いと言われている和食中心の食事をしていましたが、あるとき「母乳は血液から出来ているし、血液には恒常性があるのだから食事の影響が大きく出るとは思えない」と疑問に思ってからはバランスよく食べたいものを食べるようにしました。

色々調べてみて、母乳に良い食事の口コミサイトでは「何故この食事が母乳に良いのか」「良い母乳とは何なのか?」の根拠が希薄だったり定義が十分されておらず、感覚的なものばかりであったこと、

ラクテーションコンサルタントの資料に「特定の食べ物が乳腺炎を引き起こすエビデンスはない」とされていたこともその後押しになりました。

結果として、特にトラブルもなく母乳育児を続けることが出来ています。また、正直に書いてしまうと、無駄な努力をせずに済んだとも思っています。





よく餅米は詰まる!とか、おっぱいに良い食事は和食とお米のごはん!とか言う方がおられますけど、餅米とうるち米の大きな違いって、デンプン質が餅米はアミロペクチン100%で、うるち米はアミロペクチン80%・アミロース20%なところですよね。

これらのデンプンはいずれもブドウ糖になって消化吸収されますし、米そのものの栄養成分は同じようなものですから、餅とうるち米とで母乳(質?量?)が変わってしまう理由がピンと来ません。

餅米はお餅として、うるち米はごはんとして食べることが多いので、同じ重さのお餅とご飯を比べるとお餅の方がだいぶカロリーが高くなります。そのために母乳に変化が出る(成分ではなく量的に)のであれば、母乳が十分排出されなくてうっ滞する可能性もあるかと思いますが、実際問題として摂取カロリーと母乳量の関係ってあるのでしょうか。

もっと詳しく知りたいと思います。

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家庭科学的か天文科学的か

選ぶのは個人の自由

都市伝説って、これを食べればこうなる的なものですよね。どのくらい食べて、どのくらい増えるかは言われてないところがいいところです。科学的となると、...

都市伝説って、これを食べればこうなる的なものですよね。
どのくらい食べて、どのくらい増えるかは言われてないところがいいところです。

科学的となると、食べたものが直接乳に変わる訳ではないということですよね。
食べたものが体内でどう変化して、内分泌を誘導して、その物質がどう関与しているのかという事でしょう。
人工的にプロラクチンやオキシトシンを投与してのデータがほしいところです。

その成分がほしいからと言って、その成分を経口投与してはたしてそのまま必要な体の部分に到達するのか。
そういう事はないですよね。
餅なら酵素で違う形になって運ばれますから。
血液から餅がでてくる事はないでしょう。

乳腺炎や乳汁の量に直接関与している物質が何かということが科学的と言われることでしょう。炎症なら雑菌等とか量的なものならそれを出す伝達物質の存在とか。
餅を糖に変える酵素の量の違いでも差がでてくるのではないでしょうか。

餅を食べればといっても虫歯の有無やかみ合わせでいくらでも変わりますし、一概に食べるという表現ですまされないのが医療現場の難しさでしょう。うるち米の餅でも同じでしょうか。
科学って難しいですね。
でも統計に使う数式は天文学からでてきた数式が使われますよね。自然界の観察からできた数式。標準偏差などが有名です。

かなり信頼できる結果を出してくれるすぐれものです。ただしばらつきという事は避けられません。絶対的なものではないです。
科学的なものと都市伝説。
これはいい!と言ってもアレルギーがあるひとには命に関わりますから、科学的根拠がないときは注意が必要です。

好きなほうを適材適所で選べばいいのではないでしょうか。

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特定の食べ物

なりたて母

食べ物によってつまらないという分かりやすい説明ありがとうございました乳汁が増えやすい食べ物というのはあるんでしょうか?それを食べると増えやすく結...

食べ物によってつまらないという分かりやすい説明ありがとうございました
乳汁が増えやすい食べ物というのはあるんでしょうか?それを食べると増えやすく結果的につまりやすい、というような

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